Riku(叶)




やっと解放されたのは、五日後。
着てきた服は、あの人に破られたから処分されたらしい。別に用意された服を着て、僕は誰もいない部屋でクロッカスを待つ。

待っていると、ドアが勢い良く開かれた。



「リク様!」

「クロッカス…」

「お待たせしました。急いで帰りましょう!」

「………うん」


僕を見て、一瞬何かを言いかけたクロッカス。だが、何も聞かずにいてくれた。迎えに来てくれたクロッカスと共に逃げるようにここを離れた。

車がある程度、あの場所から離れてから、僕はやっと息が出来た。



「……………はあっ」

「大丈夫ですか?」


運転しながら、クロッカスが心配そうに僕に声をかけてくれる。クロッカスは、僕との付き合いは長いからか、僕のことをわかってくれている。だから、正直に話す。



「毎回のことだけどさ、僕はあの人が怖い。あの人に気に入られることが良いという親戚もいるけれど、僕にはそう思えない。代われるのなら、代わって欲しいよ」

「……。叶様には、誰も手を出せませんからね」


クロッカスが悔しそうにそう言った。
叶。あの人が何者か、僕は知らない。父さんやおじいさまなら、知っているかもしれないが、僕は知りたくないから聞かない。ただあの人に逆らうことは、死を意味する。昔、あの人に逆らった者達がどんな死に方をしたのか、僕もクロッカスも知っている。

だから、僕は従うしかない。呪いをこれ以上、進行させないように。



「クロッカス。少し寝ていいかな?ちょっと疲れちゃった…」

「かしこまりました。屋敷に着いたら、起こしますので」

「うん。お願い…」


屋敷に着くまでの間、僕は眠ることにした。寝ると決めたら、あっという間に睡魔に襲われた。



.
2/3ページ
スキ