Beetle which was hatched from a chrysalis
これまた、思い出話になっけど。
俺がこの姿……つまりだ、女装を貫こうと決めたキッカケな。
「見てごらん、フリフリ可愛いよ~」
「何をまた買い込んできたんだよ、パパ……」
テーブルの上は女物のフリル系が山積み。
「オカマ野郎が……パワーアップする」
「だから、オカマじゃねぇし!」
「ささっ、アリス。着てみてよ」
「嫌だ」
「絶対に似合うからさ」
「オカマ野郎……」
「着ねぇ、オカマじゃねぇし!」
俺が怒鳴ると、パパが涙を浮かべた。
リクはカマカマ煩せぇ!
と、まぁ……ここまではいつものパターンだ。
今日の俺は一味違うぜ。
「パパなんか大嫌いだっ!」
よし、言ってやった!
けどパパは声に出して泣く。
そっちがその気なら……
「俺は男に戻る!!」
と、ハサミで長い髪をバッサリと切った。
「な、なんて事を! あ……あぁ……」
相当ショックだったのか、パパはそのまま気を失った。
髪も気持ちもすげぇ軽くなった気がする。
「カマカッコいい……」
リクはそう言って、目を輝かせていた。
「おっと、のんびりしてる場合じゃねぇな。」
学校に遅刻したら、ママの鉄拳がくだる。
「あー……そういや、スカートしかねぇんだっけ」
流石にこの髪にスカートは変態だ。
ん?
待てよ……
「リク、制服借りるな!」
と、素早く制服に着替える。
案外、着れるもんだな。
「オカマ……じゃない、あの……僕は?」
「俺の制服があんだろ」
「ええっ!僕、そんな格好で学校にいけないよ」
「知るか、あばよ」
「酷いよ、元オカマ野郎……ぐすん」
爽快、爽快。
あのリクが“オカマ”扱いしねぇ。
それだけでも、切ってよかったと思うよ。
〈Beetle which was hatched from a chrysalis〉
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