Boy and Maid 9
❰side R❱
夕方。
出かけていた僕は、家に帰って来た。
部屋に入ろうとした時、向こう側からカメリアが歩いてきた。僕を見るなり、彼女は駆け寄ってくる。
「リク!」
「カメリア。久しぶりだね」
久しぶりに見た彼女は、ますます父さんの妹であるシトリンおばさんに似てきた。僕も父さんに似てきているから、よく父さん達を知る人達から見たら、兄妹と見間違われることもあった。
カメリアはライのところに来ていたんだろう。
露出の高い服を着たカメリアの体には赤い痕がところどころについていた。ライがつけたのだろう。ライと交わった体で僕に触れてくる。
「うふふ。リク、いい匂い…」
「そうかな?ありがとう…」
カメリアが僕に抱きついてくる。
キモチワルイ。キタナイ。ボクニサワルナ。
体が拒否反応を示す。
ライは弟だし、カメリアもいとこだ。わかっているけど、触られたくない。気持ちが悪いと思ってしまう。
顔には出さないように、笑顔で必死にそれを隠す。
「リク、部屋に入ってもいい?久しぶりに会えたから、もっとお喋りしたいの」
「カメリアは帰るところじゃなかったの?」
「そうだけど、時間はまだ平気よ。ドルチェ家にいるなら、パパもママも心配しないし。ね、いいでしょ?」
部屋に入れたくない。
入れたら、僕は彼女が触れたところ、すべてを捨てるだろう。既にカメリアに触れられた服は間違いなく捨てる。汚いから。
どう断ればいいのだろうか?カメリアはそんな簡単には引き下がらない。
頭を悩ませていた時、「リク様」と僕を呼ぶ声がした。アリスさんだった。
「アリスさん、どうかしましたか?」
「執事長がお呼びです。すぐに来て欲しいそうです」
「わかりました。すぐに行きますね。……ごめんね、カメリア。僕、行かないとだから」
「もう仕方ないわ。今回だけだから。また今度、お喋りしてね」
「うん。気をつけて帰ってね」
カメリアにそう告げて、僕は彼女を見送る。アリスさんもカメリアに一礼した。それから僕はアリスさんに近づく。
「お待たせしました。ボルドーのところに行きましょうか」
「……」
「アリスさん?」
アリスさんに声をかけるも反応がない。どうしたんだろう?カメリアの姿が見えなくなってから、アリスさんが僕に頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「えっ…」
「執事長が呼んでるというのは嘘なんです!」
まさか、アリスさんが嘘をつくとは思わなかった。でも、彼女が理由もなく、そんなことをするようには見えない。
「どうして、そんなことを…?」
「何だかリク様が困って見えたので…」
「え?」
「少し顔色も悪いようにも見えて…。だから、あの方をリク様から引き離した方がいいかと思って、嘘をつきました。本当にごめんなさい!!」
他人に気づかれるとは思わなかった。嫌なことがあっても、笑顔で隠してきた。誰も気づかないから。それなのに、彼女は僕の本当の想いに気づいた。気づいてくれた。
「顔を上げてください。アリスさん…」
「リク様…」
どうして、彼女にバレてしまうのだろう。上手く隠せたつもりだったのに…。
だから、彼女に触れても拒否反応がないのか。僕が唯一、嫌悪感なく触れられる人。
「怒ってないです。本当は僕も困っていたんです。助かりました。ありがとうございます」
「あまり無理なさらないでくださいね?何かあったら、心配ですから」
「ありがとうございます」
そう言うと、アリスさんは一礼して行ってしまう。きっとハルクの部屋に向かったのだろう。
彼女は優しい。だから、敏感に気づく。
でも、自分に向けられる好意にはひどく鈍いけれど。
いつかアリスさんも誰かのものになってしまう。誰かと交わってしまったら、僕はアリスさんさえも拒否してしまうかもしれない。
誰かと交わってしまうのなら、僕が彼女と一緒になりたい。だが、父さんが許すわけがない。
僕は父さんのあとを継ぐことになっているから、庶民であるアリスさんとは一緒にはなれない。愛人として囲うのなら?嫌だ。アリスさんを愛人にするなんて…。僕は彼女だけを愛したい。
僕はどうしたら───
【END】
夕方。
出かけていた僕は、家に帰って来た。
部屋に入ろうとした時、向こう側からカメリアが歩いてきた。僕を見るなり、彼女は駆け寄ってくる。
「リク!」
「カメリア。久しぶりだね」
久しぶりに見た彼女は、ますます父さんの妹であるシトリンおばさんに似てきた。僕も父さんに似てきているから、よく父さん達を知る人達から見たら、兄妹と見間違われることもあった。
カメリアはライのところに来ていたんだろう。
露出の高い服を着たカメリアの体には赤い痕がところどころについていた。ライがつけたのだろう。ライと交わった体で僕に触れてくる。
「うふふ。リク、いい匂い…」
「そうかな?ありがとう…」
カメリアが僕に抱きついてくる。
キモチワルイ。キタナイ。ボクニサワルナ。
体が拒否反応を示す。
ライは弟だし、カメリアもいとこだ。わかっているけど、触られたくない。気持ちが悪いと思ってしまう。
顔には出さないように、笑顔で必死にそれを隠す。
「リク、部屋に入ってもいい?久しぶりに会えたから、もっとお喋りしたいの」
「カメリアは帰るところじゃなかったの?」
「そうだけど、時間はまだ平気よ。ドルチェ家にいるなら、パパもママも心配しないし。ね、いいでしょ?」
部屋に入れたくない。
入れたら、僕は彼女が触れたところ、すべてを捨てるだろう。既にカメリアに触れられた服は間違いなく捨てる。汚いから。
どう断ればいいのだろうか?カメリアはそんな簡単には引き下がらない。
頭を悩ませていた時、「リク様」と僕を呼ぶ声がした。アリスさんだった。
「アリスさん、どうかしましたか?」
「執事長がお呼びです。すぐに来て欲しいそうです」
「わかりました。すぐに行きますね。……ごめんね、カメリア。僕、行かないとだから」
「もう仕方ないわ。今回だけだから。また今度、お喋りしてね」
「うん。気をつけて帰ってね」
カメリアにそう告げて、僕は彼女を見送る。アリスさんもカメリアに一礼した。それから僕はアリスさんに近づく。
「お待たせしました。ボルドーのところに行きましょうか」
「……」
「アリスさん?」
アリスさんに声をかけるも反応がない。どうしたんだろう?カメリアの姿が見えなくなってから、アリスさんが僕に頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「えっ…」
「執事長が呼んでるというのは嘘なんです!」
まさか、アリスさんが嘘をつくとは思わなかった。でも、彼女が理由もなく、そんなことをするようには見えない。
「どうして、そんなことを…?」
「何だかリク様が困って見えたので…」
「え?」
「少し顔色も悪いようにも見えて…。だから、あの方をリク様から引き離した方がいいかと思って、嘘をつきました。本当にごめんなさい!!」
他人に気づかれるとは思わなかった。嫌なことがあっても、笑顔で隠してきた。誰も気づかないから。それなのに、彼女は僕の本当の想いに気づいた。気づいてくれた。
「顔を上げてください。アリスさん…」
「リク様…」
どうして、彼女にバレてしまうのだろう。上手く隠せたつもりだったのに…。
だから、彼女に触れても拒否反応がないのか。僕が唯一、嫌悪感なく触れられる人。
「怒ってないです。本当は僕も困っていたんです。助かりました。ありがとうございます」
「あまり無理なさらないでくださいね?何かあったら、心配ですから」
「ありがとうございます」
そう言うと、アリスさんは一礼して行ってしまう。きっとハルクの部屋に向かったのだろう。
彼女は優しい。だから、敏感に気づく。
でも、自分に向けられる好意にはひどく鈍いけれど。
いつかアリスさんも誰かのものになってしまう。誰かと交わってしまったら、僕はアリスさんさえも拒否してしまうかもしれない。
誰かと交わってしまうのなら、僕が彼女と一緒になりたい。だが、父さんが許すわけがない。
僕は父さんのあとを継ぐことになっているから、庶民であるアリスさんとは一緒にはなれない。愛人として囲うのなら?嫌だ。アリスさんを愛人にするなんて…。僕は彼女だけを愛したい。
僕はどうしたら───
【END】
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