Boy and Maid-Mini-(Ⅶ)








一週間後。
アリスが帰って来る日。長かった。ずっと待ち遠しかった。本当は病院に行きたかったけど、カルロに言われているのか、アガットに頼んでも連れて行ってもらえなかった。退院する日だけは教えてもらったけど。

今日やっと会える。
アリスに謝らなきゃ。ごめんって。また世話係になって欲しいって言うんだ!


まだ帰って来ねェのかな。
待ちきれず、部屋を飛び出し、屋敷内を歩き回る。すると───。





……………いた!
リク兄達と一緒にいるアリスを見つけた。何だ。帰って来てるじゃん。オレはアリスのいる場所に駆け寄った。



「アリス!」


オレに呼ばれて、アイツが振り返った。だけど、オレを見ても、何故か首を傾げる。



「リクさん、この子もご兄弟ですか?」

「……………え?」


この子?
今、オレのことをそう言ったの?



「はい。五男のハルクです」

「そうなんですか。元気そうな男の子ですね!」


まるで初めて会ったような態度。コイツ、誰?アリスなのに、アリスじゃない。



「何言ってんの?」

「はい?」

「オレが話しかけるなって言ったから、そんな演技してるのかよ!?まだ怒ってんの!?」


悪い冗談はやめろよ。
でも、冗談の方がまだ良かった。だって───



「リクさん、この子が何か怒ってますけど、私、何かしちゃったんですか!?」

「アリスさんのせいではないですよ。ちょっと誰かと間違えて」

「間違えてない!!」


間違えるわけねェじゃん!オレがコイツを間違えるわけが…。アリスの服を掴みながら、叫ぶ。



「アリス!オレだよ!」

「あの…っ…」

「何でわかんねェの!!」


オレがどんなに叫んでも、アリスは困った顔を浮かべるだけ。いつものように“お坊っちゃま”って呼んでくれない。



「クロッカス」

「ハルク様、どうか落ち着いてください」

「ふざけんな!アリス!!」

「アリスさん、行きましょう」

「はい…」

「離せよ!」


クロッカスによって押さえられ、アリスに近づけない。このままじゃ行っちまう。まだ話は終わってねェのに!



「何で!何でオレを忘れるんだよ!!」

「ハルク様」

「ひどいこと言ったから?そうなの?ねぇ、アリス!!何とか言えよ!」

「……」

「アリス…!」


オレが何を言っても、アリスは困惑した顔をするだけで何も言ってくれない。

これは罰なんだ。
アリスを傷つけたオレへの。



“お坊っちゃま、泣かないでくださいよ”


そう言ってくれたアリスはいない。目の前にいるヤツはアリスの顔をした別人。

アイツはリク兄と行ってしまった。追いかける気力もない。オレが仲直りしたかったのはアイツじゃねェから。


戻ってきて欲しいと願ったのに、あんまりだ。オレが願っていたのは、あんなアリスじゃない。

我慢していた涙がこぼれ、それはしばらくおさまることがなかった…。





【続】
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