特別番外編Ⅱ
【おまけ】
スマルトがノワールの前から去った後、入れ代わるようにブランが現れた。彼もまだ正装ではなく、ラフな服を着ているが、髪はボサボサ。書類でも読んでいたのか、眼鏡もかけていた。
「クロ」
「ブラン。いつの間に…」
「執務室にいたんだ。クロの声が聞こえたから、出てきた」
「そうか…」
ノワールは支度をしようと踵を返そうとした。だが、その前にブランがそれを止めた。
「スマルトはたまたま自分がアメジスト様に選ばれたからと思っているようだけど、それは違うんだよ」
「どういうことだ?」
「最初はスマルトの母親に似ているからだよ」
「スマルトの母親は、エメラルド・スノーホワイトだったな」
「そう。結婚したから、エメラルド・ティラミスだよ。アメジスト様を最後まで受け入れなかった庶民の女。いや、玩具…」
「アガットの父親の妹だったな。確か、トパーズ・ティラミスと逃げたんだよな」
「うん。スマルトはその二人の子供だけど、アンバーは父親が違うのは知ってた?」
「まさか、アンバーは…!」
「アメジスト様の子供だよ。カルロ様達と半分血は繋がってる」
「アメジスト様はそのことを知っているのか?」
「そりゃ知ってるよ。でも、言わない。興味がないからね」
「……」
「アンバーはさ、専属執事の中で唯一、アメジスト様の血を引いているけど、全然似ていないよね」
「似ていないな。どちらかというと、アンバーは考えるより身体が動くタイプだな」
「その点だけだと、ハルク様やライ様と似てるよね。半分だけ同じ血を引いてるからだろうけど。カルロ様の隣にいると、本当に対照的。静と動」
「カルロ様よりアンバーの方が生まれたのは、早かったな。アンバーが生まれる前にエメラルド・ティラミスはアメジスト様の前からいなくなった。しかし、スマルトを生んだ数年後に二人は事故により他界してる。しばらくの間、ボルドーさん夫婦に育てられた。でも、ボルドーさんの奥さんが病気で亡くなり…」
「アメジスト様が二人を例の施設に入れた。ボルドーさんが気づかないうちにね」
「……」
ノワールは黙ってしまった。そんなノワールにブランは話し続ける。
「クロさ、本当はスマルトのことを助けたいんでしょ?だめだよ?」
「……わかってるさ。アメジスト様を裏切ることはしない」
「なら、いいけど」
「着替えてくる」
「行ってらっしゃーい」
ノワールは今度こそ着替えるために、自分の部屋に戻ってく。それを見送り、一人残されたブランは、ため息を吐いた。
「……クロは優し過ぎるよ。そこがいいところであると同時に悪いところでもある。もっと冷たくならないと生きていけないのに」
【END】
スマルトがノワールの前から去った後、入れ代わるようにブランが現れた。彼もまだ正装ではなく、ラフな服を着ているが、髪はボサボサ。書類でも読んでいたのか、眼鏡もかけていた。
「クロ」
「ブラン。いつの間に…」
「執務室にいたんだ。クロの声が聞こえたから、出てきた」
「そうか…」
ノワールは支度をしようと踵を返そうとした。だが、その前にブランがそれを止めた。
「スマルトはたまたま自分がアメジスト様に選ばれたからと思っているようだけど、それは違うんだよ」
「どういうことだ?」
「最初はスマルトの母親に似ているからだよ」
「スマルトの母親は、エメラルド・スノーホワイトだったな」
「そう。結婚したから、エメラルド・ティラミスだよ。アメジスト様を最後まで受け入れなかった庶民の女。いや、玩具…」
「アガットの父親の妹だったな。確か、トパーズ・ティラミスと逃げたんだよな」
「うん。スマルトはその二人の子供だけど、アンバーは父親が違うのは知ってた?」
「まさか、アンバーは…!」
「アメジスト様の子供だよ。カルロ様達と半分血は繋がってる」
「アメジスト様はそのことを知っているのか?」
「そりゃ知ってるよ。でも、言わない。興味がないからね」
「……」
「アンバーはさ、専属執事の中で唯一、アメジスト様の血を引いているけど、全然似ていないよね」
「似ていないな。どちらかというと、アンバーは考えるより身体が動くタイプだな」
「その点だけだと、ハルク様やライ様と似てるよね。半分だけ同じ血を引いてるからだろうけど。カルロ様の隣にいると、本当に対照的。静と動」
「カルロ様よりアンバーの方が生まれたのは、早かったな。アンバーが生まれる前にエメラルド・ティラミスはアメジスト様の前からいなくなった。しかし、スマルトを生んだ数年後に二人は事故により他界してる。しばらくの間、ボルドーさん夫婦に育てられた。でも、ボルドーさんの奥さんが病気で亡くなり…」
「アメジスト様が二人を例の施設に入れた。ボルドーさんが気づかないうちにね」
「……」
ノワールは黙ってしまった。そんなノワールにブランは話し続ける。
「クロさ、本当はスマルトのことを助けたいんでしょ?だめだよ?」
「……わかってるさ。アメジスト様を裏切ることはしない」
「なら、いいけど」
「着替えてくる」
「行ってらっしゃーい」
ノワールは今度こそ着替えるために、自分の部屋に戻ってく。それを見送り、一人残されたブランは、ため息を吐いた。
「……クロは優し過ぎるよ。そこがいいところであると同時に悪いところでもある。もっと冷たくならないと生きていけないのに」
【END】