Boy and Maid-Mini-(Epilogue)
数日後。
玄関ホールにいたら、お客様が来たらしい。たまたま近くにいた私がドアを開けると、そこにいたのは、可愛いらしい女の子。
……あれ?この子、確か、お坊っちゃまと一緒にいた女の子、だよね。
「こんにちは。はじめましてリコリスと申します」
「こんにちは。はじめましてアリスです」
はっ。つい挨拶されたから、挨拶を返してしまった。リコリス?タスク様の婚約者が確か、そんな名前だったような…。
「もしかして、タスク様の婚約者の…?」
「はい。あ!はあくんやタスクが話すアリスさんって、あなたのことだったんですね!すぐわかりましたわ。聞いた通りの方だったのですね」
はあくん?あ、お坊っちゃまのことか!ハルクだから、はあくん。変な感じ。
それにしても、聞いた通りの方??あの二人は、私のことを彼女になんて話しているのだろうか。
「こないだお坊っちゃまと水族館に行ったのって、リコリス様ですか?」
「そうです!アリスさんは、はあくんからプレゼントはもらいましたか!?」
お坊っちゃまのプレゼント?イルカのキーホルダーのことかな。
「はい。もらいました」
「はあくん、すっごく悩んでたんですよ!いつもは即決で決めるのに…。あなたが何を渡せば喜んでくれるのかって、ずっとおみやげコーナーをぐるぐる見てて。それで私がアドバイスしたんです」
「そうだったんですか…」
それでプレゼントを決めた時に私が二人の仲を誤解してしまったんだ。でも、二人、結構仲良く見えたけど、友達ってあんなに近い距離なの?私、男の子の友達っていないからわからないな。
「私とはあくんは、友達です。それ以上でも、それ以下でもありません」
「そうなんですか…」
ハッキリとそう話す彼女にただ頷くしかない。そこへ誰かがこちらにやって来る足音がした。
「リコリス!タスク兄が呼んで…と、アリス?何でリコリスと一緒にいんの?」
「はあくん。私、アリスさんとお話してたの!」
「どおりでなかなか来なかったのか。早くタスク兄とこに行けって。待ってるから」
「ねえ、はあくん、今度4人で一緒にお出かけしない!?」
「4人??」
リコリス様、意外に人の話を聞かない時もあるんだな。聞き上手な感じに見えるのに…。我が道を行くというか。
それにしても、4人で出かける?タスク様、リコリス様、お坊っちゃまはわかるとして、あと一人って誰?
「タスク兄に邪魔だって言われるからヤダ」
「そんなことないわ。私からもお願いするから!」
「二人でいいじゃん!オレ達は遠慮する!ほら、早くタスク兄が待ってっから」
「もうわかったわ。それじゃあ、アリスさん。また私とお話してくださいね。はあくん、またね!」
そう言い残して、リコリス様はタスク様の部屋に向かってしまった。その場に残されたのは、私とお坊っちゃま。
「リコリス、やっと行ったか…」
「お坊っちゃま。さっきリコリス様が言ってた4人って、タスク様、リコリス様、お坊っちゃまはわかるんですけど、あと一人って誰なんですか?」
「……………はあ?」
何言ってんだ?コイツって顔をするお坊っちゃま。私、変なこと聞いたかな?
「この場にいたお前以外、誰がいんだよ!」
「私ですか?いやいや、私はメイドですよ!お坊っちゃま達とは一緒に出かけることは出来ませんから」
「何でだよ!」
「身分が違いますからね。荷物持ちで連れてくならば、車はあった方がいいですよ?私、免許は持ってないですし」
「誰が荷物持ちでお前を連れてくんだよ!身分だって誰も気にしねェって。リコリスもオレもタスク兄もな」
いやいや、それ以外に私だけ年齢が少し上だし。一番近いタスク様とも三つ違うんだから。
「お前がいないとオレが一人になんだろ!」
「そこは同い年の女の子でも誘って、Wデートすればいいんですよ!私も昔、お坊っちゃまくらいの時にWデートしたことありました。まあ、私の場合はついでみたいなものでしたけど、結構楽しかったですよ!」
「………………は?誰と」
え、何で睨んでくるの!?私、変なこと言ってないのに…。
「誰って、同級生達と…」
「そいつとどこまでいったんだよ!?」
「どこまで?近くのショッピングモールですけど」
「場所じゃねェよ!」
「え。だって、今どこまでって聞いたじゃないですか?」
「Wデートした相手とだよ!」
その時、一緒に出かけて終わったけど。でも、二人きりになった時にやたら私のことを聞いてきたんだけど、結局あれは何を聞きたかったのだろう。
あと何でお坊っちゃまは、そんなに気になるのかしら?やっぱりWデートの参考にしたかったのかな?
「いずれお坊っちゃまにも婚約者とか出来るんですよね…」
「そうだけど。…気になんの?」
「それは気になりますよ!」
「え」
何だろう?ジーっと見て。
だって、気になるじゃない。お坊っちゃま、かなりの気分屋だから、やっぱりしっかりとお坊っちゃまのことを見てくれる子じゃないと!
「お坊っちゃま、その女の子には優しくしないとだめですからね!私に話すみたいにワガママ言ってばかりは嫌われますよ」
「……💢」
「って、あれ?何で怒って…」
「バカ!この鈍感女!!お前に期待したオレがバカだった!」
私に怒鳴ると、走って行ってしまった。
何で?お坊っちゃまのためを思って言ったのに…。
「ちょっと待ってくださいよ!お坊っちゃま!!」
私はお坊っちゃまのあとを追いかけた。
ふとお坊っちゃまが立ち止まる。よし、捕まえてやる!そう思って、捕まえに行くと、かわされてしまう。それを何度かされるとやっと気づくわけで…。私、完全に遊ばれてる!
「誰がアリスなんかに捕まるかよーだ!!」
「む、絶対に捕まえてあげますよ!」
「ドージ!マヌケ!ノロマ!」
「ムカつく!絶対に捕まえて、訂正させてやりますから」
「させてみろよ!バーカ!!」
「このっ、待ちなさい!」
追いかけっこは、その後、私用から帰って来た執事長に見つかったことで強制終了。二人揃って、執事長の説教を2時間受けたのである。
更に私はその説教だけでなく、沢山の仕事を命じられたのであった。…解せぬ!
その夜。
私は執事長からの仕事をかなりの時間をかけて、やっと終わらせ、部屋に戻ろうと廊下を走っていた。うわー。0時、とっくに過ぎて、もう1時近くじゃない!早くお風呂に入って寝ないと。
明日も…違う。もう今日だわ。あのワガママボーイの世話しなきゃいけないのに!お坊っちゃまめー、お菓子にワサビでも入れてやろうかしら。ふふふ。辛いと泣くお坊っちゃまの姿が見えるわ!(※深夜でアリスがおかしくなっております。ご了承ください)
「誰だ。そこにいるのは…」
後ろの方で男の人の声がした。今までに聞いたことのない声。
おそるおそる振り返ると───
そこにいたのは、リク様だった。
違う。リク様をもっと大人にしたような…?立っているだけなのに、色気があるのは何でだろう?カルロ様にも似てるような…。
「ラ、ピス…?」
「……え」
ラピス??
その人は私を見て、そう呟いた。何故か悲しそうな表情で。もしかして、私を誰かと間違えてる?
そう思っていたら、間違いに気づいたのか黙ってしまった。きっと別人と気がついたのだろう。
「……………メイドか。こんな時間に何をしている?」
「申し訳ありません。執事長に頼まれた仕事を片付けていたら、このような時間になりました」
悲しそうな表情から一転して、冷たい表情で私を見る。私、嫌われてる?今日初めて会ったばかりなのに…。何でだろう。
お坊っちゃまと問題起こしてばっかいるせいかな。ありえる!
「仕事ならば、仕方ない。もう行っていい」
「失礼しました!」
私は頭を下げてから、その場からすばやく離れる。
誰かわかった!あの人は、ここの当主のアメジスト・ドルチェだ。
40過ぎていると聞いていたけど、全然見えない。カルロ様の兄でも通じるくらいに若かった。執事長より若くない?あれ、執事長と同い年って、アガットさんから聞いたような…。
ということは、お父さんと同い年か。お父さんも若く見えるんだよねー。肌が少し黒いけど、異国の血を引いてるみたいで、“ミステリアスよねー”なんてよく近所のおばさん達に言われてたし。
……けど、私、ちっとも似てないな。誰に似たのかな?お母さんともあまり似てないし。拾われた子とか?そんなわけないかー!
“アリス。ごめんな?遠くにいても、おまえのことは想っているから…”
泣きながら、私に話しかけてくる誰かの声。
その声はお父さんでも、お母さんでもない。サフィさんやトパーズさんでもない。
じゃあ、この声は一体、誰?
“あなたは私の大事な、大事な娘よ。ずっと愛してるわ”
顔の見えない、知らない女の人が私のおでこにキスをする。誰?私はあなたの娘じゃない。
この記憶の二人は、今でもたまに私の夢に出てくることがあった。
二人共、顔はよく見えないが、髪色だけはわかる。男の人は短くて、赤色に近い茶髪、女の人は私と同じ金髪のロングだ。
このことをお父さんに話す度に、お父さんは悲しく微笑みながら私の頭を撫でるだけ。その度に私は不思議だった。
私の出生の秘密がこの後の運命によって、明かされることをこの時の私は知らなかった───。
【END】
玄関ホールにいたら、お客様が来たらしい。たまたま近くにいた私がドアを開けると、そこにいたのは、可愛いらしい女の子。
……あれ?この子、確か、お坊っちゃまと一緒にいた女の子、だよね。
「こんにちは。はじめましてリコリスと申します」
「こんにちは。はじめましてアリスです」
はっ。つい挨拶されたから、挨拶を返してしまった。リコリス?タスク様の婚約者が確か、そんな名前だったような…。
「もしかして、タスク様の婚約者の…?」
「はい。あ!はあくんやタスクが話すアリスさんって、あなたのことだったんですね!すぐわかりましたわ。聞いた通りの方だったのですね」
はあくん?あ、お坊っちゃまのことか!ハルクだから、はあくん。変な感じ。
それにしても、聞いた通りの方??あの二人は、私のことを彼女になんて話しているのだろうか。
「こないだお坊っちゃまと水族館に行ったのって、リコリス様ですか?」
「そうです!アリスさんは、はあくんからプレゼントはもらいましたか!?」
お坊っちゃまのプレゼント?イルカのキーホルダーのことかな。
「はい。もらいました」
「はあくん、すっごく悩んでたんですよ!いつもは即決で決めるのに…。あなたが何を渡せば喜んでくれるのかって、ずっとおみやげコーナーをぐるぐる見てて。それで私がアドバイスしたんです」
「そうだったんですか…」
それでプレゼントを決めた時に私が二人の仲を誤解してしまったんだ。でも、二人、結構仲良く見えたけど、友達ってあんなに近い距離なの?私、男の子の友達っていないからわからないな。
「私とはあくんは、友達です。それ以上でも、それ以下でもありません」
「そうなんですか…」
ハッキリとそう話す彼女にただ頷くしかない。そこへ誰かがこちらにやって来る足音がした。
「リコリス!タスク兄が呼んで…と、アリス?何でリコリスと一緒にいんの?」
「はあくん。私、アリスさんとお話してたの!」
「どおりでなかなか来なかったのか。早くタスク兄とこに行けって。待ってるから」
「ねえ、はあくん、今度4人で一緒にお出かけしない!?」
「4人??」
リコリス様、意外に人の話を聞かない時もあるんだな。聞き上手な感じに見えるのに…。我が道を行くというか。
それにしても、4人で出かける?タスク様、リコリス様、お坊っちゃまはわかるとして、あと一人って誰?
「タスク兄に邪魔だって言われるからヤダ」
「そんなことないわ。私からもお願いするから!」
「二人でいいじゃん!オレ達は遠慮する!ほら、早くタスク兄が待ってっから」
「もうわかったわ。それじゃあ、アリスさん。また私とお話してくださいね。はあくん、またね!」
そう言い残して、リコリス様はタスク様の部屋に向かってしまった。その場に残されたのは、私とお坊っちゃま。
「リコリス、やっと行ったか…」
「お坊っちゃま。さっきリコリス様が言ってた4人って、タスク様、リコリス様、お坊っちゃまはわかるんですけど、あと一人って誰なんですか?」
「……………はあ?」
何言ってんだ?コイツって顔をするお坊っちゃま。私、変なこと聞いたかな?
「この場にいたお前以外、誰がいんだよ!」
「私ですか?いやいや、私はメイドですよ!お坊っちゃま達とは一緒に出かけることは出来ませんから」
「何でだよ!」
「身分が違いますからね。荷物持ちで連れてくならば、車はあった方がいいですよ?私、免許は持ってないですし」
「誰が荷物持ちでお前を連れてくんだよ!身分だって誰も気にしねェって。リコリスもオレもタスク兄もな」
いやいや、それ以外に私だけ年齢が少し上だし。一番近いタスク様とも三つ違うんだから。
「お前がいないとオレが一人になんだろ!」
「そこは同い年の女の子でも誘って、Wデートすればいいんですよ!私も昔、お坊っちゃまくらいの時にWデートしたことありました。まあ、私の場合はついでみたいなものでしたけど、結構楽しかったですよ!」
「………………は?誰と」
え、何で睨んでくるの!?私、変なこと言ってないのに…。
「誰って、同級生達と…」
「そいつとどこまでいったんだよ!?」
「どこまで?近くのショッピングモールですけど」
「場所じゃねェよ!」
「え。だって、今どこまでって聞いたじゃないですか?」
「Wデートした相手とだよ!」
その時、一緒に出かけて終わったけど。でも、二人きりになった時にやたら私のことを聞いてきたんだけど、結局あれは何を聞きたかったのだろう。
あと何でお坊っちゃまは、そんなに気になるのかしら?やっぱりWデートの参考にしたかったのかな?
「いずれお坊っちゃまにも婚約者とか出来るんですよね…」
「そうだけど。…気になんの?」
「それは気になりますよ!」
「え」
何だろう?ジーっと見て。
だって、気になるじゃない。お坊っちゃま、かなりの気分屋だから、やっぱりしっかりとお坊っちゃまのことを見てくれる子じゃないと!
「お坊っちゃま、その女の子には優しくしないとだめですからね!私に話すみたいにワガママ言ってばかりは嫌われますよ」
「……💢」
「って、あれ?何で怒って…」
「バカ!この鈍感女!!お前に期待したオレがバカだった!」
私に怒鳴ると、走って行ってしまった。
何で?お坊っちゃまのためを思って言ったのに…。
「ちょっと待ってくださいよ!お坊っちゃま!!」
私はお坊っちゃまのあとを追いかけた。
ふとお坊っちゃまが立ち止まる。よし、捕まえてやる!そう思って、捕まえに行くと、かわされてしまう。それを何度かされるとやっと気づくわけで…。私、完全に遊ばれてる!
「誰がアリスなんかに捕まるかよーだ!!」
「む、絶対に捕まえてあげますよ!」
「ドージ!マヌケ!ノロマ!」
「ムカつく!絶対に捕まえて、訂正させてやりますから」
「させてみろよ!バーカ!!」
「このっ、待ちなさい!」
追いかけっこは、その後、私用から帰って来た執事長に見つかったことで強制終了。二人揃って、執事長の説教を2時間受けたのである。
更に私はその説教だけでなく、沢山の仕事を命じられたのであった。…解せぬ!
その夜。
私は執事長からの仕事をかなりの時間をかけて、やっと終わらせ、部屋に戻ろうと廊下を走っていた。うわー。0時、とっくに過ぎて、もう1時近くじゃない!早くお風呂に入って寝ないと。
明日も…違う。もう今日だわ。あのワガママボーイの世話しなきゃいけないのに!お坊っちゃまめー、お菓子にワサビでも入れてやろうかしら。ふふふ。辛いと泣くお坊っちゃまの姿が見えるわ!(※深夜でアリスがおかしくなっております。ご了承ください)
「誰だ。そこにいるのは…」
後ろの方で男の人の声がした。今までに聞いたことのない声。
おそるおそる振り返ると───
そこにいたのは、リク様だった。
違う。リク様をもっと大人にしたような…?立っているだけなのに、色気があるのは何でだろう?カルロ様にも似てるような…。
「ラ、ピス…?」
「……え」
ラピス??
その人は私を見て、そう呟いた。何故か悲しそうな表情で。もしかして、私を誰かと間違えてる?
そう思っていたら、間違いに気づいたのか黙ってしまった。きっと別人と気がついたのだろう。
「……………メイドか。こんな時間に何をしている?」
「申し訳ありません。執事長に頼まれた仕事を片付けていたら、このような時間になりました」
悲しそうな表情から一転して、冷たい表情で私を見る。私、嫌われてる?今日初めて会ったばかりなのに…。何でだろう。
お坊っちゃまと問題起こしてばっかいるせいかな。ありえる!
「仕事ならば、仕方ない。もう行っていい」
「失礼しました!」
私は頭を下げてから、その場からすばやく離れる。
誰かわかった!あの人は、ここの当主のアメジスト・ドルチェだ。
40過ぎていると聞いていたけど、全然見えない。カルロ様の兄でも通じるくらいに若かった。執事長より若くない?あれ、執事長と同い年って、アガットさんから聞いたような…。
ということは、お父さんと同い年か。お父さんも若く見えるんだよねー。肌が少し黒いけど、異国の血を引いてるみたいで、“ミステリアスよねー”なんてよく近所のおばさん達に言われてたし。
……けど、私、ちっとも似てないな。誰に似たのかな?お母さんともあまり似てないし。拾われた子とか?そんなわけないかー!
“アリス。ごめんな?遠くにいても、おまえのことは想っているから…”
泣きながら、私に話しかけてくる誰かの声。
その声はお父さんでも、お母さんでもない。サフィさんやトパーズさんでもない。
じゃあ、この声は一体、誰?
“あなたは私の大事な、大事な娘よ。ずっと愛してるわ”
顔の見えない、知らない女の人が私のおでこにキスをする。誰?私はあなたの娘じゃない。
この記憶の二人は、今でもたまに私の夢に出てくることがあった。
二人共、顔はよく見えないが、髪色だけはわかる。男の人は短くて、赤色に近い茶髪、女の人は私と同じ金髪のロングだ。
このことをお父さんに話す度に、お父さんは悲しく微笑みながら私の頭を撫でるだけ。その度に私は不思議だった。
私の出生の秘密がこの後の運命によって、明かされることをこの時の私は知らなかった───。
【END】
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