Boy and Maid 7
「……」
「……」
さっき別れたはずなのに、男の子が私の後をついてきてる。なんで?まだ何かあるのかな。
「あの、帰らなくていいんですか?」
「気にするな。時間が来たら帰る」
時間って、まだ二時間はあるのに…。それまで私のそばにいるってこと?身なりからして、お金持ちの子だと思うんだけど。さっきもカードで支払っていたし。これくらいの子は、よく行くお店とか持ってそうなのに…。
「もしかして、他に行くところがないんですか?」
「違っ…!ただブラブラしてるだけだ!お前の後をついて行ってるわけじゃないぞ!たまたまおれの行く先にお前がいるだけだからな」
「そうですか…」
たまたまではなく、ずっとついて来ているけどね。指摘はしない。こういう子は素直に認めないから。
街に来てみたけど、どう時間を潰すのかわからないのかな?これくらいの子なら友達と遊んだりすればいいのでは。いないのかな?
そういえば、去年もお坊っちゃまに似たようなことを聞いたっけ。
「宜しかったら、時間まで私と行動しますか?スーパーで買い物するだけですけど」
「……そ、そこまで言うなら、言ってやらなくもない。普段とは違う体験が出来そうだし」
そう言ってるけど、明らかにホッとしてる。やっぱり何していいのかわからなかったんだ。だから、カフェも一人で入りたくなかったから、私を連れて行ったのか。納得。
私は男の子と一緒に大型スーパーを巡った。
春頃にお坊っちゃまを別のスーパーに連れて行った時と反応がまったく同じで、つい笑ってしまう。その度に少年は怒るけど、可愛いく見えた。可愛いって言ったら怒っていたけど。だって、反応が可愛かったから。弟がいたら、こんな感じかな。
うちには可愛くない妹しかいないからね。
その後、無事に買い物を済ませると、時間も5時を回っていた。
「なあ。お前の家はどこだ?うちの車で送ってやる」
「家ですか?大丈夫ですよ。帰れますから」
「その荷物を持って帰るのは大変だろ。待ってろ。今うちの車を呼ぶ」
そう言って、彼はスマホを取り出して、連絡する。どうして、私にそこまでしてくれるんだろう。
「お前の家、ここからどれくらいかかる?」
「えっと、ここからだと…」
私は男の子に時間を伝える。すると、彼は電話の向こうの相手と話し始めた。うーん。送ってくれると言ってくれてるし、お願いしちゃおうかな。
「5分くらいでここに来る」
「わかりました。それじゃあ、お言葉に甘えてお願いしてもいいですか?」
「ああ。最初からそう言ってる。……お前には世話になったし」
この子も素直じゃないけど、わかりやすいな。
車は男の子の言う通り、5分後に来た。私は男の子と一緒に車に乗り込む。
「それで、お前の家は?」
「ドルチェ家はわかります?そこまでお願いしたいのですが」
「ドルチェ家?」
「はい。私、そこで働いているので」
「じゃあ、おれをお坊っちゃまと呼んだのって…」
「?」
「……何でもない」
それから男の子は何も話さなくなった。不機嫌になったわけじゃないけど、何かを考えてるみたいだった。全然私の方には向いてくれない。せっかく仲良くなれたと思ったのに…。
仕方なく、私は窓の外を見ることにした。車を走らせて、20分くらい経った頃で見慣れた景色が見えて、私は声を上げる。
「あ、もうこの辺でいいです。停めてください」
「屋敷はもう少し先だろ?ちゃんと送るぞ」
「大丈夫ですよ。もうそんな距離でもないですから」
車を端に寄せて停めてもらい、降りた。買った荷物を抱え、車のドアを閉めて、男の子に頭を下げる。男の子は窓を開けて、こちらを見た。
「本当に助かりました。ありがとうございます!」
「別に。これくらい大したことないから、礼はいらない。……それより」
「はい?」
「お前の名前は?」
「私ですか?そういえば、言っていませんでしたね。私の名前は……っ!」
名前を告げようとしたら、後ろに引っ張られた。え、何!?
「ツツジ!!」
「ハルク…」
私を引っ張ったのはお坊っちゃまだった。目の前の男の子がお坊っちゃまを見て、眉をひそめる。
あれ?二人は知り合い??それにしては、雰囲気が良くないような…。
「どういうつもりだよ!!」
「何が?」
「何でアリスと一緒なんだよ!」
「ふん。お前には関係ないだろ。……車、出してくれ」
そう言って、男の子は窓を閉めて、行ってしまった。あの子の名前、ツツジくんだっけ?お坊っちゃまがそう呼んでいたけど。
お坊っちゃまが振り返り、私に問う。
「何でアイツといたんだよ!」
「それは私がお坊っちゃまと見間違えて、声をかけちゃったのが始まりでして…」
「全然似てねェし!!他のヤツが間違えるのはわかるけど、いつもオレといるお前がなんで間違えんだよ!」
お坊っちゃま、すごい怒ってる。あの男の子と仲良くないんだろうな。というか、お坊っちゃまの場合、仲良くなれる方が難しいのかもしれない。リゼルともケンカしていたし。
「反応とかはお坊っちゃまと似てましたし」
「一緒にすんなよ!」
「……ごめんなさい」
気まずくなり、お互い黙る。こうしていても、仕方ないか。私は口を開く。
「荷物があるので、先に戻りますね」
「……。今日はもう部屋に来なくていいから」
「…わかりました。失礼します」
一礼して、その場を去る。
お坊っちゃまも難しい年頃になっちゃったんだな。これからも扱いづらくなっちゃうのかな。元からそんなに素直じゃなかったけど。
.
「……」
さっき別れたはずなのに、男の子が私の後をついてきてる。なんで?まだ何かあるのかな。
「あの、帰らなくていいんですか?」
「気にするな。時間が来たら帰る」
時間って、まだ二時間はあるのに…。それまで私のそばにいるってこと?身なりからして、お金持ちの子だと思うんだけど。さっきもカードで支払っていたし。これくらいの子は、よく行くお店とか持ってそうなのに…。
「もしかして、他に行くところがないんですか?」
「違っ…!ただブラブラしてるだけだ!お前の後をついて行ってるわけじゃないぞ!たまたまおれの行く先にお前がいるだけだからな」
「そうですか…」
たまたまではなく、ずっとついて来ているけどね。指摘はしない。こういう子は素直に認めないから。
街に来てみたけど、どう時間を潰すのかわからないのかな?これくらいの子なら友達と遊んだりすればいいのでは。いないのかな?
そういえば、去年もお坊っちゃまに似たようなことを聞いたっけ。
「宜しかったら、時間まで私と行動しますか?スーパーで買い物するだけですけど」
「……そ、そこまで言うなら、言ってやらなくもない。普段とは違う体験が出来そうだし」
そう言ってるけど、明らかにホッとしてる。やっぱり何していいのかわからなかったんだ。だから、カフェも一人で入りたくなかったから、私を連れて行ったのか。納得。
私は男の子と一緒に大型スーパーを巡った。
春頃にお坊っちゃまを別のスーパーに連れて行った時と反応がまったく同じで、つい笑ってしまう。その度に少年は怒るけど、可愛いく見えた。可愛いって言ったら怒っていたけど。だって、反応が可愛かったから。弟がいたら、こんな感じかな。
うちには可愛くない妹しかいないからね。
その後、無事に買い物を済ませると、時間も5時を回っていた。
「なあ。お前の家はどこだ?うちの車で送ってやる」
「家ですか?大丈夫ですよ。帰れますから」
「その荷物を持って帰るのは大変だろ。待ってろ。今うちの車を呼ぶ」
そう言って、彼はスマホを取り出して、連絡する。どうして、私にそこまでしてくれるんだろう。
「お前の家、ここからどれくらいかかる?」
「えっと、ここからだと…」
私は男の子に時間を伝える。すると、彼は電話の向こうの相手と話し始めた。うーん。送ってくれると言ってくれてるし、お願いしちゃおうかな。
「5分くらいでここに来る」
「わかりました。それじゃあ、お言葉に甘えてお願いしてもいいですか?」
「ああ。最初からそう言ってる。……お前には世話になったし」
この子も素直じゃないけど、わかりやすいな。
車は男の子の言う通り、5分後に来た。私は男の子と一緒に車に乗り込む。
「それで、お前の家は?」
「ドルチェ家はわかります?そこまでお願いしたいのですが」
「ドルチェ家?」
「はい。私、そこで働いているので」
「じゃあ、おれをお坊っちゃまと呼んだのって…」
「?」
「……何でもない」
それから男の子は何も話さなくなった。不機嫌になったわけじゃないけど、何かを考えてるみたいだった。全然私の方には向いてくれない。せっかく仲良くなれたと思ったのに…。
仕方なく、私は窓の外を見ることにした。車を走らせて、20分くらい経った頃で見慣れた景色が見えて、私は声を上げる。
「あ、もうこの辺でいいです。停めてください」
「屋敷はもう少し先だろ?ちゃんと送るぞ」
「大丈夫ですよ。もうそんな距離でもないですから」
車を端に寄せて停めてもらい、降りた。買った荷物を抱え、車のドアを閉めて、男の子に頭を下げる。男の子は窓を開けて、こちらを見た。
「本当に助かりました。ありがとうございます!」
「別に。これくらい大したことないから、礼はいらない。……それより」
「はい?」
「お前の名前は?」
「私ですか?そういえば、言っていませんでしたね。私の名前は……っ!」
名前を告げようとしたら、後ろに引っ張られた。え、何!?
「ツツジ!!」
「ハルク…」
私を引っ張ったのはお坊っちゃまだった。目の前の男の子がお坊っちゃまを見て、眉をひそめる。
あれ?二人は知り合い??それにしては、雰囲気が良くないような…。
「どういうつもりだよ!!」
「何が?」
「何でアリスと一緒なんだよ!」
「ふん。お前には関係ないだろ。……車、出してくれ」
そう言って、男の子は窓を閉めて、行ってしまった。あの子の名前、ツツジくんだっけ?お坊っちゃまがそう呼んでいたけど。
お坊っちゃまが振り返り、私に問う。
「何でアイツといたんだよ!」
「それは私がお坊っちゃまと見間違えて、声をかけちゃったのが始まりでして…」
「全然似てねェし!!他のヤツが間違えるのはわかるけど、いつもオレといるお前がなんで間違えんだよ!」
お坊っちゃま、すごい怒ってる。あの男の子と仲良くないんだろうな。というか、お坊っちゃまの場合、仲良くなれる方が難しいのかもしれない。リゼルともケンカしていたし。
「反応とかはお坊っちゃまと似てましたし」
「一緒にすんなよ!」
「……ごめんなさい」
気まずくなり、お互い黙る。こうしていても、仕方ないか。私は口を開く。
「荷物があるので、先に戻りますね」
「……。今日はもう部屋に来なくていいから」
「…わかりました。失礼します」
一礼して、その場を去る。
お坊っちゃまも難しい年頃になっちゃったんだな。これからも扱いづらくなっちゃうのかな。元からそんなに素直じゃなかったけど。
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