小ネタ集8
❰鳥籠の鳥❱会話文。
それは、ある日。兄弟が談話室に揃っていた時にライが呟いたことから始まった。
ラ「俺、ハルクになりてー」
ハ「は?」
カ「いきなりどうした?」
リ「また変わったことを言い出すね、ライは」
タ「ハルクになったって、全然面白くねーじゃん。アリスの後を追っかけて、お菓子を食ってるだけだし」
ハ「タスク兄だって同じようなもんじゃん。リコリスと一緒にいるだけだろ!」
タ「オレ達は恋人だからいいんだよ」
カ「そこ二人、静かに。で、ライ。お前は何でハルクになりたいの?」
ラ「だってさ、ハルクの姿なら絶対に警戒されねーじゃん?俺だとすげー警戒すんだもん。そこがいいんだけどさ」
リ「警戒??」
カ「お前、まさか…」
ラ「アガットとヤりてーんだよな。見かける度にヤりたくて仕方ねーの。なかなか手に入らねーからかなー?どう思う??」
カ「……やっぱり。そんなことだろうと思ったよ」
リ「そんな理由でハルクになりたいの?」
ド「理由が最悪だった」
ラ「ついでにアリスともヤれるよなー。ハルクになればさ、3人で楽しめんじゃん?」
ハ「ふざけんな!!」
ラ「ってことで、ハルク。アガットを俺にちょーだい」
ハ「ヤダ」
ラ「お前が言えば、アガットも俺の専属執事になってくれっからさー」
ハ「嫌だ。アガットはオレの執事だし!」
ラ「じゃあ、アリスを寄越せよ。アガットが欲しいけど、くれないならアリスでも構わないぜ。メイドの中で一番狙ってたからさ。」
ハ「じゃあ、じゃねェし!絶対ヤダ!!アリスはオレの世話係なんだよ!どっちもお前になんかやんねェ!!」
ラ「いいじゃん。つーか、お前だけだよ。二人もいんの。対して、俺は誰もいねーんだよ?」
ハ「そんなのオレのせいじゃねェし。自分の執事に手を出してんのはお前じゃん!」
ド「自分の執事にまで手出してんの?見境なさ過ぎじゃん。だから、長続きしないんだよ…」
ラ「好きになったら、執事とか関係ねーし。さっさと動かねーと誰かに奪われんじゃん。ま、他人のでも欲しかったら奪うけど」
カ「寝取る気満々だな、お前は…」
ラ「俺、寝取ったことは沢山あっけど、寝取られたことねーよ?」
カ「寝取られる前に相手に飽きちゃうからだろ、それは…」
リ「やっぱりまだ誰か一人を愛せない?」
ラ「うーん、俺一人だけじゃ満足出来ねーんだよ。愛がよくわかんねーし。ヤることが愛でいいじゃん」
リ「そのうちライにも愛せるような相手が出来るかもしれない。でも、その相手と一緒になれるわけじゃないのはわかってるよね?」
ラ「知ってる。俺らは全員親父の決めた相手と結婚すんだろ?」
ハ「……」
タ「オレは好きな相手と婚約してるから関係ない」
ド「はいはい。良かったね」
ラ「俺、結婚しても気に入った相手が出来たら、誰にも奪われないように檻の中に閉じ込めんだー」
ハ「檻に閉じ込めんの!?」
ド「怖っ。やばすぎじゃん」
カ「その思考はないなー」
リ「気持ちはわからなくはないけど、流石にそれをやったらね…」
ラ「そう思っても、俺達全員同じ血が流れてんだぜ?そう思うことあんだろ?一緒になれないなら、閉じ込めちゃえば、奪われない。鳥籠の鳥みたいに…」
カ「案外、鳥籠の鳥は俺達の方かもしれないけど」
ド「でも、鳥籠の鳥を自分で閉じ込めてたつもりでいても、突然、誰かが来て開けちゃったら、いなくなっちゃうじゃん」
リ「そうかもね。鳥籠にいた鳥を逃がそうとする人は突然現れるかもしれない。それがいつになるかはわからないけど。明日かもしれないし、一生現れないかもしれない」
あれからオレは、部屋に戻って来た。丁度、アリスが服をたたんでしまい終えたところ。
「おかえりなさい。…どうしました?」
「ねぇ、鳥籠の鳥って幸せだと思う?」
「いきなりどうしたんですか?お坊っちゃま…」
「いいから答えろよ」
「うーん、その檻の中が幸せだと思う鳥もいるだろうし、檻の外の自由に憧れる鳥もいるんじゃないですか?」
「え…」
「だって、その鳥によって違うと思いますから、一概には言えません」
「じゃあ、アリスの前に鳥籠があったら、その籠から鳥を出す?」
「鳥がおとなしくしていたら出しませんけど、鳴いて騒いでいたら出すかもしれませんね」
「そうなんだ…」
「何か理由があって、騒いでるかもしれないですけど。でも、そこにいたいなら鳴かないでおとなしくしてるんでしょうし。鳴いて騒ぐってことは、出たいと言ってるのかなって…」
「じゃあ、オレが檻から出してって騒いだら?」
「それは出しません」
「何で!」
「お坊っちゃまの場合、悪いことしたから、入れられてそうですから」
「……」
「オレ、アリスが檻に入ってても絶対に出さねェから!」
「私、そんなところに入るような悪いことをしないから大丈夫です」
ライが言った意味が少しだけわかった。
もしも、一緒になれなかったら、アリスを閉じ込めてやる。誰かに取られるくらいなら、取られないようにしねェと。
【END】
4/4ページ