Boy and Maid4
「……ここに来たのも久し振りだな」
相変わらずでけー屋敷だ。
最後に来たのは、どれくらいだ?3~4年ぶりか。
館内に入り、最初に向かうところは決まっていた。執事長であるあいつのいる部屋。どうせまた難しい顔しながら、仕事してんだろうな。学生時代からそうだったしな。
「よ、ボルドー!」
「……は?セレスト。何でここに…!?」
ノックもせず、ドアを開けるとボルドーは驚いた顔をしていた。俺はその顔を見たかったんだ。
「あいつから有給休暇もらったんだよ。ほら、ここにサインがあるだろ?」
「どれ…」
アメジストのサインが入った紙をボルドーに渡す。それを見て、「今回は本物か…」とボルドーがぼそっと呟く。俺が偽物の紙を出すわけないだろ。
あ。前に一回やったことあるんだった。すっかり忘れてた。
「で、何しに来たんだ?」
「つい暇だったからさ。あ、そういえば、屋敷に随分と行ってなかったから、そうだ。屋敷に行こう。ついでにボルドーをかまってやろうと思い立って、来たわけだよ」
「ついでにのところだけは余計だ。来る前に連絡くらいは寄越せただろ!」
「連絡?ああ!あのホラーみたいに徐々に近づいてって、最後に今、お前の後ろにいるの…ってやった方が良かったか?よし。次からは…」
「そんなの求めてない!普通に連絡を寄越せと言ってるんだ!!」
「ノリが悪いなー。ボルドーは。そんな怒ってばっかいると、血圧上がるぞ?」
「誰のせいだ!!誰の!」
突然、連絡もせずに来訪をしたせいか、ボルドーに沢山小言を言われた。あいつ、歳取っても全然変わんないな。相変わらずだけど、つい笑っちまった。
それからボルドーの許可を取り、屋敷内を歩くことにした。
前に比べると、雰囲気が明るくなったな。花とかも沢山植えてあって、ちゃんと手入れされてるし。いい庭師でも雇ったか?
上を見上げると、東側のテラスの方に誰かいた。あれは…。
早速、俺はテラスの方に向かった。
テラスで本を読んでいたのは、アメジストの長男のカルロ。俺に気づいて、本から顔を上げた。
「よ、カルロ。随分、色男になったな」
「こんにちは、セレストさん。ははっ、そんなことないですよ」
カルロが本を閉じ、それをテーブルの上に置き、イスから立ち上がる。
「謙遜すんなって。よくグレーが言ってたぞ。お前の周りに女の子が沢山いるってな」
「グレー、そんなこと言ってるんですか?」
「あいつも俺に似てモテるはずなんだが、ちっとも彼女を作らないんだよなー」
「あいつは、今女の子よりも夢中なことありますからね」
うちの息子と同い年で、学科は違うが大学は一緒だ。中身はアメジストとまったく似てない。カルロは社交的だが、あいつは違った。人見知りってわけでもなかったが、愛想笑いも出来ない男だ。
顔がいいのと女に困らないとこは似てるけどな。
「あー!セレストだ!!」
振り向くと、廊下の向こうからハルクが手を振っていたから、振り返してやる。すると、ハルクがこちらに駆け寄ってきた。思わずハルクの頭を乱暴に撫でる。
「お前もしばらく見ない間に大きくなったな、ハルク」
「当たり前じゃん!オレ、今12歳だぜ!」
「もうそんなになったのか。早いなー。俺も歳を取るわけだ」
五男のハルク。
こいつもあいつにまったく似ず、わんぱく小僧。昔からチョロチョロしてたな。体を動かす方が好きなヤツだから、よく一緒に遊んでやった。ぶっちゃけると、うちの息子よりは才能あるから、つい色々な技を教えてやった。グレーは運動が苦手だからな。たまに参加するタスクと二人で技の掛け合いしてたが、毎回ハルクが負けてたな。体格さもあったから、仕方ないんだが。
「セレスト、遊んで!」
「悪いな。今日はそんなに時間が取れないんだ。また今度な」
「ちぇー…」
ガッカリするハルクの頭を撫でた。
「また近いうちに来るから。その時、沢山相手してやる」
「絶対だからな!」
「ああ」
眩しい笑顔。本当にアメジストの息子かと思ってすまう。きっとモモに似たんだろう。あの子は優しい笑顔をする子だったから。
ふと中庭の方を見ると、そこに次男のリクがいた。
外見は息子達の中で一番アメジストにそっくりだ。久し振りに見たが、更に似てきたな。中身は大分違うが。
リクは花を見ていた。座り込んで、土を触ったりした後に水を上げていた。
あれは庭師じゃなくて、リクがやっていたのか。すると、リクの元に誰かがやって来た。服装からしてメイド。相手の顔は見えないが、リクの表情は優しかった。あいつ、あんな顔するんだな。しかし、リクがあそこまでに親しく話すと女がいたとは。女には最低限しか近づかないと聞いていたんだよな。メイドでも同じなはず。
その時、メイドの顔を見て、俺は驚いた。
見覚えのある顔だったから。“ラピス”と同じ顔で髪色までも同じ。生き写しかと思った。
昔と同じような光景を思い出す。まだアメジストが本格的におかしくなる前の。あいつも彼女とあんな風に笑っていた。
まさか、息子まで同じことになるとは…。
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相変わらずでけー屋敷だ。
最後に来たのは、どれくらいだ?3~4年ぶりか。
館内に入り、最初に向かうところは決まっていた。執事長であるあいつのいる部屋。どうせまた難しい顔しながら、仕事してんだろうな。学生時代からそうだったしな。
「よ、ボルドー!」
「……は?セレスト。何でここに…!?」
ノックもせず、ドアを開けるとボルドーは驚いた顔をしていた。俺はその顔を見たかったんだ。
「あいつから有給休暇もらったんだよ。ほら、ここにサインがあるだろ?」
「どれ…」
アメジストのサインが入った紙をボルドーに渡す。それを見て、「今回は本物か…」とボルドーがぼそっと呟く。俺が偽物の紙を出すわけないだろ。
あ。前に一回やったことあるんだった。すっかり忘れてた。
「で、何しに来たんだ?」
「つい暇だったからさ。あ、そういえば、屋敷に随分と行ってなかったから、そうだ。屋敷に行こう。ついでにボルドーをかまってやろうと思い立って、来たわけだよ」
「ついでにのところだけは余計だ。来る前に連絡くらいは寄越せただろ!」
「連絡?ああ!あのホラーみたいに徐々に近づいてって、最後に今、お前の後ろにいるの…ってやった方が良かったか?よし。次からは…」
「そんなの求めてない!普通に連絡を寄越せと言ってるんだ!!」
「ノリが悪いなー。ボルドーは。そんな怒ってばっかいると、血圧上がるぞ?」
「誰のせいだ!!誰の!」
突然、連絡もせずに来訪をしたせいか、ボルドーに沢山小言を言われた。あいつ、歳取っても全然変わんないな。相変わらずだけど、つい笑っちまった。
それからボルドーの許可を取り、屋敷内を歩くことにした。
前に比べると、雰囲気が明るくなったな。花とかも沢山植えてあって、ちゃんと手入れされてるし。いい庭師でも雇ったか?
上を見上げると、東側のテラスの方に誰かいた。あれは…。
早速、俺はテラスの方に向かった。
テラスで本を読んでいたのは、アメジストの長男のカルロ。俺に気づいて、本から顔を上げた。
「よ、カルロ。随分、色男になったな」
「こんにちは、セレストさん。ははっ、そんなことないですよ」
カルロが本を閉じ、それをテーブルの上に置き、イスから立ち上がる。
「謙遜すんなって。よくグレーが言ってたぞ。お前の周りに女の子が沢山いるってな」
「グレー、そんなこと言ってるんですか?」
「あいつも俺に似てモテるはずなんだが、ちっとも彼女を作らないんだよなー」
「あいつは、今女の子よりも夢中なことありますからね」
うちの息子と同い年で、学科は違うが大学は一緒だ。中身はアメジストとまったく似てない。カルロは社交的だが、あいつは違った。人見知りってわけでもなかったが、愛想笑いも出来ない男だ。
顔がいいのと女に困らないとこは似てるけどな。
「あー!セレストだ!!」
振り向くと、廊下の向こうからハルクが手を振っていたから、振り返してやる。すると、ハルクがこちらに駆け寄ってきた。思わずハルクの頭を乱暴に撫でる。
「お前もしばらく見ない間に大きくなったな、ハルク」
「当たり前じゃん!オレ、今12歳だぜ!」
「もうそんなになったのか。早いなー。俺も歳を取るわけだ」
五男のハルク。
こいつもあいつにまったく似ず、わんぱく小僧。昔からチョロチョロしてたな。体を動かす方が好きなヤツだから、よく一緒に遊んでやった。ぶっちゃけると、うちの息子よりは才能あるから、つい色々な技を教えてやった。グレーは運動が苦手だからな。たまに参加するタスクと二人で技の掛け合いしてたが、毎回ハルクが負けてたな。体格さもあったから、仕方ないんだが。
「セレスト、遊んで!」
「悪いな。今日はそんなに時間が取れないんだ。また今度な」
「ちぇー…」
ガッカリするハルクの頭を撫でた。
「また近いうちに来るから。その時、沢山相手してやる」
「絶対だからな!」
「ああ」
眩しい笑顔。本当にアメジストの息子かと思ってすまう。きっとモモに似たんだろう。あの子は優しい笑顔をする子だったから。
ふと中庭の方を見ると、そこに次男のリクがいた。
外見は息子達の中で一番アメジストにそっくりだ。久し振りに見たが、更に似てきたな。中身は大分違うが。
リクは花を見ていた。座り込んで、土を触ったりした後に水を上げていた。
あれは庭師じゃなくて、リクがやっていたのか。すると、リクの元に誰かがやって来た。服装からしてメイド。相手の顔は見えないが、リクの表情は優しかった。あいつ、あんな顔するんだな。しかし、リクがあそこまでに親しく話すと女がいたとは。女には最低限しか近づかないと聞いていたんだよな。メイドでも同じなはず。
その時、メイドの顔を見て、俺は驚いた。
見覚えのある顔だったから。“ラピス”と同じ顔で髪色までも同じ。生き写しかと思った。
昔と同じような光景を思い出す。まだアメジストが本格的におかしくなる前の。あいつも彼女とあんな風に笑っていた。
まさか、息子まで同じことになるとは…。
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