Boy and Maid-Mini-(Ⅶ)

談話室を出た後、オレはアガットからアリスが倒れていたという階段を教えてもらい、そこに来た。
アイツ、急いで駆け降りて、足を滑らせたのかな。たまに何もないところでも転けてたし。



「ん?」


階段の下に何か落ちていた。何だろう?拾い上げると、Hのイニシャルが入ったイルカのキーホルダーがついた鍵だった。



「これ…」


アリスのだろう。これは本邸の鍵でも、オレの部屋の鍵でもない。きっとアリスの部屋の鍵。

アリス、ちゃんとつけてくれたんだ。オレは引き出しにしまったままなのに…。



オレ、アリスに対して、ずっとひどいことしてたんだ。話をしようとずっと話しかけてくれてたのに。


……このままアリスがいなくなったら、どうしよう。

そんなこと全然考えてなかった。関わらなければいいと思っていただけで、本当にいなくなったらなんて考えてなかった。


あの笑顔が見れなくなったら───

お坊っちゃまって、呼んでくれなくなったら───

あの優しい手で触れなくなったら───



それにオレ、まだアリスに謝ってない。沢山傷つけたことを謝れないまま、いなくなってしまったら、どうする。

母さんみたいにアリスまでいなくなったら───



「……ヤダ」


また大事な人がいなくなる。もう失いたくない。あんな想いは二度とゴメンだ。オレは必死に手を合わせる。



「アリスを連れて行かないで!オレからアリスを奪わないで!!お願い!お願いだから…」


神様がいるなら、オレの願いを叶えて。

アリスがまたオレの前に戻ってきますように。

アガットがオレを探しに来るまで、そこでずっと手を合わせながら、ひたすら祈った。




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