Beetle which was hatched from a chrysalis






「おはよう」
「はよ」


校門の前でクラリスと挨拶を交わす。


「あれ?アリス……何か雰囲気変わった?」
「気付いてくれたか! コレが俺の本来の──」
「友達だからハッキリ言うけど、似合わないよ。むしろ……何か気持ち悪いというか……」
「へ?」


彼女は本気で言ってるっぽい。
顔が思いきり引きずってやがる……


「それ、エクステだよね?」
「あ、あぁ……」


地毛を切りましたなんて、とてもじゃないけど言える雰囲気じゃねぇ。


「良かった。それなら明日からはまた、いつものアリスだよね」


マジかよ……
俺、そんなに男として失格なわけ?


「おっはよー」
「スージィ、おはよう」
「あれ?アリス……」


スージィまでもかよ。
お前もそんなに男前な俺が──


「イメチェン? スゴく似合ってるよ」
「本当か!?」


嬉しさのあまり、思わず彼の腕を握る。


「いつもより積極的だし、僕好み──」
「ギャオす!」


思いきり手を振り解く。


「な、何すんだよ!」
「悪りぃ、手にゴミが付いて」


因みにお前の手、だからな。


「アリス。おはよう」
「おう、はよ」
「あれ……どうしたの?」


と、挨拶する人達全て不評……
ヒソヒソ話までしてやがる。




なんつぅか……
このままじゃ俺、友達なくすんじゃねぇ?

そう思った時だった。


「何?お前、転校生?」
「げっ……リゼル?」


リゼル。
一言で言うなれば不良。
ケンカで彼に勝てる奴なんかいないって言われてる。
関わりたくないし、関わる気もねぇ。


「……無視か?」


と、肩を掴まれる。
リゼルに絡まれた瞬間、クラスメイト達は次々に目を逸らす。
クラリスだけが心配そうに見つめていた。


「返事は?」
「……」
「男なら、返事しろや」
「はい!……あ」


“男”という言葉につい、返事をしてしまった。


「ははっ、お前は今日から俺のダチだ。パシリという名のなァ」


俺、すげぇ可愛そう……
もうダメかもしんねぇ──


「はぁ……」


ベッドに寝転がって、買ってきたエクステを見つめる。
今朝までと同じ長さのもの。


「これが……俺、か」


エクステを付けて鏡を見る。


「……可愛いくね──」
「オカマ野郎、降臨……ぐすん」


鏡越しにドアから覗き込むリクが見えた。


「つぅか、オカマじゃねぇ!!」


エクステを思いきり投げる。
が、リクがドアを思いきり閉めた反動でエクステが俺の頭にかぶさった。


「……オカマじゃねぇし……」





Beetle which was hatched from a chrysalisー蛹から孵ったカブト虫ー....END....
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