小ネタ集6

❰これはデートに入りますか?❱アリス視点。


今日は休暇です。
前日にそれをお坊っちゃまにいえば、拗ねられましたけど。妹も同じくらいの歳だけど、あそこまで子供っぽくなかったのよね。むしろ私より大人っぽかった。「お姉ちゃん、子供っぽすぎ」とか何度も言われたことか…。

今日は友達4人と遊園地に来たのですが、先に待っていた友達が隣で待っていた男の人と仲良くなり、一緒に回ることになったのです。私は嫌だったのですが、他の3人は賛成で今更嫌だと言えず…。

私達4人、相手側も4人みたいですが、1人まだ来ていないようで。



「…あ、やっと来た!こっち、こっち」


最後に現れた人物を見て、私は驚きました。そこにいたのはいつも邸で見ている相手だったからです。



「おっせーよ!カルロ」

「ごめん。ちょっと渋滞しててさ。……ん?」


まずい。目が合った。私は友達の背中に隠れる。



「この子達と一緒に回ることになったんだ。いいだろ?」

「別に構わないけど」


すると、カルロ様を見た友達が向こう側の人達に聞こえないように話しかけてくる。



「(最後に来た人が一番かっこよくない?)」

「(確かに。他の人も悪くはないんだけど、一番は断トツにあの人だよね!)」

「(みんな、私に感謝してよね!)」


二人は頷くが、私は感謝してない。むしろ何しやがった。余計なことしやがって!っと言いたい。



「じゃあ、行こうか?」

「「「はーい!」」」


こうして、園内に入ったのだが、私だけが皆についていけず、渋々後ろを歩く。知らない男の人達と楽しそうに話す友達らを見ながら、密かにため息をつく。

この後、ずっと一緒に回るのか。やだなー。知らない人が混ざるの。私だけだったのかな。友達同士で遊びたかったのって…。



「これ、別にみんなで回る必要はないんだよな?」

「まあ、そうだけど。お前、一緒に回りたい子でもいるの?」

「そうだね」


カルロ様が何故か私の方を見て、こっちに向かってきた。



「ということで俺、この子と回るから。じゃあな」


そう言って、カルロ様が私の手を引いて、走り出す。友人達が「アリス!」って名前を呼んだが、私は振り返らずカルロ様についていった。



……………
…………
………
……




「ここまで来れば大丈夫かな」


皆から見えなくなったところでようやく止まり、手を離してくれた。



「私は助かりましたけど、カルロ様は良かったんですか?」

「俺?俺も気は向かなかったからねー。仲良いヤツに頼まれて仕方なく来ただけだし。どこかでフケようと思っていたとこだったから、さっさと離れることが出来て助かったよ」


そうだったのか。
確かにあまり仲良さそうでもなかったのよね。



「それにしてもビックリしたよ。待ち合わせ場所に君の姿があるからさ」

「私もですよ。車で出かけたのは見かけましたけど、まさか同じ場所とは思わなかったですし」


こんな偶然あるなら、リク様だったら良かったんだけどね。そんな上手くは行かないか。



「リクは遊園地には来ないと思うよ?あまり好きじゃないからね」

「え?」

「知りたかったら、本人に聞いてみるといいよ」


いやいや、聞けたら苦労しないわよ。
仮に聞けたとしても、リク様に何でそんなこと聞いてくるの?怖っ…とか恐がられたら嫌だし。



「さて、これからどうする?俺はここから出ようとは思ってるけど」

「え、出ちゃうんですか…?」

「俺もあまりいい印象ないからね、遊園地は…」


悲しそうにそう答えるカルロ様。過去に何かあったのだろう。
でも、ここで帰らせてはだめな気がする。



「私、久しぶりに遊園地に来たから遊びたいです。迷惑じゃなければ、一緒に回りませんか?」

「俺と?」

「1人で回ったってつまらないですし。せっかく遊園地に来たんですから、楽しんで帰りたいです」


これで断られたら仕方ない。1人で園内を回ろう。嫌がる人に無理強いは出来ないし。1人で楽しめるかな。ま、それはそうなった時に考えよう。
私はカルロ様の返事を待つ。



「……そうだね。君のいう通りかもしれないね」

「ということは?」

「お付き合いしますよ?お姫さま」


勝った!

それから私はカルロ様と遊園地内を回った。
最初はそんなに楽しそうに見えなかったけど、私があちこち連れ回すうちに笑うことが多くなった。

でも、カルロ様と一緒にいると、やたら女の人が振り返るのよね。確かに顔はいいからな。友達もカルロ様がかっこいいって言ってたし。
たまにカルロ様と一緒にいる私を見て、何あの子?みたいに言われたこともあったけど、気にしない!今は遊ぶことだけ考えるんだ。





数時間後。
園内のアトラクションをほぼ乗り回り、疲れた私達は空いているベンチに座っていた。



「こんなに遊んだのは子供の時以来かな」

「そうなんですか?」

「うん。遊園地はたまに来ていたけど、俺といて、ただ遊ぶだけの娘なんていなかったからね。アリスは俺のことは眼中にないくらい楽しんでたし」

「すみませんね。子供で…。眼中にないのはそうですけど、カルロ様だって楽しんでたじゃないですか!」

「そうだね。こんな朝からアトラクションにずっと乗り回したのは初めてだったから。こんなに楽しかったんだね。ありがとう。アリス」

「いえ…」


素直に礼を言われるのも何か変な感じ。私は自分が楽しみたかっただけだし。
ふと近くのゲームコーナーに動物のぬいぐるみが沢山あった。そのうちの一つを見て、私は思わず声を上げる。



「あのキャラクター、お坊っちゃまみたいですね!」

「あのハリネズミがハルク?」

「はい……って、そんなに笑うところじゃないですよ」

「だってさ、あのハリネズミを見て、ハルクだって君が言うから…。面白くて!やばい。笑いが止まらない……ははっ」


そこまで面白いこと、言ってないのに…。
でも、この人も笑う時は思いきり笑うのね。邸だとあまり笑わないような気がしてたから。愛想笑いでごまかしているというか。



「あれをおみやげにしようかなと思うんですが、どうですか?お坊っちゃまの部屋は、意外に殺風景ですし。でも、男の子にぬいぐるみは変ですかね?」

「いいんじゃない?それにハルクは君がくれるなら、何でも喜ぶと思うよ」


いつの間に笑いがおさまったのか、いつも通りのカルロ様だった。



「よし!それなら挑戦してきますね!」

「え?」

「カルロ様はそこにいてください。ちょっとやってきます!」


ハリネズミのぬいぐるみを取るために私はそのゲームコーナーに並んだ。しばし待っていたら、自分の番になり、店員にやり方を聞く。そして、いよいよゲームスタート。

結果は……………



「見てください!取れました!!」


私はゲームでハリネズミのぬいぐるみを見事に獲得した。売り物として売っているぬいぐるみよりも大きい。それを見たカルロ様はぬいぐるみを見ながら、少し驚いていた。



「随分と大きいね…」

「この特大サイズはこのゲームでしかもらえないみたいです!これをお坊っちゃまに渡すのが楽しみです」


ふふっ、どんな顔をしてくれるかな?早く渡したいな。

いつの間にか陽が沈み、暗くなってきた。
これからパレードがあるみたいだが、私は見ないで帰ろうと思っている。パレードまで見ちゃうと、帰りの電車が混んじゃうし。せっかくゲットしたこのハリネズミのぬいぐるみが潰れてしまう。
ここのパレード、結構キレイだと評判だから楽しみにしていたんだけど、またいつか来よう。



「そろそろ帰りましょうか?」

「あれ。パレードは見ないの?」

「はい。パレード見て帰ると、電車が混んじゃいますから、今のうちに…」

「俺、車で来てるから平気だよ。帰るところは同じなんだし。送ってあげるよ?」

「いいんですか!?」


本当言うと、すごく見たい。しかも、車で帰れるなら、ぬいぐるみが潰れる心配もしなくていい。
でも。



「だけど、パレードまで見たら、遅くなっちゃいますよ?」

「俺は門限とかないからね。そっちはあるの?」

「一応、今日は遅くなりそうだと思って、届は出してます」

「なら、見て行こうか。その前に食事でもする?パレードまでは時間まだあるし。何でも奢ってあげるよ。遊園地、楽しかったし。そのお礼」

「ありがとうございます!さ、何を食べましょうか!?」


それからレストランで食事して、一緒にパレードを見た。パレードは予想以上にキレイで楽しめた。これを見ることが出来て、本当に嬉しかった。



「キレイですね!」

「……うん、そうだね」


帰りも電車ではなく、カルロ様の車で帰ることになったから、ハリネズミのぬいぐるみは潰れずに済んだし。良かったー!

車に乗ったら、少し寝ちゃったけど、私、いびきや寝言とか言ってないよね…。それだけが心配だ。


















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