Boy and Maid-Mini-(ⅩⅡ)
「はあ、帰りてェ…」
何で卒業式の後に卒業パーティーなんてあるんだよ。しかも、その後はダンスしなきゃいけねェし。さっさと帰りてェよ。ほとんどのヤツがエスカレーター式で上がるんだからしなくてもよくね?中学から入ってくるヤツもいるだろうけど。
これからは保護者と一緒に食事することになっている。周りを見れば、隣に親が座っていたが、オレの隣は空席のまま。今日は親父は来ない。元から来たことねェけど。代わりにアガットが来てくれるはずなんだけど…。
てか、アガットが来ねェ。何してんだ?
その時、オレの隣の席に誰か座った。アガット、やっと来た。そう思って、顔を上げた。
が、そこにいたのは───
「お待たせしました」
「……………アリス?な、んで…」
一瞬、誰かわからなかった。
でも、声はアリスだったから、何とかわかった。黙っていたら、本当にわからなかった。
「アガットさんに頼まれまして、急遽来ることになりました。ちょっと支度がギリギリになってしまいまして…」
「そういえば、アガットは何で来ねェの?」
「アガットさん、お坊っちゃまの卒業式を見てから涙が止まらなくなってしまったらしくて…」
そう言われれば、すげー泣いてたな…。隣に座ってる人からも心配されるくらいに。卒業するオレじゃなくて、見てるだけのアガットが泣くとは…。そういえば、オレの入学式にも母さんと一緒に来てもらったからな。
「さっき、アガットさんと会ったんですけど、泣きすぎてかなり目が腫れちゃったみたいで、屋敷に強制送還されました…」
「マジ?」
アガット、泣き過ぎじゃねェ?
帰ったら、アガットのところに行ってみるか。ちょっと心配だし。
「今日は私が代わりとはいえ、保護者なので!ま、私もまだ未成年なんですけどね。一応、それを隠して、大人っぽさを意識しまして、ベゴニアやメイズ達にメイクや衣装をやってもらったんですけど……大丈夫ですかね?浮いてません??」
「……」
「お坊っちゃま?あの…」
つい見とれて、返事が出来なかった。
「……変じゃねェけど」
「良かったです!」
しかも、そんな風に笑わないで欲しい。……こんなのずりぃ。
でも、ドキドキする一方、焦ってるオレもいた。どんどん大人に近づくアリスに追いつけなくなる。これ以上、先に行かないで。
しかし、そう思っていたのは、その時だけ。
一緒に飯を食ってる間は、いつものアリスだった。いくら大人っぽい格好してても、出されたご飯を食べては「おいしい!お坊っちゃま、これおいしいですよ!」しか言わねェし。その姿を見てたら、もうおかしくて、オレよりも子供に見えた。
「もう何で笑うんですか!」
「だってさ、外見と中身が全然一致してねェんだもん!さっき大人っぽくって言ってたヤツが…。あはは!笑い、止まんねェ…」
「失礼な!おいしいものはおいしいんですから!」
飯食ったくらいで、おいしいって感激してるのアリスくらいだし。他の保護者だって、食べ慣れてるから、黙々と食ってるのに…。
「あ、お坊っちゃま。ほら、今度はデザートですよ!うわぁ、おいしそうです!」
「アリス、ガキみてェ…」
怒っていたくせに運ばれてきたデザートを見て、目をキラキラさせるアリス。くるくる変わる表情を見て、本当に目が離せなかった。さて、オレもデザート食べよう。
「お坊っちゃま」
「何?アリ……ん」
呼ばれた瞬間、口に何かを入れられた。
「ふふふ。どうですか?」
「今、オレの口に何入れた?」
「アイスです!」
そんな自信満々に言わなくても。オレにも同じもんがあんだし。てか、それ、今お前が使ったスプーンじゃねェの?意識したら、顔が熱い!
ちらりと横を見れば、アリスは気にせずにまたそのスプーンでデザートを食べてるし。
……わかってた。コイツはこういうヤツだよ…!
すると、オレの視線に気がついたアリスがこちらを見る。
「まだ食べたかったですか?」
「………いらねェよ、もう」
鈍感、過ぎる!何でこういう時は鈍いんだよ。
「ごちそうさまでした!おいしかったですね!」
「……はあ。面倒なのが来る」
食事が終わった後、30分は自由だが、その後はペアを組んで、踊ることになっていた。卒業式までに教師に伝えておけば、前もって約束していた相手や婚約者がいたりすれば、その相手と踊れる。
しかし、オレはアリスとのことで頭いっぱいだったから、それどころじゃなかった。だから、相手はまだ組んでいないヤツとランダムで組まされるのだ。アリスと踊りたかったが、ダンスは学生限定。よって、オレはアリスとは踊れないことは決定的。
「ダンスか。私は楽しそうでいいと思いますけど」
「どこがだよ…」
「こういうのも思い出じゃないですか!更に好きな人と踊れたら、いつか過去を振り返った時に“こういうこともあったなー”ってなりますよ。私が学生の時、こういうのはなかったので、少し羨ましいです」
思い出か。てか、好きなヤツと踊るなら、思い出だけで終わらせたくなんかねェけど。そんでいつかソイツとその話をしたい。あの時のことを思い出しながら二人で話したい。
それならやっぱりオレは、アリスと踊りたい。どこかでアリスと踊る時間を作るしかない!今のオレしか出来ない思い出をアリスと…。
「アリス」
「はい?どうしました」
「このダンスが終わったらさ、オレと…」
アリスを誘おうとした時、パートナーが決まっていない卒業生は集まるように教師から呼ばれた。あー、行かないとかよ。
「……行ってくる」
「行ってらっしゃい。お坊っちゃま」
ダンスがなければ、あのままアリスと一緒にいられたのに…。
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何で卒業式の後に卒業パーティーなんてあるんだよ。しかも、その後はダンスしなきゃいけねェし。さっさと帰りてェよ。ほとんどのヤツがエスカレーター式で上がるんだからしなくてもよくね?中学から入ってくるヤツもいるだろうけど。
これからは保護者と一緒に食事することになっている。周りを見れば、隣に親が座っていたが、オレの隣は空席のまま。今日は親父は来ない。元から来たことねェけど。代わりにアガットが来てくれるはずなんだけど…。
てか、アガットが来ねェ。何してんだ?
その時、オレの隣の席に誰か座った。アガット、やっと来た。そう思って、顔を上げた。
が、そこにいたのは───
「お待たせしました」
「……………アリス?な、んで…」
一瞬、誰かわからなかった。
でも、声はアリスだったから、何とかわかった。黙っていたら、本当にわからなかった。
「アガットさんに頼まれまして、急遽来ることになりました。ちょっと支度がギリギリになってしまいまして…」
「そういえば、アガットは何で来ねェの?」
「アガットさん、お坊っちゃまの卒業式を見てから涙が止まらなくなってしまったらしくて…」
そう言われれば、すげー泣いてたな…。隣に座ってる人からも心配されるくらいに。卒業するオレじゃなくて、見てるだけのアガットが泣くとは…。そういえば、オレの入学式にも母さんと一緒に来てもらったからな。
「さっき、アガットさんと会ったんですけど、泣きすぎてかなり目が腫れちゃったみたいで、屋敷に強制送還されました…」
「マジ?」
アガット、泣き過ぎじゃねェ?
帰ったら、アガットのところに行ってみるか。ちょっと心配だし。
「今日は私が代わりとはいえ、保護者なので!ま、私もまだ未成年なんですけどね。一応、それを隠して、大人っぽさを意識しまして、ベゴニアやメイズ達にメイクや衣装をやってもらったんですけど……大丈夫ですかね?浮いてません??」
「……」
「お坊っちゃま?あの…」
つい見とれて、返事が出来なかった。
「……変じゃねェけど」
「良かったです!」
しかも、そんな風に笑わないで欲しい。……こんなのずりぃ。
でも、ドキドキする一方、焦ってるオレもいた。どんどん大人に近づくアリスに追いつけなくなる。これ以上、先に行かないで。
しかし、そう思っていたのは、その時だけ。
一緒に飯を食ってる間は、いつものアリスだった。いくら大人っぽい格好してても、出されたご飯を食べては「おいしい!お坊っちゃま、これおいしいですよ!」しか言わねェし。その姿を見てたら、もうおかしくて、オレよりも子供に見えた。
「もう何で笑うんですか!」
「だってさ、外見と中身が全然一致してねェんだもん!さっき大人っぽくって言ってたヤツが…。あはは!笑い、止まんねェ…」
「失礼な!おいしいものはおいしいんですから!」
飯食ったくらいで、おいしいって感激してるのアリスくらいだし。他の保護者だって、食べ慣れてるから、黙々と食ってるのに…。
「あ、お坊っちゃま。ほら、今度はデザートですよ!うわぁ、おいしそうです!」
「アリス、ガキみてェ…」
怒っていたくせに運ばれてきたデザートを見て、目をキラキラさせるアリス。くるくる変わる表情を見て、本当に目が離せなかった。さて、オレもデザート食べよう。
「お坊っちゃま」
「何?アリ……ん」
呼ばれた瞬間、口に何かを入れられた。
「ふふふ。どうですか?」
「今、オレの口に何入れた?」
「アイスです!」
そんな自信満々に言わなくても。オレにも同じもんがあんだし。てか、それ、今お前が使ったスプーンじゃねェの?意識したら、顔が熱い!
ちらりと横を見れば、アリスは気にせずにまたそのスプーンでデザートを食べてるし。
……わかってた。コイツはこういうヤツだよ…!
すると、オレの視線に気がついたアリスがこちらを見る。
「まだ食べたかったですか?」
「………いらねェよ、もう」
鈍感、過ぎる!何でこういう時は鈍いんだよ。
「ごちそうさまでした!おいしかったですね!」
「……はあ。面倒なのが来る」
食事が終わった後、30分は自由だが、その後はペアを組んで、踊ることになっていた。卒業式までに教師に伝えておけば、前もって約束していた相手や婚約者がいたりすれば、その相手と踊れる。
しかし、オレはアリスとのことで頭いっぱいだったから、それどころじゃなかった。だから、相手はまだ組んでいないヤツとランダムで組まされるのだ。アリスと踊りたかったが、ダンスは学生限定。よって、オレはアリスとは踊れないことは決定的。
「ダンスか。私は楽しそうでいいと思いますけど」
「どこがだよ…」
「こういうのも思い出じゃないですか!更に好きな人と踊れたら、いつか過去を振り返った時に“こういうこともあったなー”ってなりますよ。私が学生の時、こういうのはなかったので、少し羨ましいです」
思い出か。てか、好きなヤツと踊るなら、思い出だけで終わらせたくなんかねェけど。そんでいつかソイツとその話をしたい。あの時のことを思い出しながら二人で話したい。
それならやっぱりオレは、アリスと踊りたい。どこかでアリスと踊る時間を作るしかない!今のオレしか出来ない思い出をアリスと…。
「アリス」
「はい?どうしました」
「このダンスが終わったらさ、オレと…」
アリスを誘おうとした時、パートナーが決まっていない卒業生は集まるように教師から呼ばれた。あー、行かないとかよ。
「……行ってくる」
「行ってらっしゃい。お坊っちゃま」
ダンスがなければ、あのままアリスと一緒にいられたのに…。
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