小ネタ集8
❰意外な関係性❱会話文。
「アガット」
「カルロ様。何か用ですか?」
「用は特にないけど、君の姿を見かけたから」
「そうですか。では、俺は急いでますので」
「いやいや、何で早々に立ち去るの?そこは普通話すところでしょ!」
「何言ってるんですか、カルロ様。立場が全然違うのに、普通に話すわけないじゃないですか」
「あと今は二人しかいないんだから、普通に話してよ。アガット。昔、同じ幼稚園に通っていたんだから」
「昔の話ですよ。それに俺はここに雇われてる身なので、カルロ様と普通に話すことなんて、とてもとても!」
「昔の君はもっと優しかった気がするな」
「そう言われましても。ここに勤め始めたせいじゃないですかね。あはは」
「本当にいい性格してきたよね。誰に似たんだか」
「アンバーじゃないですか?よく一緒にいますから」
「アンバーとは違うかな。あいつ、毒は吐くけど、いい加減じゃないから」
「でも、行かなきゃいけないのは本当なんですよね。今、新人の執事達を何人か教えていますからね」
「新人?もしかして、ライの執事候補でも見つかったのかな」
「うーん、どうですかね?ボルドーさんは“ライ様に合う執事はなかなか見つからない”と悩んでいましたけどね。こんなに決まらないとは思ってなかったみたいですよ」
「ライは特殊だからね。あいつだけじゃないかな?兄弟で執事がいないのは…」
「そのせいでボルドーさんから、ライ様の執事が決まるまで俺に臨時でライ様の執事になってくれって言われたんですよね…」
「ハルクにはアリスがいるからね。君はライとも関係が良好だし」
「俺にライ様は無理です!マホみたいなヤツでもない限り…」
「確かにマホガニーがライに合ってたんだけど、もういないし」
「マホとはたまに連絡取りますけど、元気でやってるみたいですよ」
「へぇ、彼とは連絡してるんだ」
「はい。今度、アンバーとピアニーとマホガニーと俺の4人で集まって、飲むことになったんですよ」
「いいな。俺も行きたい」
「執事の会なので、カルロ様はちょっと…」
「仲間はずれは良くないよ?アガット。昔の君はそんなことする相手を倒していたのに…」
「そう言われても、立場が違うんですけど」
「仲間に入れてくれないなら、俺、ボルドーに言っちゃうよ?アガットがハルクからライの執事になりたがってるって…」
「わー!それだけは止めてください!!わかりました。俺の一存で決められないので、皆に聞いてからでもいいですか?」
「うん、それでいいよ。でも、行けるようにしないと、どうなるかわからないからね?アガット」
「怖っ。俺に行けるようにしろって、軽く脅してますよね…」
「やだなー。脅してなんかないよ?俺は…」
「昔は可愛かったのに、今は全っ然可愛くないですね!カルロ様は」
「そう?アガットの気のせいじゃないかな。それにしても、ライはマホガニーに懐いてたから、彼がいなくなってからしばらく部屋から出て来なかったよね?アリスが結婚したら、ハルクもしばらくは出てこなくなるんじゃない?」
「やめてくださいよ。それ本当にありえなくない未来なんですから」
「今からでもアリス離れさせた方がいいんじゃない?」
「ああ、無理ですね。学校から帰ると真っ先にアリスさんのところに行きますから、お坊っちゃま」
「あいつ、婚約者が出来てもその子を放置して、アリスのところに行きそうだからな」
「お坊っちゃまもアリスさんが初恋なんでしょうね。ライ様みたいに…」
「あれ、知ってたの?アガット。ライがマホガニーのことが好きだって」
「あの頃のライ様はわかりやすかったですから。今のお坊っちゃまとアリスさんみたいな感じでしたよ」
「マホガニーって、中性的だったよね?だからなのか。ライはどちらでもイケるタイプになっちゃったんだろうね。初恋は、結構後々に影響してくるから少し怖いよね」
「昔は可愛いかったんですけど、今のライ様は苦手なんですよ。隙あらば、部屋に連れ込まれそうになりますから」
「タイプならメイドだけじゃなく、執事にまで手を出すからね。あいつは…」
「あと尻を触ってくるんですよ!男の尻を触って、何が楽しいんですかね…」
「アガットの反応が良かったからじゃない?アンバーはそんなこと言ってなかったし」
「あいつは言葉にしないで、目で言うタイプですから。“近づくんじゃねーよ”って。それでも、ライ様がめげずに来るらしくて、鬱陶しいって頭を抱えてますよ。クロッカスやピアニーは触られても無視してましたし」
「それが正しいんじゃない?無反応」
「いや、それは俺もやりましたよ!なのに、話してる間に何度も触られて…」
「一番最初が肝心なんだよ。触られてから、やったって無駄」
「やっぱりそうですよね、だからって、メイズみたいにノリ良く、“きゃっ、触られちゃったー”みたいな返しは出来ないし」
「あれはライと同い年のメイズだからこそ、出来るんだよ。君がやったら、ライに持ち帰られるだけだから、やらない方が身のためだよ」
「ですよね。我慢するしかないのか。はあ…」
「君は優しいよね。ライを傷つけないようにしてるんだから」
「優しくなんてないですよ。あ、いい加減立ち話してる場合じゃない。早く行かないと。カルロ様、失礼しました!」
「アガット」
「はい?」
「また俺と話してね」
「お断りします!」
そう言って、アガットは駆け出して行った。
「そう言ったって、君は俺と会ったら話してくれるのはわかってるよ。君は本当に優しいから。昔と変わらないね…」
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