Boy and Maid 3




べ「で、アリスは何かないの?ハルク様関連の話で面白いことは」

ア「面白いかはわからないけれど、最近、お菓子以外も作れって言ってくるのよね…」

べ「お菓子以外?珍しい…」

ア「休みの日にお弁当作れって、ピクニックしたいとか言ってたな…。シェフに頼めば?って言えば、私の作ったお弁当がいいって。仕方ないから、次の試験で一つでも満点が取れて、全教科80点以上取れたら、お弁当と好きなお菓子も作って、ピクニックに連れてってあげますよ…って言ったけど」

べ「あんた、容赦しないわね。ハルク様が勉強が得意じゃないの知ってて、そんな条件出したわけ?」

ス「だから、さっきリク様と一緒にいたんだ…」

ア「え?」

ス「さっき、仕事上がる前に本館に用事があって、談話室の前を通ったら、リク様がハルク様に勉強を教えていたのを見たから。邪魔しちゃ悪いから声はかけなかったけど」

ア「お坊っちゃまが勉強してる!?しかも、リク様に頼んでるって、本気で満点を狙ってるの…」

べ「ここの兄弟で誰かに勉強を教えられてるのは、リク様しかいないでしょ?」

ス「確かに。他は何で理解出来ないの?…みたいな顔をしそうだし。教える気もなさそう」

べ「誰かさんの作ったお弁当を食べたいから、得意じゃない勉強を必死にやってるのね。ハルク様は健気よね。もしかして、アリスが初恋なんじゃないの?」

ア「何言ってるのよ。そんなわけないでしょう!それにあの子はまだ11歳。私は16歳。年齢も身分も違うのよ?あの子にもいずれ好きな子くらい現れるわ」

べ「今までなかったのよ?ハルク様が女に興味を持ったことなんて。どうする?そのうちに好きって言われたら…」

ア「絶対ないから!あとお坊っちゃまは私ではなく、お菓子を求めているのよ」

べ「お菓子だけじゃないわよ。お世話係の話だって、アリス以外は嫌だって言ってたらしいし」

ア「その話はやめて。次、次!」

べ「もっと聞きたかったなー。アリス、さっきのことは後日聞かせてね!」

ア「わかったわよ。多分、作らないと思うけど…」

べ「クリアするって!」

ス「私もクリアすると思う。本人も絶対にクリアして、アリスに作って連れてってもらうって、リク様に話していたから」

ア「……リク様はなんて?」

べ「リク様かい!」

ス「リク様は「それは頑張らないとだね」って微笑んでいたわよ…」

ア「……」

べ「さ、次行こう!」

ス「そういえば、カルロ様の話なんだけど、あの方、ここを継ぐつもりはないみたいね」

べ「そうなの?」

ス「成人になっているのに、婚約者も未だにいないし。あの方はリクが継げばいい。自分はそれを支える方がいいって言ってるみたいよ」

べ「カルロ様って、女には困ってなさそうよね。メイドに手を出してそうなイメージだけど、そういう話は一切聞かないし」

ス「手を出しても、「二人だけの秘密だよ」とか言って口止めしそうなタイプでしょ」

べ「ありそう!あの方にされたら、私だけ!?ってなりそうよね。でも、メイドの中にカルロ様親衛隊がいるから、隠していたら即バレるわよ。あの子、カルロ様にゾッコンなんだから」

ス「それって、テラコッタ達のこと?いやー、あそこは親衛隊というよりは過激派だよ」

ア「あの人、私がお坊っちゃまと一緒にいると、来るのよね…」

べ ス「「え?」」

ア「いつだったか、テラスで作ったお菓子を二人で食べていたのよ。すると、楽しそうだね…ってやって来たことがあって。「お菓子、一緒に食べていい?」…って聞いてきたけど、お坊っちゃまが「オレのだもん!」って隠すから、結局は食べなかったけど。部屋にも来てたことあったし」

ス「ハルク様、相当アリスのお菓子にハマってるんだね…」

ア「一度、用意したタルトを全部食べちゃって、夕飯食べれなくなって、私まで怒られたわよ。解せぬ…」

べ「てか、来るの!?カルロ様がハルク様の部屋に…」

ア「私もお坊っちゃまに聞いたら、今まで来たことないって」

べ「それはつまり…」

ス「狙いはアリスか」

ア「私、興味ないわよ!」

べ「おバカ。興味持たれないから、気になってあんたに興味を持ったのよ!」

ア「私以外にも興味持たない人もいるわよ」

ス「興味なくても、カルロ様って無駄に色気あるからね。大抵の子は赤くなるんじゃない?私はそういうの今のところはないから、いまいちわからないけど」

ア「見つめられる?そういえば、前にジッと見られたことあったわ。何か用でもありますかって聞いたら、キョトンとした顔してたわね…」

べ「鈍感」

ス「完全にスルーされて、カルロ様も驚いたでしょうね」

べ「リク様に見つめられたら、一発で真っ赤になるくせに…」

ア「当たり前でしょ!?憧れの人に見られたら…!」

べ「カルロ様に見つめられたら、皆そうなんのよ!」

ア「カルロ様はないかな…」

べ「だから、それが興味持たれてんの!」

ア「えー。じゃあ、恥ずかしがればいいの?ハズカシイ…」

べ「……だめだ、この子は。リク様以外はまったく興味持たないわ。ポンコツ過ぎて…」

ス「アリスの病気は今始まったことじゃない。さ、次は…。タスク様も比較的使用人には普通よね」

べ「あの方はリコリス様と、リコリス様以外としか捉えてない感じだから。リコリス様の名前を出したら、最後延々と語られるわよ…」

ス「ベゴニア、それをやられたの?」

ベ「私じゃないわよ。コルクが先日、ついリコリス様の話をタスク様にしたら、大変だったって泣きつかれたのよ…」

ス「私も気をつけよう」

ア「タスク様か。たまにだけど、驚かせてくるのよね…」

べ「驚かす?」

ア「うん。本館の廊下を歩いてると、曲がり角からいきなり現れて驚かすし。外を歩けば、おもちゃの虫とかを上から降らせてきたり、プレゼント渡されて開けたら、ビックリ箱だったり…」

べ「それ、隣にハルク様いた?」

ア「うん。一緒にいた」

べ「タスク様、ハルク様を気に入ってるからね。あれは愛情表現だよ。他の兄弟にはしてないし」

ア「最近はお坊っちゃまがいなくても、私にも仕掛けてくるんだけど…」

べ「……。それは気に入られたわね。おもちゃとして」

ア「いらない、いらない!代わって!」

べ「お断り。けど、タスク様に気に入られるって、なかなかないのよ?リコリス様以外だとあんたが初めてじゃないかな…」

ア「嫌だよ!私はリク様に気に入られたいんだから。タスク様は遠慮したい!」

ス「アリス。それ、外で言わない方がいいよ?メイド達の中には兄弟それぞれの過激派が意外に沢山いるから」

ア「カルロ様だけじゃなくて?」

べ「確かに言ってなくても、この子は〇〇様が好きだなって子はいるわよ」

ス「アリスはただでさえ、兄弟達に気に入られてるから気をつけなよ?」

ア「わかったわ…」

べ「ライ様は見た目だけならおとなしそうだけど、中身が色々残念なのよね。しかも、好みなら男女関係なく、誰でも手を出すの!以前にライ様に気に入られてる子…男の子だったけど、トラウマになっちゃったみたいでさ。襲われてからもしばらくは働いてたけど、ライ様を見る度にその時のことを思い出すんでしょうね。見かねたメイド長が旦那様に伝えて、今は別の場所で元気に働いてるらしいわよ」

ス「私がここに入った時、ライ様に気に入られてたメイドいたわよね。その子は?」

べ「あの子は手を出されて、メロメロになって大変だったわよ。もう仕事そっちのけでライ様のところに行っちゃって…。反対にライ様が飽きちゃって、別のメイドに手を出し始めて。しかも、メロメロになっちゃった子と仲が良かった子で。修羅場だった。あんなに仲が良かったのに、男絡んだだけで簡単に壊れるんだって思ったわ…」

ア「結局、その二人は辞めさせられたんじゃなかった?」

べ「慰謝料代わりに多額のお金を渡したらしいわよ。この家ならはした金でしょうね。一人はお金もらえば満足して、さっさと辞めて行ったわ。問題は先に手を出された方よ。お金はいらない!ライ様と一緒になりたいって、暴れて。かなりの騒動だったわよ」

ス「私もそこに遭遇した。ライ様に「俺、お前と結婚なんかしない」って、言われた途端に「殺してやるー!」って襲いかかりそうになったやつ。結局、あの子は警察に突き出されたのよね」

ア「それがいつだったかの騒動だったんだ。その時、お坊っちゃまのところにいたら、「またライに狂わされた犠牲者…」って呟いてたよ」

ス「またってことは前にもあったってことよね。ライ様って、あのおとなしそうな顔で、相当遊んでるのね…。ここの兄弟は顔はいいからな。タスク様、ハルク様、ドラ様も今は幼いけど、成長したら女が寄ってくるわね、きっと」

べ「寄っては来るけど、相手にしないわよ。タスク様はリコリス様一筋だから靡かないし。ドラ様も人嫌いであまり寄せ付けないし。ハルク様はアリス(のお菓子に)夢中だから…」

ア「何、その理由!」

ス「的確ね」

べ「でしょ?おとなしそうだと遊んでるイメージないよね。しかも、ライ様って、結構上手く相手に近づくから、二人も気をつけなよ」

ス「……。ベゴニア、ライ様に襲われそうになったことあるでしょ?」

べ「な、何言っ…!」

ス「図星でしょ?」

べ「…うん。一度誘われそうになったことあるわ。普段なら絶対に行かないわよ!ただその時、付き合っていた人にフラれちゃって…」

ス「そこを狙われたんだ」

べ「たまたま通りかかったカルロ様に助けられて、何事もなかったんだけど」

ア「それでカルロ様に憧れた…っと」

べ「アリス!」

ア「だって、ベゴニアもカルロ様のことが好きでしょ?親衛隊ほどじゃないにしたって、カルロ様の話を結構言ってるし」

ス「言ってたわね。遊ばれたいってのも、そこか…」

べ「スマルトはどうなのよ?」

ス「私?私はもう少し大人がいいのよね。そう。執事長みたいな…」

ア べ「執事長…」

ス「渋くて素敵でしょ?ああいう男性に惹かれるの。だから、兄弟にはちっとも興味はないわね」

ア「意外だね…」

べ「どおりで話に乗って来ないとは思っていたのよ!スマルトといい、アリスといい…」

ス「好みが合わないから仲良く出来てるのかもしれないわよ」

ア「合っていたら、修羅場ってたかもね?」

べ「そうね。……さて残るは、ドラ様か。一番気難しいのは、あの方よね?さっきまでは笑ってたのに、いきなり怒ったりするから、慎重に話さないといけないのよ。兄弟で唯一のアルビノで、あの外見でかなり苦労したみたい。心ない人に拾われた子じゃないかと言われたりして」

ス「そんな人間に容赦なく攻撃していたみたいよ。気持ちはわかるわよね。バカは言ってもわからないんだから。体に教え込むしかない」

べ「スマルト。あんた、さっきから印象がどんどん塗り替えられていくんだけど…」

ス「そう?」

べ「そうよ。ドラ様の話に戻るけど、そのせいで気に入った人にしか、話しかけないわよ。こちらから用があって話しかけても、気分次第では返事もしないんだから」

ア「ドラ様って、あの髪が真っ白の方よね?あの方、そんなに気難しいの?」

べ ス「「え?」」

ア「普通に挨拶してたら、手を振ってくれたわよ」

べ ス「「は?」」

ア「いつだったか、すれ違う時にはお菓子くれたり。今日あったこととか楽しそうに話してくれたり、いつもニコニコした印象しかないけど」

べ「あんた、何でそんなにここの兄弟に好かれてるわけ?」

ス「同じ血が流れてるからでしょ…」

ア「好かれてる自覚はないけど、私は好かれるなら、リク様だけでいい!」

べ「相変わらずリク様しか見えない。ここまで行くと清々しいわね…」

ス「アリスはそのままでいてよ」

ア「?」


こうして、夜は明けていった…。





【END】
(2022.02.19)
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