Boy and Maid 7

街に買い物に来ていたら、お坊っちゃまを見かけた。あれ?今日はコウくんの家に遊びに行っているはずなのに…。一人みたいだし。どうしたんだろう?喧嘩でもしたのかな。
気になった私は、お坊っちゃまに近づき、話しかけた。



「お坊っちゃま。どうしたんですか?今日はコウくんのお家に…」

「……え、誰?お前」


よく見たら、違う。
髪が跳ねていない。というか、お坊っちゃま、服をこんなにちゃんと着ないし。出かけた時に着ていた服と全然違うのに、なんで間違えたの!私。
向こうも私を不審者と疑っているのか、ジロジロと見てくるし。ここは素直に謝って去ろう。



「知り合いと間違えました。ごめんなさい。それでは」

「ちょっと待て」

「はい?」


行こうとしたら、何故か呼び止められた。何かこの子、命令するのに慣れてる。どこかのいいところのお坊っちゃまだよね?
ここら辺、確かに裕福な層の家も多いし。



「暇だろ?ちょっと付き合え」

「え、暇ではないんですけど」

「いいから来い」


え! ちょっと。なんなの!?今の中学生は強引な子が多くない??私は男の子に腕を掴まれ、どこかに連れて行かれた。





「あの店に行きたいんだ」

「あそこ?」


彼が指差した先には、今流行っているカフェだった。少し混んでいたが、ちょっと待てば入れそうだ。いつももっと並んでいるのに…。
しかも、密かに私も雑誌でチェックしていたカフェでもある。



「あのカフェに行きたかったんですね」

「……ああ。行くぞ」


え?私も行くの?何で。それにさっき会ったばかりの初対面だよね?このカフェ、行くために連れて来られたの?私。



「何してんだ?早く来い」

「私もですか?」

「お前以外、誰がいんだよ…」


呆れた顔されたけど、私まで行く意味はないよね?



「おひとりで行ってみては…?」

「……」


睨まれた。カフェなら一人で入れるよね?だから、私じゃなくても。



「お付きの方とかはいないんですか?」

「いない。皆、帰したからな。5時までは迎えに来ない」


え。誰か一人くらいは残した方が良かったんじゃないの。なんで帰しちゃったの!



「ほら、並ぶぞ」

「え、あの、私まだ行くとは…」


私の言い分は無視され、強制的に列の最後尾まで連れて行かれた。
仕方ない。付き合おう。丁度、私も行きたかったカフェだし。

意外にも並んで5分くらいで、席に案内された。

雑誌に載っていたままの店内に私は、テンションが上がっていた。素敵過ぎる!案内された席は窓際のテーブル。二人席でもゆったりとしている。

店員さんにメニューを渡され、ページをめくる。沢山あるから、何にしようか迷っちゃうな。ふと目の前に座っている男の子を見ると、彼もメニューを見ながら、キラキラと目を輝かせていた。

やっぱり似てる。うちのお坊っちゃまと。



「ふふっ」

「な、なんだよ…」

「このカフェ、本当に来たかったんだなって思いまして。メニュー見てるだけで、嬉しそうでしたよ」

「…っ!勘違いするな。たまには庶民がするようなことをしたいと思っただけだ。それだけだからな!」

「はい。わかりました」


素直じゃない。でも、そう思うことにしてあげよう。再びメニューに目を向けた。

その後、注文をして、しばらく待っていたら、注文したものが目の前に置かれる。男の子はケーキセット、私は期間限定のティラミスパフェにした。



「おいしそう!」

「……」

「いただきまーす!」


パフェスプーンで一口掬って、口に入れる。
甘くておいしーい!雑誌でこれを見た時から、食べたかったのよね!幸せー!パクパクと食べていたら、目の前の男の子が私を見ていた。



「どうかしました?」

「……べ、別に」


そう言い、コーヒーを飲む男の子。しかし、砂糖もミルクもいれなかったのか、苦い顔をしていた。もしかして、この子、ブラックは飲めないんじゃ…。無理して飲んだ?



「……苦っ」

「いきなりブラックはきついと思いますよ。最初は砂糖とミルクをいれて、徐々に慣らしていった方がいいですよ?」

「……そうなのか?わかった」


男の子は言われた通りにカップに砂糖とミルクをいれて、かき混ぜてからコーヒーを飲む。



「飲める。さっきまですごく苦かったのに…」

「まだ中学生なんだから、ゆっくりでいいんですよ?いきなり背伸びすることはないんですから」

「……ああ」


男の子はチョコレートケーキを嬉しそうに食べていた。今回はパフェにしたけど、次に来る時はケーキセットもいいな。定番だけでも種類があるのに、期間限定のものまである。次来る時はベゴニア達を誘おう。

それから食べ終えてから、カフェを出た。
支払いは男の子の分も払おうとしたら、反対に男の子が私の分まで支払ってしまった。返そうとしたのが、受け取ってくれなかった。年上の私の立場がない!

って、そろそろ私は買い物に行かないと。



「ありがとうございました。それじゃあ、私はこの辺で」

「……ああ」


男の子と別れる。
買うもののリストはスマホにいれてあるから、確認しよう。歩きながら見てみる。えーっと。



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