小ネタ集12

翌日。
アリスはいつもよりかなり早くに起きて、制服ではなく、ジャージを着る。髪もアップにして、邪魔にならないように結わく。



「……よし!」


準備を終えて、ハルクの部屋に向かうと、鍵はかかっていた。預かっている鍵で開け、中に入る。当然ハルクはまだベッドで寝ていた。それもそのはず。時刻はまだ朝の5時45分である。ハルクの専属執事のアガットですらまだ来ていない時間だった。



「お坊っちゃま!!おはようございます!」

「……ん、アリス?何で今日はこんなに朝早く来たんだよ…」

「運動しましょう!」

「………は?」

「夏休みですから、体が鈍っているでしょう?だから、今日は運動しましょう!!」

「だからって、こんな朝早くからやらなくてもいいじゃん。もう少し寝かせろって…」


再度ベッドで寝ようとするハルクをアリスは止める。かけていたタオルケットを剥ぎ取った。



「だめですよ!近所にある中学校でラジオ体操が6時半からやるんです!一緒に行きますよ!!起きてください!」

「一人で行ってこいよ…」

「お坊っちゃまも行くんですよ!ほら、早く着替えて!パジャマ、脱がしますからね!」


アリスがまだ寝ぼけたままのハルクのパジャマを脱がす。上半身を裸にして、次はズボンを脱がそうと手にかけた。そこでハルクもようやく目が覚める。顔を真っ赤にしながら、抵抗をする。



「バカ!!ズボンまで脱がすな!」

「何を今更恥ずかしがってるんです!昔もやってあげたじゃないですか」

「あれはお前が強引に…!」

「ほら、ズボンも脱いで!着替えますよ!」

「自分でやるから!手、離せ!」

「ラジオ体操に行きます?行くなら離します!」

「わかった!行くから離せって!!」

「わかりました!」


アリスはすんなりとハルクのズボンから手を離した。それに内心ホッとするハルク。



「ウェア類はここに用意して置いときましたから、これに着替えてくださいね!」

「……わかった」

「準備は早めに済ませてください!じゃあ、私は廊下で待ってますね」


そう言ってアリスは部屋から出て行った。ハルクは姿を見送ってから、息を大きく吐いた。



(マジで危なかった!アイツ、本当に突然、突拍子ないことをしだすから、怖ェよ!ズボンを脱がそうとするし。アイツ、本当に意識してねェな。オレのこと。いつまでもガキ扱いするし。

……………はあ。さて、着替えるか。いや、その前にトイレ行って、顔を洗ってこよ)


部屋を出て、洗面所に向かおうとする。すると、廊下にいたアリスが声をかけてくる。



「お坊っちゃま……って、着替えてないじゃないですか!」

「洗面所に行くんだよ!トイレくらい行かせろ!!」

「す、すみません…」


落ち込むアリスを見て、ハルクは少し言い過ぎたと気づくも、洗面所へと向かった。





5分後。
アリスとハルクは、屋敷を出て、ラジオ体操が行われる中学校に向かう。



「朝だと涼しくていいですね!」

「確かに涼しいけどさ…。お前、何でジャージ着てんの?暑くねェの?」

「えっ、そんなことはないですよ?」


ハルクの場合、下はジャージだが、上はTシャツ。一方のアリスは上下ともジャージ。しかも、ファスナーを上までキッチリと上げていた。腕は肘までまくっていたが。



「お前が暑くないならいいけど」

「大丈夫ですよ!」


しばらくして、ラジオ体操が行われている中学校に到着した。思っていたより人はいた。お年寄りから子供までと幅広く。アリスと同じくらいの女子はいないが、ハルクと同じような中学生はチラホラといた。

時間は6時15分。ラジオ体操の時間まであと15分はある。



「お坊っちゃま、知り合いとかいました?」

「いるわけねェじゃん。うちの学園に通ってるヤツらがラジオ体操になんて来ねェから」

「まあ、そうですね。御子息や御令嬢が通う学園ですし」

「オレもお前に叩き起こされなきゃ来ないし」

「そうなんですか?私は小学生の時、6年間幼馴染みと毎年夏休みに入る度に来てましたよ!二週間くらいしかやらないんですけど、毎日スタンプもらって、最終日には景品のお菓子セットをもらえました!それが楽しみで通っていたのもありますね。高学年になってから、幼馴染みに“こんなので喜べるのはアリスだけだって”よく笑われましたけど」

「ふーん。お前の話に幼馴染みがよく出てくるけど、ソイツはどっち?男?女?」

「男の子ですよ?うちの隣に住んでるので、同い年でよく一緒にいることは多かったですね」


男と聞いて、少し嫉妬するハルク。しかし、アリスはまったく気づかずにいた。



(男!?てっきり女とばかり…。てか、コイツの周りにやたら男が多くね!?あのいけすかねェリゼ公やうちによく来るトキ…何かってヤツとかさ。その幼馴染み、絶対アリスに好意を持ってるだろ)



「お坊っちゃま。どうかしました?」

「……何でもねェ」


話していると、いつの間にか6時半になり、グラウンドに集まり出した。前に立っている人が足元にある機械のスイッチを押す。すると、スピーカーからラジオ体操の音楽が流れた。




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