小ネタ集12

❰羨望❱


ある夏の日のこと。
メアが何やら観察をしていた。何故かメイドにばかり。



「……」

「メアがやたらメイドばっか見てるね」

「アイツ、女に興味あるんじゃね?俺の双子だし」

「そんなこと言ったら、またメアに殴られるんじゃないの?ライ」

「んなわけねーって。メイド見てるから、聞こえてねーよ!」

「聞こえてる!さっきからやかましいのよ。変態!!あんたと一緒にしないで!」


案の定、お約束というべきか、ライがメアに殴られた。しかし、ライの顔は嬉しそうである。



「うわぁ。殴られてんのに、すげー嬉しそうなんだけど。コイツ…」

「ドラ。ライにはこれがご褒美なんだよ」

「メアに殴られて、Mにでも目覚めたわけ?」

「性癖なんて、いつ突然どこで目覚めるかなんてわからないからね」

「カルロも危ない性癖でも持ってんの?」

「ははっ、それは内緒。まだドラには早いからね」


カルロは笑って、そう話す。それを見て、ドラは思う。



(カルロもライと血は繋がってるし。ヤバイ性癖を持っていてもおかしくはないんだろうな)

「ちょっと失礼なこと考えてない?ドラ」

「そんなこと……あるよ。カルロはライと血は繋がっているから」

「……正論なだけに言い返せない!」










❰side A❱


最近、メア様がメイド達を見ていると聞いていた。今も中庭にいる娘達をジッと見つめていたから。私はつい気になって、声をかけてみることにした。



「メア様」

「アリス。何?」

「最近、メイド達を見てたりしますが、何かありましたか?」

「ないわよ?」

「そうですか…」


本当言うと、皆が怖がってるんだよね。メア様に何か失礼なことをしちゃったのかって…。でも、本人に聞いてみたら、怒ってるわけじゃない。それじゃあ、一体何を見て───

メア様にいきなり胸を触られた。触られたというより、揉まれている。え、なんで!?



「あの、メア様…?」

「アリス。あなた、胸のサイズはどれくらいなの!?」

「え…」


何で胸のサイズ?というか、先に胸から手を離して欲しいんだけど。服の上からといっても、触られるのは…。



「あなた、結構胸あるわよね!」

「いや、そう言われたことは…」

「あるでしょ!しかも、触り心地まで良いし。何なの!?この胸は」


そうキレ気味に言われても、わからない。それよりもこんなところを誰かに見られたら、恥ずかしいんだけど!あらぬ誤解を受けてしまう。



「アリス。こんなところにい……え?何してんの?」

「お坊っちゃま。いえ、私にもよくわからなくて…。メア様が離してくれないんですよ」


お坊っちゃまが固まってしまっている。いや、引いているのかもしれない。女同士で胸を触っているから。
そういえば、メア様で思い出したけど、昔、中学生の時、女子の胸を触りたがる女の子がいたのよね。私も何度か狙われた。別にその子も女の子が好きなわけじゃないみたいだけど。付き合ってる男の子もいたし。でも、女の子の柔らかい胸がいいとか言ってたから、ちょっと変態だったのかも…。



「だからって、抵抗しろよ!何でされるがままなんだよ!」

「触られても減るわけじゃないですからね。あとメア様は男性じゃないので」

「そこじゃねェだろ!バカ!」

「クスクス。羨ましいの?ハルク」

「…んなわけねェし!」

「そう。アリスの胸、すごく柔らかいのに」

「…っ!」


メア様がお坊っちゃまに見せつけるように触る。そのせいか、お坊っちゃまの顔が真っ赤になってるし。中学生に刺激が強いとか?でも、裸じゃないしな。



「だから、アリス!抵抗しろよ!」

「今更抵抗しても…」

「ふふっ、ハルクも本当は触りたいのよね。でも、ダメよ。あなたは男の子なんだから」


お坊っちゃまがメア様を睨みつけるも、メア様は楽しそうに笑うだけ。しかし、この二人、あまり相性は良くない。メア様、お坊っちゃまのことをからかって遊ぶようになったし。



「何か喉が渇いたわ」

「わかりました。すぐご用意致します!」


場所を変えて、テラスにやって来た。飲み物を用意して戻ったら、メア様に一緒に来るように言われたからだ。お坊っちゃまは呼ばれてないのに、ついてきてるけど。

私は飲み物を用意し、二人の前に出す。すると、メア様が私に「座って」と言われたので、頭を下げてから向かい側に座る。メア様が飲み物に口をつけたのを見てから、話しかけた。



「メア様は今までメイド達の胸を見ていたんですか?」

「そうよ。私、胸ないから。ぺったんこなのよね」


自分の胸を見て、ため息をつく。そうかな?そこまでないわけでもない気がするけど。



「なのに、ここにいるメイド達はやたら胸がある子が多いでしょ?小さい子も多少はいるけれど」

「そんなことは…」

「そう言っても、あなた、メイドの中ではトップ5に入るくらい大きいわよ?もしかして、誰かに触られて大きくなったの!?」

「……ぶっ!」


何故かお坊っちゃまが飲み物を噴き出す。



「何やってるんですか!お坊っちゃま」

「ソイツが変なこと言うから!」


用意していた布巾でテーブルを拭く。まったくこの子は落ちついて飲めないのかしら。



「どうなの?アリス」

「え?触られて大きくなったかはわかりませんけど、学生の頃、さっきのメア様みたいに胸を触ってくる子はいましたよ。何度か触られましたし」

「はああ!?」

「何でお坊っちゃまが怒ってるんですか?」

「だって、お前の胸を触っ…!」

「アリスの胸を触っていたのは女子でしょ?流石に男子が触ってたら問題だけど」


確かに。
男子がいる前では触ってはこなかったけど。ほとんど体育の着替えをしてる時だったかな。



「その子、私だけじゃなく、他の子にも触ってましたよ。彼氏がいるのにも関わらず、女の子の胸が好きみたいで。まあ、触る相手も選んでいたのか、あまり怒らない子ばかりでしたね」

「お前も怒れよ!何で好き放題に触らせてんだよ!」

「背後からいきなり来るんですよ!?防げないです!」


さっきから、お坊っちゃまは怒ってばかりいるけど、どうしたの?カルシウムが足りないんじゃ…。おやつに煮干しも追加しようかしら?



「アリス。仕方ないわよ。ハルクは想像してしまったから」

「メア!!」


想像?
ああ、お坊っちゃまも思春期だしね。仕方ないか。



「お坊っちゃまも中学生ですし、同じくらいの女の子に興味持つ年頃ですからね」

「え?」

「メア様??」

「今のはどう考えても…」

「どうかしました?」

「話には聞いていたけれど、あなた、本当に鈍いのね」


どういう意味?それ。誰に私が鈍いなんて聞いたのかしら。カルロ様かタスク様辺りかな。あの二人ならそう話しそう。



「苦労してるわね、ハルク」

「もう慣れた。こういうヤツだから」

「?」


何で私のことで二人は納得しているのだろうか。二人でしかわからない話をしないで。



「はあ。お父様もやっぱり胸が大きい方が好きなのかしら?」

「うーん、どうなんですかね?」


流石にあの当主の好みはよくわからない。あの顔で胸に興味津々な姿は想像出来ない!リク様に似てるのもあるけど、そんな姿は見たくないわ。



「親父、胸とかはこだわってなかったと思うけど。カルロ達の母親やドラの母親はあんま胸なかったな。カルロ達の母親は、胸があるように見せてたらしい。そんなことをライが言ってたぜ」

「ええ、それは事実よ。お母様、寄せて上げてたもの。私はお母様に似たのね…」


昔、そんなブラがあったような気がする。胸がない人でもあるように見えるの。同級生でも使っていた子も見たし。



「そうなんですか?でも、ティーデ様、小学生にしては胸ありますよね」

「確かにティーは11歳にしては大きいわ。大人になったら、ダイナマイトボディになるわね」

「お坊っちゃまのお母様は?」

「母さん?」


お坊っちゃまが思い出そうと考えていた。それを見て、メア様はニヤニヤと笑う。



「ハルクの母親は胸があったんじゃないかしら?だから…」

「メア!」

「ふふっ、ハルクは胸が大きい人が好みよね」


またお坊っちゃま、メア様に向かって叫んでる。お坊っちゃま、胸がある女の子が好きなのか。中学生だし、仕方ないか。そう考えていたら、顔を赤くしたお坊っちゃまが私に言ってくる。



「アリス!オレは…」

「お坊っちゃま、そんなに恥ずかしがらなくてもいいですよ」

「え?」

「中学生の男の子は、性に対しても興味持つのは普通なんですから。気にしなくて大丈夫ですよ!」


フォローのつもりで言ったら、お坊っちゃまは俯いて震えだす。そして、顔を上げると、私を睨む。



「バカ!!この鈍感女!」

「え、お坊っちゃま!?」


そう叫ぶと、お坊っちゃまは行ってしまった。また鈍感女って言われた…。



「あなた、本当に鈍いわよね」

「……うっ」


メア様にまでまた鈍いと言われた。



「あまり鈍いのも問題じゃない?そのままだと本当に大切なものを失うわよ」

「……私、もう失っているのかもしれないです」

「え?」

「すみません。私もそろそろ失礼しますね」


イスから立ち上がり、メア様に頭を下げて、その場を離れる。

歩きながら、昔、同級生の男の子に言われたことを思い出す。



“パンナコッタってさ、誰も気づかないことには気づくけど、誰も気づいてることには全然気づかないよな?”

“え?どういうこと…?”

“やっぱ気づいてねーんだ。俺、ずっとお前のこと好きなのに、全然気づいてくれなかったよな。鈍すぎる。悪意がない分、余計にタチ悪い”


そんなつもりはない。
でも、私の態度にその子を傷つけたのは事実。だから、何も言えなかった。



「…結局、謝れないままだったな」


きっとお坊っちゃまのことも傷つけてるかもしれない。でも、何に対して怒ってるいるのかをわかっていなければ謝れない。

これ以上、考えても仕方ない。



「……仕事しよう」


















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