Boy and Maid-Mini-(Ⅷ)
「アリス!」
リクさんと歩いていたら、また誰かに名前を呼ばれた。振り返ると、さっきの子とはまた違う小学生くらいの男の子が駆け寄って来た。誰?私は首を傾げる。
「リクさん、この子もご兄弟ですか?」
「……………え?」
「はい。五男のハルクです」
「そうなんですか。元気そうな男の子ですね!」
ここの兄弟は皆、顔が整っている人達ばかりだな。お父さんやお母さんも整っているのかな。
なんて気楽に思っていたら、目の前にいた男の子の様子がおかしい。
「何言ってんの?」
「はい?」
「オレが話しかけるなって言ったから、そんな演技してるのかよ!?まだ怒ってんの!?」
何を怒っているんだろう?この子。
「リクさん、この子が何か怒ってますけど、私、何かしちゃったんですか!?」
「アリスさんのせいではないですよ。ちょっと誰かと間違えて」
「間違えてない!!」
男の子が大声で叫ぶ。しかも、私を見て、睨んでくる。
「アリス!オレだよ!」
「あの…っ…」
「何でわかんねェの!!」
「クロッカス」
「ハルク様、どうか落ち着いてください」
「ふざけんな!アリス!!」
男の子は暴れるも、クロッカスさんに押さえられて動けないようだ。
「アリスさん、行きましょう」
「はい…」
「離せよ!」
リクさんに促され、私は歩き出す。だが、後ろから男の子が私に向かって、叫んでくる。
「何で!何でオレを忘れるんだよ!!」
「ハルク様」
「ひどいこと言ったから?そうなの?ねぇ、アリス!!何とか言えよ!」
「……」
「アリス…!」
私の名前を呼んでいるはずなのに、私じゃない誰かの名前を呼んでいるようにも感じた。
しかし、今の私にはまったく心当たりはない。ないから、何も返事出来ない。
一度後ろを振り返ってみた。男の子を見ると泣きそうな顔で私を見つめていた。何だか見たことあるような気がした。だが、私はこの子とは初対面だ。
「行きましょう」
うしろ髪引かれる思いになりながらも、私はリクさんの後を追った。
「……」
「どうかしました?」
リクさんが私に尋ねてきたから、私は正直に話した。
「さっきの男の子のことが気になってしまって…」
「すみません。生意気な弟で」
「いえ、それはいいんです。生意気なのは妹で慣れてますから」
今頃泣いているんじゃないかな。結構、泣き虫だから。
ん、私、何でそう思ったんだろう?あの子とは初めて会ったのに…。
【続】
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