小ネタ集5
❰WhiteDay❱アリス×ハルク。ハルク視点。
それはホワイトデー前日のこと。
カ「明日はホワイトデーだったね。皆はお返しはするの?」
タ「オレ、リコリス以外は受け取ってねぇし。こないだの休みにプレゼントは買ってきたから、明日渡しに行くんだー!」
ド「オレ、全部いらないって突き返した。知らないヤツからもらったもんなんて食べたくもねーし。手作りなんてごめんだね」
リ「僕も一応、もらった分のお返しはは用意したけど」
ラ「お返しね…。面倒だから、体で返せばよくねぇ?」
カタ「「却下」」
ド「お前から体で返されてもね…。気持ち悪っ」
リ「せっかくもらったんだから、ちゃんと物で返さないとだよ。ライ」
ラ「ちぇ。いい案だと思ったんだけどな」
ハ「……」
カ「さっきから無言でいるハルク。お前は返さないの?」
ハ「オレ、誰からももらってねェし…!」
タ「何言ってんだよ。リコリスからもらっただろ。嘘つくなよ」
ハ「うっ…。でも、あんなの義理じゃん」
タ「当たり前だろ。リコリスの本命チョコはオレなんだから!他に誰からももらってないのかよ?」
ハ「もらってない…」
タ「ふーん。もらってない、ね…」
カ「もらってない、ね…」
カタ「「ねー」」
ハ「さっきから何が言いてェんだよ!」
カ「お前、普段からアリスにお菓子を作ってもらってるんだろ?」
ハ「そ、それは…」
タ「お前、ただ食ってるだけだもんなー。何か返したりしたことあんの?」
ハ「……………ない」
カ「聞きました?あんなに作ってもらっておいて、一度も返してないんですって」
タ「まー。ひどいですわね。お菓子作れって、アリスにねだるわりに何も礼もしてないだなんて」
カタ「「さいあくー」」
ハ「リク兄ー!」
リ「うーん、今回ばかりはカルロ兄さん達が正しいかな。アリスさんに何かお返ししたら?」
ハ「……」
オレの味方がいなかった…。皆がカルロ達の意見に賛成してた。
談話室を出て、歩きながら、オレは考えていた。
確かにお菓子は作ってもらってるけどさ、バレンタインデーにチョコはもらってねェし!
使用人のヤツらに渡してたのは知ってるけど。アガットもアリスからもらってたの見たし!ずるい!オレだって欲しかった…。
アリスがいうには、兄弟には誰にもあげないとは聞いてたけどさ、そんなの律儀に守ってんのアリスだけだぜ。他のメイドなんてカルロやライにあげてたぞ。リク兄にも渡してたヤツも結構いたし。アイツは知ってんのかな。
それよりも問題はお返しだ。いつももらってるから、何か返した方がいいのはわかっけどさ!
「あー!何を返せばいいんだよ…」
「何がです?」
「うわあ!」
「まるで幽霊を見たような驚き方しましたね、お坊っちゃま…」
いつの間にか部屋に戻って来てた。
アリスはオレに話しかけてくれていたらしいが、オレはまったく反応がなかったらしい。
ホワイトデーのお返しについて、よくわからないオレはアリスに聞いてみることにした。
だって、一人わからないで考えているよりはマシだから。
「ホワイトデーのお返し?もしかして、誰かからもらったんですか?」
「………リコリスに」
嘘は言ってねェ。
タスク兄からもリコリスにも絶対にお返ししろよ!って言われたから。リコリスが関わると本当にタスク兄はうるせェ。
「うーん。ホワイトデーだと私はもらう側なので、詳しくはわからないですが、私が今までもらった感じだと…」
「もらった!?誰に?!」
もらったことあるってことは、今までに誰かにあげたことあんのかよ!
オレにはくれなかったのに…!
「そんな驚かなくても…。父や幼なじみにお返しをもらったんですよ」
「幼なじみ…」
父親は家族だけど、幼なじみは他人じゃん。てか、ソイツ、アリスに好意持ってんじゃねェよな?怪しい…!
「ケーキやお菓子、お花とかもらったことはありますね。でも、それらも結構意味があるみたいなので、お坊っちゃまも渡す時は気をつけた方がいいですよ?」
「意味??」
「はい。そのプレゼントによって、相手が勘違いしてしまうそうですから」
「……」
「あ。ホワイトデーとかなら、私よりもカルロ様とか詳しそうですよね?聞いてみたらどうですか?」
えー、絶対ヤダ。バカにされるし。
こうなったら、ちゃんと聞いてくれるリク兄のところに行こう。
「ありがとう。オレ、リク兄のところ行ってくる!」
「え?リク様?何で…!?」
わけがわからないというアリスを置いて、部屋を出る。早速、リク兄の部屋を訪れた。
「ハルク、どうしたの?」
「あのさ、リク兄はホワイトデーのお返し、用意したんでしょ?」
「うん、したよ」
「意味もわかった上で用意したの?」
「意味?」
リク兄が不思議そうに首を傾げたから、さっき聞いたアリスの話を話した。
「そうなんだ。それは知らなかったな…。カルロ兄さんなら知ってそうな気はするけど」
「抜け目ないからねー、アイツ」
「だ・れ・が抜け目ないのかな?」
いつの間に背後にカルロが立っていた。
げっ。いつからいたんだよ…。
「兄さん。ホワイトデーに渡すお返しの意味は知ってた?」
「知ってるよ。お返しが人によっては勘違いさせちゃうみたいだね。去年、大学のヤツが義理でもらったチョコに適当なお菓子で返したら、告白されたと思って、その子につきまとわれちゃったんだって」
「その話、カルロじゃねェの?」
「違うよ。俺じゃないって。俺はそんなミスはしないから」
「……ちょっと調べてみよう」
リク兄がノートパソコンを開き、キーボードを軽く叩き始める。カルロとオレは横から覗き込む。
「確かに色々な意味があるね…」
「本当だ。…良かった。僕が用意したものは特に問題はないみたい」
「リクは何を用意したの?」
「ラスクだよ。カルロ兄さんは?」
「俺は人によってお返しは変えてるよ。うちのメイド達にはチョコケーキにしといたけど」
「そうなんだ。僕は全部統一したよ」
二人の話をよそにオレは画面に釘付けだった。
リコリスには無難なクッキーにしよう。マカロンなんてあげたら大惨事だ。だけど、アリスには何をあげよう。こんなにあると迷うし、悩むー。
「で、ハルクはアリスさんに何をあげるか決まった?」
「……迷ってる」
「早く決めないとホワイトデーが終わっちゃうよ?ハルク」
「わかってる!明日、アガットには学校帰りに街に寄ってもらうように頼んでくる。ありがとう、リク兄」
「お礼はリクだけ?」
「カルロはちゃかしてただけじゃん。そんなヤツにお礼なんて言わねェ」
「弟が冷たいよ、リク…」
「普段の行いのせいじゃない?カルロ兄さん。よく弟達で遊ぶから自業自得」
「こっちの弟は更に冷たい!」
カルロのお遊びには付き合っていられねェ。リク兄に手を振って、オレは自分の部屋に戻った。
翌日。
オレは学校帰りに街に来た。
色々な店を見て回ったが、なかなか見つからない。リコリスのはすぐに決まったのに、肝心のアリスのがない。どうしよう。早く帰らねェと。でも、何も買わずに帰るわけには…!
その時。
「……これだ!」
あるものを見つけて、それをすぐに購入した。よし。これなら、アリスが喜んでくれるはずだ!
その夜。
夕飯を食べ終えて、部屋に戻るといつも通りにアリスはいた。
「お帰りなさい、お坊っちゃま。ご飯はちゃんと残さずに食べましたか?」
「……うん」
「お坊っちゃま?」
「アリス、今時間ある?」
「ありますけど…」
「ちょっと来て!」
アリスの手を掴み、俺は部屋を出る。
連れて行った先は……テラスだった。
テラスには既にアガットが待っていた。横にはワゴンが置いてある。
「お待ちしておりました」
アリスが慌てて「手伝います!」とアガットに近寄ったが、アガットは首を横に振る。
「いいえ。アリスさんはこちらに座ってください」
「え、でも…」
「いいから!座れって」
全然座りそうにないから、強引にイスに座らせて、オレも横に座る。
「これはアリスさんへのホワイトデーのお返しなので、手伝いは不要ですよ。この紅茶はお坊っちゃまからで、俺達執事の皆からこのお菓子セットになります。どうぞ」
アガットがワゴンの中から次々と取り出して、アリスの前にティーポットと沢山のお菓子を置く。それを見て、アリスが驚いていた。
「え?こんなに沢山!?って、お坊っちゃまも私に…?あれ、お坊っちゃまにはバレンタインのチョコ、あげてないですよね??」
「もらってねェよ。オレはバレンタインのお返しじゃなくて、いつもお菓子を作ってもらってるから、そのお礼…」
恥ずかしくなって、つい顔をそらした。オレ、絶対に顔が赤い!すると、アリスが笑った。
「ふふ、お礼してくれたんですね。ありがとうございます。お坊っちゃま。アガットさんもお返し、ありがとうございます。他の皆さんにも後でお礼を言いに行きますね」
「いえ。そんなことは…。俺は用がありますので、少し席を外しますね」
一礼して、アガットがテラスから出ていく。絶対に空気を読まれて、アリスと二人きりにされた…。別にアガットいても大丈夫なのに!
「それにしても、お坊っちゃまが紅茶をプレゼントなんて珍しいですね…」
「どういう意味だよ!」
「お菓子のことしか考えてないと思ってましたから…」
否定出来ねェ。
確かに最初はお菓子にするつもりだったし。
「この紅茶が入ってる缶がお前っぽかったから、これを選んだんだよ!」
「…私っぽい?」
「お前の名前、“アリス”だろ?だから、不思議の国のアリスが描かれてる缶を見つけて、これだって思ったんだよ…」
この缶を見つけた時、これだって思った。だから、迷わずに購入した。
「ありがとうございます、お坊っちゃま。それじゃあ、今度はこの紅茶に合うお菓子でも作りますね」
「この紅茶はお前の…」
「一緒に飲みましょう?その方が楽しいじゃないですか」
どうして、オレを喜ばせるのが上手いんだよ。そんなこと言われたら…!
「あ!でも、これを一緒に飲む時はお坊っちゃまの部屋にしましょう。こんなところで二人で飲んでたら、怒られちゃいますからね!」
「ははっ、わかった!約束だからな」
「はい!」
数日後。
オレはアリスが作ってくれたお菓子と紅茶を部屋で楽しんだ。
一緒にいられるのが楽しくて、こんな時間が毎日あればいいのにと思った。
「アリス、紅茶は好き?」
「はい。好きですよ。お坊っちゃまは?」
「前はそんなに好きじゃなかったけど、好きになれたかも」
アリスのお陰だけど。
そんなこと本人には恥ずかしくて言えねェけどな。
来年も再来年もアリスにお返しはしよう。そう誓った…。
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それはホワイトデー前日のこと。
カ「明日はホワイトデーだったね。皆はお返しはするの?」
タ「オレ、リコリス以外は受け取ってねぇし。こないだの休みにプレゼントは買ってきたから、明日渡しに行くんだー!」
ド「オレ、全部いらないって突き返した。知らないヤツからもらったもんなんて食べたくもねーし。手作りなんてごめんだね」
リ「僕も一応、もらった分のお返しはは用意したけど」
ラ「お返しね…。面倒だから、体で返せばよくねぇ?」
カタ「「却下」」
ド「お前から体で返されてもね…。気持ち悪っ」
リ「せっかくもらったんだから、ちゃんと物で返さないとだよ。ライ」
ラ「ちぇ。いい案だと思ったんだけどな」
ハ「……」
カ「さっきから無言でいるハルク。お前は返さないの?」
ハ「オレ、誰からももらってねェし…!」
タ「何言ってんだよ。リコリスからもらっただろ。嘘つくなよ」
ハ「うっ…。でも、あんなの義理じゃん」
タ「当たり前だろ。リコリスの本命チョコはオレなんだから!他に誰からももらってないのかよ?」
ハ「もらってない…」
タ「ふーん。もらってない、ね…」
カ「もらってない、ね…」
カタ「「ねー」」
ハ「さっきから何が言いてェんだよ!」
カ「お前、普段からアリスにお菓子を作ってもらってるんだろ?」
ハ「そ、それは…」
タ「お前、ただ食ってるだけだもんなー。何か返したりしたことあんの?」
ハ「……………ない」
カ「聞きました?あんなに作ってもらっておいて、一度も返してないんですって」
タ「まー。ひどいですわね。お菓子作れって、アリスにねだるわりに何も礼もしてないだなんて」
カタ「「さいあくー」」
ハ「リク兄ー!」
リ「うーん、今回ばかりはカルロ兄さん達が正しいかな。アリスさんに何かお返ししたら?」
ハ「……」
オレの味方がいなかった…。皆がカルロ達の意見に賛成してた。
談話室を出て、歩きながら、オレは考えていた。
確かにお菓子は作ってもらってるけどさ、バレンタインデーにチョコはもらってねェし!
使用人のヤツらに渡してたのは知ってるけど。アガットもアリスからもらってたの見たし!ずるい!オレだって欲しかった…。
アリスがいうには、兄弟には誰にもあげないとは聞いてたけどさ、そんなの律儀に守ってんのアリスだけだぜ。他のメイドなんてカルロやライにあげてたぞ。リク兄にも渡してたヤツも結構いたし。アイツは知ってんのかな。
それよりも問題はお返しだ。いつももらってるから、何か返した方がいいのはわかっけどさ!
「あー!何を返せばいいんだよ…」
「何がです?」
「うわあ!」
「まるで幽霊を見たような驚き方しましたね、お坊っちゃま…」
いつの間にか部屋に戻って来てた。
アリスはオレに話しかけてくれていたらしいが、オレはまったく反応がなかったらしい。
ホワイトデーのお返しについて、よくわからないオレはアリスに聞いてみることにした。
だって、一人わからないで考えているよりはマシだから。
「ホワイトデーのお返し?もしかして、誰かからもらったんですか?」
「………リコリスに」
嘘は言ってねェ。
タスク兄からもリコリスにも絶対にお返ししろよ!って言われたから。リコリスが関わると本当にタスク兄はうるせェ。
「うーん。ホワイトデーだと私はもらう側なので、詳しくはわからないですが、私が今までもらった感じだと…」
「もらった!?誰に?!」
もらったことあるってことは、今までに誰かにあげたことあんのかよ!
オレにはくれなかったのに…!
「そんな驚かなくても…。父や幼なじみにお返しをもらったんですよ」
「幼なじみ…」
父親は家族だけど、幼なじみは他人じゃん。てか、ソイツ、アリスに好意持ってんじゃねェよな?怪しい…!
「ケーキやお菓子、お花とかもらったことはありますね。でも、それらも結構意味があるみたいなので、お坊っちゃまも渡す時は気をつけた方がいいですよ?」
「意味??」
「はい。そのプレゼントによって、相手が勘違いしてしまうそうですから」
「……」
「あ。ホワイトデーとかなら、私よりもカルロ様とか詳しそうですよね?聞いてみたらどうですか?」
えー、絶対ヤダ。バカにされるし。
こうなったら、ちゃんと聞いてくれるリク兄のところに行こう。
「ありがとう。オレ、リク兄のところ行ってくる!」
「え?リク様?何で…!?」
わけがわからないというアリスを置いて、部屋を出る。早速、リク兄の部屋を訪れた。
「ハルク、どうしたの?」
「あのさ、リク兄はホワイトデーのお返し、用意したんでしょ?」
「うん、したよ」
「意味もわかった上で用意したの?」
「意味?」
リク兄が不思議そうに首を傾げたから、さっき聞いたアリスの話を話した。
「そうなんだ。それは知らなかったな…。カルロ兄さんなら知ってそうな気はするけど」
「抜け目ないからねー、アイツ」
「だ・れ・が抜け目ないのかな?」
いつの間に背後にカルロが立っていた。
げっ。いつからいたんだよ…。
「兄さん。ホワイトデーに渡すお返しの意味は知ってた?」
「知ってるよ。お返しが人によっては勘違いさせちゃうみたいだね。去年、大学のヤツが義理でもらったチョコに適当なお菓子で返したら、告白されたと思って、その子につきまとわれちゃったんだって」
「その話、カルロじゃねェの?」
「違うよ。俺じゃないって。俺はそんなミスはしないから」
「……ちょっと調べてみよう」
リク兄がノートパソコンを開き、キーボードを軽く叩き始める。カルロとオレは横から覗き込む。
「確かに色々な意味があるね…」
「本当だ。…良かった。僕が用意したものは特に問題はないみたい」
「リクは何を用意したの?」
「ラスクだよ。カルロ兄さんは?」
「俺は人によってお返しは変えてるよ。うちのメイド達にはチョコケーキにしといたけど」
「そうなんだ。僕は全部統一したよ」
二人の話をよそにオレは画面に釘付けだった。
リコリスには無難なクッキーにしよう。マカロンなんてあげたら大惨事だ。だけど、アリスには何をあげよう。こんなにあると迷うし、悩むー。
「で、ハルクはアリスさんに何をあげるか決まった?」
「……迷ってる」
「早く決めないとホワイトデーが終わっちゃうよ?ハルク」
「わかってる!明日、アガットには学校帰りに街に寄ってもらうように頼んでくる。ありがとう、リク兄」
「お礼はリクだけ?」
「カルロはちゃかしてただけじゃん。そんなヤツにお礼なんて言わねェ」
「弟が冷たいよ、リク…」
「普段の行いのせいじゃない?カルロ兄さん。よく弟達で遊ぶから自業自得」
「こっちの弟は更に冷たい!」
カルロのお遊びには付き合っていられねェ。リク兄に手を振って、オレは自分の部屋に戻った。
翌日。
オレは学校帰りに街に来た。
色々な店を見て回ったが、なかなか見つからない。リコリスのはすぐに決まったのに、肝心のアリスのがない。どうしよう。早く帰らねェと。でも、何も買わずに帰るわけには…!
その時。
「……これだ!」
あるものを見つけて、それをすぐに購入した。よし。これなら、アリスが喜んでくれるはずだ!
その夜。
夕飯を食べ終えて、部屋に戻るといつも通りにアリスはいた。
「お帰りなさい、お坊っちゃま。ご飯はちゃんと残さずに食べましたか?」
「……うん」
「お坊っちゃま?」
「アリス、今時間ある?」
「ありますけど…」
「ちょっと来て!」
アリスの手を掴み、俺は部屋を出る。
連れて行った先は……テラスだった。
テラスには既にアガットが待っていた。横にはワゴンが置いてある。
「お待ちしておりました」
アリスが慌てて「手伝います!」とアガットに近寄ったが、アガットは首を横に振る。
「いいえ。アリスさんはこちらに座ってください」
「え、でも…」
「いいから!座れって」
全然座りそうにないから、強引にイスに座らせて、オレも横に座る。
「これはアリスさんへのホワイトデーのお返しなので、手伝いは不要ですよ。この紅茶はお坊っちゃまからで、俺達執事の皆からこのお菓子セットになります。どうぞ」
アガットがワゴンの中から次々と取り出して、アリスの前にティーポットと沢山のお菓子を置く。それを見て、アリスが驚いていた。
「え?こんなに沢山!?って、お坊っちゃまも私に…?あれ、お坊っちゃまにはバレンタインのチョコ、あげてないですよね??」
「もらってねェよ。オレはバレンタインのお返しじゃなくて、いつもお菓子を作ってもらってるから、そのお礼…」
恥ずかしくなって、つい顔をそらした。オレ、絶対に顔が赤い!すると、アリスが笑った。
「ふふ、お礼してくれたんですね。ありがとうございます。お坊っちゃま。アガットさんもお返し、ありがとうございます。他の皆さんにも後でお礼を言いに行きますね」
「いえ。そんなことは…。俺は用がありますので、少し席を外しますね」
一礼して、アガットがテラスから出ていく。絶対に空気を読まれて、アリスと二人きりにされた…。別にアガットいても大丈夫なのに!
「それにしても、お坊っちゃまが紅茶をプレゼントなんて珍しいですね…」
「どういう意味だよ!」
「お菓子のことしか考えてないと思ってましたから…」
否定出来ねェ。
確かに最初はお菓子にするつもりだったし。
「この紅茶が入ってる缶がお前っぽかったから、これを選んだんだよ!」
「…私っぽい?」
「お前の名前、“アリス”だろ?だから、不思議の国のアリスが描かれてる缶を見つけて、これだって思ったんだよ…」
この缶を見つけた時、これだって思った。だから、迷わずに購入した。
「ありがとうございます、お坊っちゃま。それじゃあ、今度はこの紅茶に合うお菓子でも作りますね」
「この紅茶はお前の…」
「一緒に飲みましょう?その方が楽しいじゃないですか」
どうして、オレを喜ばせるのが上手いんだよ。そんなこと言われたら…!
「あ!でも、これを一緒に飲む時はお坊っちゃまの部屋にしましょう。こんなところで二人で飲んでたら、怒られちゃいますからね!」
「ははっ、わかった!約束だからな」
「はい!」
数日後。
オレはアリスが作ってくれたお菓子と紅茶を部屋で楽しんだ。
一緒にいられるのが楽しくて、こんな時間が毎日あればいいのにと思った。
「アリス、紅茶は好き?」
「はい。好きですよ。お坊っちゃまは?」
「前はそんなに好きじゃなかったけど、好きになれたかも」
アリスのお陰だけど。
そんなこと本人には恥ずかしくて言えねェけどな。
来年も再来年もアリスにお返しはしよう。そう誓った…。
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