Boy and Maid-Mini-(ⅩⅡ)

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ダンスが終わった。終わったから、アリスのところに向かおうとした。すると、ターコイズに呼び止められた。



「ドルチェくん!」

「ターコイズ」

「ダンス、楽しかった。ありがとう!」

「ああ、こちらこそな」

「また中学で一緒になったら、よろしくね!」


そう言って、ターコイズと別れた。
アリスのところに向かうと、向こうもオレに気づいて、こちらに近寄ってきた。



「お坊っちゃま!素敵でしたよ!」

「ありがと。てか、いつまでカメラを回してんだよ!」

「撮影して来てくれと頼まれたので、お坊っちゃまの記録をちゃんと残しておかないといけませんからね!」

「誰に?」

「そりゃあ、アガットさんにですよ!」

「見せなくていい!」

「だめですよ!楽しみにしているんですから。本来は私じゃなくて、アガットさんが来るはずだったんですよ?」


それはそうなんだけど。
もしかして、アガット、わざとアリスをここに来させたんじゃねェよな?

……アガットに限って、それはないか。

ダンスも終わったから、卒業パーティーもあとわずかで終わる。この後は、学園長の話とかだけだから、もうサボっても構わないだろう。



「アリス、こっち来て」

「え、お坊っちゃま?」


アリスの腕を掴んで、人がいない練習室に連れてきた。今ならここには誰も来ねェはずだ。



「さっきのダンスホールよりは小さい感じですね。鏡もあるし。あ、ここは練習室なんだ!私立はやっぱり違いますね」

「あのさ、一緒にダンスを踊ってくんない?」

「え!?私、ダンスは習ってないから無理です!」

「オレが教えるって。ほら、手を貸して」

「私、今カメラも持ってますし」

「カメラは邪魔にならないとこに置けばいいだろ」


アリスの手からカメラを奪って、床に置く。そして、アリスの手を引いて、部屋の真ん中に連れてく。



「もっと寄って」

「こ、こうですか?」

「まだ遠いって。もっとこっち」


ダンスをする前から、躓いている。アリスがこちらに来ようとしないのが原因なんだけど。
このままアリスを待ってたら、終わっちまう。だから、無言でこちらに引き寄せた。



「思ったよりもくっつくんですね。恥ずかしい…」

「もっとこっち寄って来いって」

「え?まだくっつくんですか!?」


視線が合わない。少しは意識してくれてんのかな、なんて思ったけど、どうやら違うらしい。



「ちょっと近すぎません?」

「ダンスするんだから、これくらい普通だって」

「これが普通!?」


アリスは私が庶民だからなの?とか同じダンスでも全然違うとかぶつぶつ呟いてたけど。オレにはこれがダンスだからな…。形は何とかなった。次は動きに移ったが、ここでもアリスは───。



「下を向くなよ」

「だって、足を踏んじゃいそうで!」

「踏んでもいいから。顔を上げろよ」

「下を見ないでなんて動けません!」

「別に誰かに見せるわけでもないから失敗したっていいんだって。オレがリードするから、アリスはオレに任せればいいんだよ」

「……わかりました!」


すると、アリスはやっと目線を上げた。オレと目を合わせて返事した。それからさっきとは見違えるようにアリスは、下を見ないで動けるようになった。



「…やるじゃん」

「ちょっと楽しくなってきましたね!」

「…っ!」


近い距離で無防備に笑うなって。
ちょっとステップを間違えそうになったけど、何とかごまかした。

踊っていたら、少し余裕が出てきたから、話しかけてみた。



「アリス、身長何センチあんの?」

「160cmですよ」

「ふーん…」

「お坊っちゃまは?」

「……ノーコメント」


言えるかよ。オレ、まだ150cmもいってないし!6年男子の平均身長よりは超えてるけど。それでもまだアリスと10cm以上も差がある。



「そのうち私の身長を超えますよ?お坊っちゃまの成長期は、これからなんですから」

「当たり前だろ!すぐ抜かしてやるから」


まだオレの方が身長は低いけど、そのうち追い越してやるんだ。

オレが思ってた以上にずっと踊っていたらしく、疲れたアリスがその場に座り込んでしまった。着なれない服を着ているのもあったんだろうけど、履いていた靴までも脱いでいた。



「大丈夫か?」

「しばらく休めば、何とか歩けるようには…」

「どんだけ体力ないんだよ。本ばっか読んでないで運動しろよ」

「お坊っちゃまの体力がバカなだけですよ!」

「はあ!?」

「こうなったら、私が小学生の頃にやったダンスを教えましょう!」

「アリス、運動神経は良くなかったんだろ?出来んの?」

「運動神経は良くなくても、リズム感はちゃんとありましたよ!ダンスも普通に出来ましたし」

「どうだか…」

「信じてませんね!?じゃあ、見せてあげますよ!」

「はいはい…」

「本当に信じてない!こうなったら、こうしてやる…!」


立ち上がったアリスはオレの両手を掴むと、繋いだまま、その場をくるくると回り出す。これのどこがダンスなんだよ。全然ダンスじゃねェし。



「ははっ、これのどこがダンスだよ。手を繋いで回ってるだけじゃん!!」

「いいんですよ!たまにはこんな風に回ったって、楽しければいいんです!ふふっ」


オレ達は笑いながら回る。
きっと端から見たら、何やってるんだと思われてたに違いない。

でも、今は二人だけだったから、回りの目なんか気にしねェ。



「ははは!」

「ふふっ」


オレ達は目が回るまで、ずっと二人で回っていた。

だが、この床に置いたカメラが、まさかずっと録画されたままだとは思っておらず、充電がなくなるまで、オレ達の様子がバッチリと撮られていた。

その映像を見たヤツらにしばらくからかわれたのは、言うまでもない。







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