Boy and Maid (Sakito&Serena)1

気づけば、いつも比べられた。
双子である片割れの兄・カイトと。

別にカイトのことは嫌いじゃない。だって、アイツが悪いわけじゃないから。出来ない俺が悪いんだ。親父やお袋も俺を責めるようなことは言わない。「カイトはカイト、サキトはサキトだからって」優しく笑ったから。カイトもそうだ。「ゆっくりやればいいよ。サキトのペースで」って優しく笑うんだ。

俺にはかえって、それが辛い。優しさは時に残酷なんだ。


何で俺はこの家に生まれたのだろう?もっと相応しいヤツがここにいたら、親父もお袋もカイトも皆、俺のせいで心を痛めることはなかったのに。



そんな家族は俺に優しかった。
でも、使用人達は違う。影で俺のことを嘲笑っていた。





「カイト様は優秀だけど、サキト様は全然ダメだよな。それだけじゃない。カイト様は誰にでも挨拶してくれるが、サキト様は挨拶もしない。何様なんだろうな。出来損ないのくせに」

「アイリス様もアリシア様もカイト様も優しくて素晴らしい方達なのにな。あんなのが産まれて、かわいそうに」

「悪かったな。挨拶の出来ない出来損ないで」


俺の悪口を言っていた使用人の前に姿を見せた。そこにいたのは、若い男二人。



「サキト様…」

「今の聞いて…!」

「俺も思うぜ。こんな出来損ないの面倒を見ないと仕事をもらえないお前らがさ。……かっわいそうに」


思いきり嘲笑ってやった。すると、使用人達はバカにされたのがわかったのだろう。怒りながら、こちらに向かってきた。



「……ちっ。このクソガキ!」


そのうちの一人がオレに殴りかかってきた。けど、ケンカになれてないんだろう。さっと避けて、足を引っかけたら、すぐに派手に転んだ。起き上がって来なかったから、気絶したのだろう。俺は鼻で笑う。



「……だっせぇ」

「このガキ!」


別のヤツがオレを後ろから羽交い締めにしてきた。コイツも慣れてねぇ。冷静に判断しながら、ソイツの鳩尾に肘鉄を食らわし、体から離れたのを見計らい、蹴飛ばした。ソイツは受け身すらも取れず、ひっくり返った。



「弱っ」


俺にケンカ売ってきたくせに、こんな弱いヤツらとは思わなかった。憂さ晴らしでも出来るかと思ったのに…。くそ。もっと骨がありそうなヤツはいないのかよ。
俺は静かにその場を後にした。


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