Boy and Maid-Mini-(Ⅹ)
数日後。
「オレ、ボルドーに頼む。アリスをオレの世話係に戻してって」
これ以外にアリスとの接点はない。
世話係になってもらえば、記憶だって戻るかもしれない。それなのに、反対された。
「ハルク、それは無理だよ」
「何で!?だって、もうメイドの仕事はしてるんだよね?」
「彼女は仕事をやり始めたばかりで、まだ慣れてはいないんだよ。世話係までやったら、今度は体を壊しちゃう。そうなったら、辞めないと行けなくなるかもしれないんだよ」
確かにアリスに辞められたら困る。でも、それしか方法がない。
そんな優しく注意するリク兄とは反対にカルロは、怒っていた。
「何言ってんだ。記憶がないアリスにお前の世話係なんて、無理に決まってるだろ?」
「戻してもらう!!」
「無理を言うな。それにお前はアリスには近づくんじゃない!」
「ヤダ!」
離れていたら、どんどん遠ざかってしまう。今だって、距離があるのに…。
これ以上、遠くなったら───
「お前のワガママにアリスはいつも振り回されてる。世話係もつけたと思ったらすぐに外すし。一体、これで何度目だ?」
「……」
何も言えなかった。カルロの言う通りだったから。過去にアリスとケンカしては、すぐに世話係をはずしていた。
「これもいい機会だ。アリス離れしろ。いいな?」
「絶対ヤダ!」
「ヤダじゃない」
何でカルロにそんなことを言われなくちゃいけねェんだよ!
「今のアリスは前と違って、お前のことを知らないも同然なんだ。やっと仕事を出来るようになったのに、世話なんか出来るわけない。世話係をつけたいなら、アリス以外にしろ」
「嫌だ…」
アリスじゃなきゃヤダ。アリスだから、傍にいたいのに、何で他のメイドを選ばないといけないんだよ。
「カルロ兄さんの言う通りだよ。それにアリスさんとケンカしていた時、彼女がハルクと何度も話をしようとしているのに、聞く耳を持たず、彼女を遠ざけていたのは誰?」
「……」
「今の彼女も頑張ってる。これ以上、彼女を困らせないで。ハルク」
オレは黙って、談話室を出るしかなかった。
「……どうすればいいんだよ」
世話係になってくれる以外、わかんねェよ。記憶だって、戻る気配がまったくない。焦らないでいられるかよ。
自分の部屋に戻れば、枕元にハリネズミのぬいぐるみが置いてあった。それを抱きしめて、ベッドに座る。
“お坊っちゃまにそっくりですね!”
「うっ……うっ……っ!」
ハリネズミにオレの涙が落ちる。これをくれたアリスはもう記憶の中だけ。
「アリス…」
ずっと泣いてばっかりだ。
最後に泣いたのは、母さんが亡くなった時。それからずっと何年も泣いていなかった。
なのに、アリスと出会ってから、その分を取り戻すような勢いで泣くことが増えた。
いつまでも泣いてばかりだから、いけねェの?
それからアリスは仕事を順調にこなしていた。相変わらず記憶は戻らねェ。
今も休憩中なのか、他のメイド達と楽しそうに話していた。遠くから眺めていたら、記憶なんて失ってないかのように。
でも、目が合っても、オレには会釈するだけ。笑ってくれなかった。記憶がなくても、他のヤツとは笑うんだ。オレと笑って欲しいのに…。
オレの後ろでは、タスク兄とドラが話していた。
「アリスの記憶、まだ戻らないの?」
「アリスが屋敷に戻って来てから、1ヶ月は経ったけど、記憶は戻ってないよな」
「てか、うちの屋敷、こんなに静かだった?」
「それ、オレも思ってた」
「こっちはこっちで暗いし」
「少し前までは怒ってて、今度は落ち込んでさ。本当に忙しいヤツだね。お前は」
.
「オレ、ボルドーに頼む。アリスをオレの世話係に戻してって」
これ以外にアリスとの接点はない。
世話係になってもらえば、記憶だって戻るかもしれない。それなのに、反対された。
「ハルク、それは無理だよ」
「何で!?だって、もうメイドの仕事はしてるんだよね?」
「彼女は仕事をやり始めたばかりで、まだ慣れてはいないんだよ。世話係までやったら、今度は体を壊しちゃう。そうなったら、辞めないと行けなくなるかもしれないんだよ」
確かにアリスに辞められたら困る。でも、それしか方法がない。
そんな優しく注意するリク兄とは反対にカルロは、怒っていた。
「何言ってんだ。記憶がないアリスにお前の世話係なんて、無理に決まってるだろ?」
「戻してもらう!!」
「無理を言うな。それにお前はアリスには近づくんじゃない!」
「ヤダ!」
離れていたら、どんどん遠ざかってしまう。今だって、距離があるのに…。
これ以上、遠くなったら───
「お前のワガママにアリスはいつも振り回されてる。世話係もつけたと思ったらすぐに外すし。一体、これで何度目だ?」
「……」
何も言えなかった。カルロの言う通りだったから。過去にアリスとケンカしては、すぐに世話係をはずしていた。
「これもいい機会だ。アリス離れしろ。いいな?」
「絶対ヤダ!」
「ヤダじゃない」
何でカルロにそんなことを言われなくちゃいけねェんだよ!
「今のアリスは前と違って、お前のことを知らないも同然なんだ。やっと仕事を出来るようになったのに、世話なんか出来るわけない。世話係をつけたいなら、アリス以外にしろ」
「嫌だ…」
アリスじゃなきゃヤダ。アリスだから、傍にいたいのに、何で他のメイドを選ばないといけないんだよ。
「カルロ兄さんの言う通りだよ。それにアリスさんとケンカしていた時、彼女がハルクと何度も話をしようとしているのに、聞く耳を持たず、彼女を遠ざけていたのは誰?」
「……」
「今の彼女も頑張ってる。これ以上、彼女を困らせないで。ハルク」
オレは黙って、談話室を出るしかなかった。
「……どうすればいいんだよ」
世話係になってくれる以外、わかんねェよ。記憶だって、戻る気配がまったくない。焦らないでいられるかよ。
自分の部屋に戻れば、枕元にハリネズミのぬいぐるみが置いてあった。それを抱きしめて、ベッドに座る。
“お坊っちゃまにそっくりですね!”
「うっ……うっ……っ!」
ハリネズミにオレの涙が落ちる。これをくれたアリスはもう記憶の中だけ。
「アリス…」
ずっと泣いてばっかりだ。
最後に泣いたのは、母さんが亡くなった時。それからずっと何年も泣いていなかった。
なのに、アリスと出会ってから、その分を取り戻すような勢いで泣くことが増えた。
いつまでも泣いてばかりだから、いけねェの?
それからアリスは仕事を順調にこなしていた。相変わらず記憶は戻らねェ。
今も休憩中なのか、他のメイド達と楽しそうに話していた。遠くから眺めていたら、記憶なんて失ってないかのように。
でも、目が合っても、オレには会釈するだけ。笑ってくれなかった。記憶がなくても、他のヤツとは笑うんだ。オレと笑って欲しいのに…。
オレの後ろでは、タスク兄とドラが話していた。
「アリスの記憶、まだ戻らないの?」
「アリスが屋敷に戻って来てから、1ヶ月は経ったけど、記憶は戻ってないよな」
「てか、うちの屋敷、こんなに静かだった?」
「それ、オレも思ってた」
「こっちはこっちで暗いし」
「少し前までは怒ってて、今度は落ち込んでさ。本当に忙しいヤツだね。お前は」
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