Boy and Maid-Mini-(Ⅵ)

病院に付いて行ったリクから、やっと電話がかかってきた。アリスは頭以外、怪我はなかったそうだ。しかし、まだ意識は戻っていないらしく。だから、リクはアリスが目を覚ますまで、向こうにいると言ってきた。
また何かあったら連絡するとだけ言って、切れた。



「リク兄から何だって?」

「頭以外の怪我はないって。でも、まだ意識が戻らないから、今日は向こうに残るって」


倒れているアリスを間近で見ているから、リクとしてもショックだったろう。クロッカスもいるから、何かあれば手を貸すはずだ。



「アリス、大丈夫かな…」

「俺達は待っていることしか出来ないからな」


そこへ、談話室のドアが乱暴に開けられた。入ってきたのはハルクだった。



「ねぇ!アリス、どこの病院にいるの!?教えて!!」

「それを知って、どうするんだ?」


きっとアガットから聞いたんだろう。そうじゃなきゃ、ここまでこいつは来ない。



「行くに決まってんだろ!早く病院を教えて!」

「使用人だぞ?」

「え?」

「何を驚いてるんだよ。お前が言ったんだろ?“メイドがオレに話しかけるな”ってさ」

「それは…!」

「そう言ってたお前が何で一メイドのことが気になるの?彼女はもうお前の世話係でも何でもないんだから。さっさと部屋に戻れ」

「何でオレだけのけ者にすんだよ…!」


自分で言ったことを忘れてるのか。もう関わることもないから、アリスの話をするなと言ったのはお前だろ。



「お前は本当に学習しないよね。前もアリスを無視して、彼女が倒れてから慌て出してさ。今回は更にひどいよな。あれだけアリスがお前と話そうとしてるのに、お前は無視。挨拶すらも返さなかった。しまいには暴言を吐いて傷つけて…。そういうことしておいて、虫が良すぎるとは思わないのか?」

「……そ、れは」

「アリスの話を二度としないでと言ったのもお前だろ?」

「でも!」

「お前には絶対に言わない。関係ないんだから」

「……」

「ほら、子供は早く寝ろ」


そう言うと、黙ったまま、ハルクが談話室から出て行く。



「いいの?」

「あいつはアリスと関わらない方がいい。この際だから離す」

「でも、素直にアリスから離れると思う?」


簡単には離れないだろう。
あいつ、あまり人に対して執着してこなかったが、アリスに対してはすごい執着しているからな。



「そういえば、リコリスから聞いたんだけどさ、ハルク、アリスにおみやげを買ったらしいよ?」

「あー、タスクが無理矢理行かせた水族館?」

「そうそう!って無理矢理じゃねーよ。行けるならオレが行きたかった」

「はい。わかったから、話の続きは?」


このままだと話が脱線する。そう思ったから、先を促した。



「普段、おみやげコーナーなんて見向きもしなかったのに、やたら真剣に見てたらしくて、見かねたリコリスが声かけたんだって。そしたら、ハリネズミのぬいぐるみをもらったから、そのお礼を探してたんだって。何を買えばいいかわからなくなっていたから、一緒に見てあげたらしいよ」

「で、ハルクは何を買ったわけ?アイツ、そういうセンスなさそうだけど」

「そこはリコリスがいるから大丈夫!イルカのキーホルダーだって。確か、イニシャルが入ってたって言ってた」


あいつ、本当にイニシャル入ってるの好きだな。学園のイニシャルチャームも持ってるくせに。
すると、ドラが声を上げる。



「あー!アリス、それ持ってた。オレが声かける前にそれを手に持って見てた!」

「そうなのか?」

「うん。でも、イニシャルがAじゃなくて、Hだったんだよねー」

「ハルク、間違えたのか?」

「アイツならやりそう」

「または交換みたくしたのか。相手のイニシャルを持つことで意識してもらおうとしていたか」

「どうだろうね」


あいつが子供であるうちは、意識されることはないだろう。アリスの好みにあてはまらないし。
だけど、あいつ、何かをぶち壊しそうなものを持ってそうなんだよな。





【続】
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