Boy and Maid (Sakito&Serena)1

数日後。
俺は屋敷内の庭にいた。はあ、つまんねー。地味に外に行けねーのはしんどい。早く解除されねーかな。マジで干からびそう。



「何だかつまらなさそうな顔してますね」


いきなりそんな声がした。
誰だ?てか、どこから…─────いた。

木の上に髪を二つに結んだ女。しかも、アイスを食っていた。

てか、コイツ、うちの使用人だよな。うちの制服、着てるし。カイトの傍にいるメイドのエレナか?いや、少し違う。てか、アイツはカイトの傍から離れるわけがないし、真面目だからこんなところでサボるタイプではない。じゃあ、この女は一体?



「お前こそ、そこで何してんの?仕事中だろ?」

「そうですね。でも、私は思うままに生きることにしてますから」

「は?」

「だって、自分の人生なんですよ?一度しかないんですから、好きに生きたいじゃないですか。あー、アイス、おいしい!」


なんだ、コイツ。わけわかんねえ。しかも、アイスを食いながら言われても、全然響かねぇし。



「別に言いたければ言ってもいいですよ?」

「え?」

「私、クビなんて怖くありませんから」


アイスを食べ終わったらしい。木から降りてきた。
それじゃあ、と言って、女は去っていく。



「……なんだ?アイツ」


変な女。
だけど、アイツの言ってることは間違ってない。自分の人生は自分のものだ。誰かになんて決められたくねえ。

その点は、アイツの意見に賛成だ。










「カイト」

「サキト、どうしたの?」

「あのさ、エレナに似たメイドがいんだけど、名前わかるか?」

「エレナさんに似た…?」


カイトが首を傾げる。が、すぐに思い出したのか、ああっと声を出す。



「それはエレナさんの妹のセレナさんだよ」

「セレナ?」

「うん。セレナさん、木に登ってなかった?」

「ああ、そこでアイス食ってた」

「ふふっ、やっぱり。セレナさん、3時になると大体あの木に登って、アイスを食べてるから。エレナさんが「まったくあの子は自由人なんだから」ってよく言ってるから」


確かにあれは自由過ぎるだろ。木の上にいるって、猫かよ。セレナ猫。



「でも、珍しいね。サキトが誰かのことを気にするなんて」

「別に。ただ変な女だったから、つい気になっただけだって」


それだけだ。どうせすぐ忘れる。使用人なんて、沢山いるし。



しかし、この出会いが俺を変えることになることを、この時の俺はまだ知らない。





【END】
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