小ネタ集10

❰自覚症状なし❱


仕事を終えて、戻ってくると、リビングでアガットがお菓子を食べていた。珍しい。いつもは酒飲んでるのに。



「おつかれ。何食べてんの?」

「ん?セージか。おつかれさま。お菓子だよ」

「随分沢山あるけど、全部手作りっぽいね。彼女から?」

「あはは。残念ながら違うよ。アリスさんからもらったんだ」

「アリスか」


確か、あの子はちょいちょいお菓子作ってるとは聞いていたけど、ここまでの腕だったのか。どれどれ。味見がてら一つ食べたい。



「アガット。一個、ちょーだい」

「いいよ。沢山あるから、好きなの何個でも取っていいよ」

「やった。じゃ、遠慮なく」


クッキーやマドレーヌ、マフィンとか沢山あるな。しかも、ブラウニーやガトーショコラまであるし。アガット一人に対して、どれだけ作ったの?アリスは。
俺は何個か掴み、その中の一つのマドレーヌを手に取って食べる。



「…うまっ」

「俺も前に何度か食べたことあるけど、彼女の作るお菓子はおいしいよね。今年のバレンタインにもらったチョコもおいしかったし」

「あー、あれはおいしかったわ。メイド達からもらった中で断トツに。これにハルク様は掴まれたわけか」

「お坊っちゃまだけじゃないよ。カルロ様も意外に食べてるから」

「カルロ様、お菓子を食べるイメージないけど、嫌いじゃないの?」

「そうだね。俺も甘いの食べるイメージはなかったけど、お坊っちゃまがアリスさんのお菓子を食べてる時に結構食べに来ていたから好きだと思う」


あの人の場合、きっとお菓子だけが目的じゃないと思うけど。アリスにも興味あるんだろうな。カルロ様に興味ないメイドは数えられるし。
うちにいるメイドは結構カルロ様ファンが多いし。親衛隊までいたよな。



「そういえば、何でアリスからお菓子をもらったの?」

「ああ、彼女が出かける時に車を何度か出したことあってさ、そのお礼だって。俺が好きでやっただけだから、そんなに気にしなくても良かったんだけどね」


その割に嬉しそうだけど、アガット。
もしかして、好きなの?世話好きだからなのか、色恋にはかなり疎いからな。



「アリスのこと、好き?」

「好きだよ。いい子だし、真面目に頑張ってるし」

「いや、そうじゃなくて」

「そうじゃなくて??」


あー、これは好意までいってないわ。LOVEじゃなくて、LIKEの方か。アガット、自分自身でも気づいてないかもな。ま、彼女の方も似たようなもんか。
違う。リク様を慕ってんだっけ。



「わかんないならいいや」

「そう?」


アガットはクッキーを取ると、それを口に入れる。相変わらず、おいしそうに頬を緩めながら食べているけど。

自覚したら、どうするんだろうな。
自分の仕えてる相手の好きな人を自分も好きになってしまったら。

きっと譲るんだろうな。アガットは優し過ぎる。他人のことにはすぐ気づくくせに、自分に関してはかなり鈍いから…。損してるよな。



「アガット」

「何?」

「幸せになってね」

「うん?セージ、酔ってる??」

「酔ってないから。じゃあ、これから酒飲もう?付き合ってよ」

「いいよ」


その後は二人で酒を飲んだ。
途中でピアニーやアンバーも入って、朝まで飲み開かした。



やべ。飲み過ぎて、頭痛い。
なのに、アガットときたら、平然な顔してた。そうだ。酒に対してザルなんだった!解せぬ。





【END】
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