Boy and Maid4
「カルロ。今、リクと話してるあの子は?」
「え、ああ。去年から入ったメイドですよ。名前はアリス。セレストさんが気にするなんて、珍しいですね」
「……ちょっと昔の知り合いに似ててな」
ふと隣を見れば、ムッとしたような顔でリク達を見るハルクがいた。
それにカルロが気づき、声をかける。
「こら、ハルク。お前はまたそんな顔して…」
「だって、オレにはあんな風に笑ってくれないから。リク兄にしか見せないし…」
「お前はもう少しアリス離れを覚えなさい。来年は中学生になるんだから」
二人の会話に首を傾げる。アリス離れ??
それにハルクが何でリクとメイドが一緒にいるの見て、怒っているんだ。
「ハルクはあのメイドの子と何かあるのか?」
「ああ、彼女はハルクの世話係なんですよ」
「世話係?アガットがいんのにか?」
「元からこいつに世話係をつける話は出ていたんですよ。アガットだけだと間に合わない時もあって、その間を埋めるために世話係をつけることになったんです。でも、こいつ、ボルドーが決めたメイドは全員気に入らなくて…」
「ボルドーが決めたヤツ、頭固てェんだもん」
「あいつ自体が頭固いからなー」
「あとカルロに近づきたいからって理由で世話係になりたがるヤツもいたし」
「メイドにも言い寄られてるのか、カルロ」
「違ェって。カルロはメイドに手出…っ!?」
「ちょっと黙ろうか?ハルク」
「んー!ん”ー!」
カルロがハルクの背後から手で口を塞ぐ。
これはまた随分と仲良くなったな。少し前までは一緒にいるところなんて見なかったのに。
「セレストだー!」
そこへライがやって来た。
やって来るや否や、ライは俺の腰に腕を回してきやがった。おい。俺は女じゃねえぞ。しかも、こいつは結構慣れてやがんな…。
三男のライ。
小さい頃は可愛いかったが、いつからかやばい方向に向かっていた。専属のマホガニーがいなくなってから辺りだな。男でも女でも見境なく抱くようになったと聞いた。この外見なら相手には困りはしないだろうが。
こいつ、冷めると容赦なく冷たくなるからな。やっぱアメジストの血だわ。うん。
「ライ。お前も体だけは大きくなったな」
「ならセレスト、俺の相手してくんね?」
「断る。俺には愛する妻がいるからな」
「妻がいても全然構わないし。火遊びでもいいぜー?」
「バカ言ってんじゃねー。悪いが、俺は妻以外は興味ないんだよ」
「えー。一人だとつまんなくね?」
俺は一人で充分だ。こいつのこういうところは、全然理解出来ねぇわ。
俺が誘いに乗らないからか、ライはすぐにどこかに行ってしまった。
「セレストさんって遊んでそうに見えますけど、ずっと奥さん一筋なんですよね?」
「遊んでそうって…。カルロ、ハッキリ言うな」
昔からよく言われた。
この外見から女達から遊んで欲しいと誘われたこともある。だが、誘いに一度も乗ったことはない。好きでもない女なんか抱けるか。
「そんなセレストさんをタスクは憧れてますよ」
「そういえば、タスクは婚約したって聞いたな。あいつは?」
「婚約者の彼女の家です。休みの日は大体、家に居ませんから」
「学校でも会ってるのにか?」
「その子とは学校が違うんですよ。だから、休日は会いに行ってるんです」
タスクも変わったな。
いい方に変わってるならいいが。
「セレスト。タスク兄はもう惚気がすげェんだよ。耳にタコが出来るくらいに…」
「あいつもセレストさんと同じ一途なんです」
「そうなのか?いいことじゃないか」
ハルクがウンザリしたような顔で答えるし、カルロも苦笑いだ。これは相当なんだな。
「で、ハルク。お前は好きな子でも出来たか?」
「……」
「ハルク?」
ハルクは答えない。
すると、代わりにカルロが答える。
「いますよ。こいつもその子といつもいたくて、傍を離れませんから」
「カルロ!」
「お前も恋するようになったか。んで、相手は?どっかのお嬢様か?」
ハルクが好きになるような女の子か。全然想像がつかん。やっぱり同じ学校の同級生とかか?
「……違う」
「こいつの相手、さっきリクと話してた子ですよ」
「カルロ!」
リクと話してた?ああ、さっきのメイドの子か。
“彼女”にそっくりなあの子。
「あの子はいくつだ?」
「ライと同じで、今年で17歳って言ってましたよ」
17歳ね。
ハルクが12歳だから、5歳も上か。
「お前、年上がタイプなのか…」
「違っ…」
「セレストさん、違いますよ。こいつの場合は胃を掴まれちゃってるんです。彼女が作る手作りのお菓子が大好きで…」
「お前だって、食いに来るじゃん!」
ハルクがカルロをバシバシと叩く。本当に仲良しだな、お前らは。しっかし、プロの料理人の料理を毎日食べてるのに。やっぱり女の子が作るから好きなわけか。しかし、カルロまで食べる、とはな…。
あいつのああいうところまで、しっかり息子達にまで受け継がれてるわけか。なるほど。
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