Spherical moss that can hesitate(リゼルStory )
「オイ」
「ハルクみたい呼ばないでほしいな……」
「…………ア、アリス」
「ふふっ。どうしたの、リゼル?」
「って、なに笑ってんだよ!」
「本当に名前で呼んでくれるなんて思ってなかったから」
「ばっ、テメェが名前で呼ばなきゃぶん殴るって顔してやがったからだっての!」
「えっ……そんな顔してたんだ……うー……絶対、ハルクのせいだよ」
本気にしてんじゃねぇよ!
そ、そもそもたかが名前だろーが!
喜ぶんじゃねぇ!
ドキドキしてんじゃねぇよ、俺よォ!!
「リゼル?」
「さっさと帰れよ、目障りだ」
「呼び止めたのそっちなのに……」
「だーッ! ウルセー! 用なんかねぇ!」
いつから目で追うようになった。
少しの変化に気付くようになった……?
「オイ、何かあったのか?」
「ううん。ちょっとね、目に埃が──」
「バレバレな嘘つくんじゃねえよ」
あいつの涙に気付くようになったんだ?
「──っう」
目の前の相手の振るえる肩に手が伸びていた。
何なんだよ、俺!
ざけんじゃねぇ!
「何でもない……よ」
「オイ、待てよ!」
腕を掴んだつもりだった。
「いた……っ」
「て、テメェが急に走るから……悪い……んだ」
実際は首を掴んでいた。
自分の不器用さに腹が立つ。
それに対してまた腹が立つ。
「……じゃねぇ」
「え……?」
「クソ……そうじゃねぇだろ、俺…………悪かったな。で、その……話……俺様が聞いてやっけど?」
“聞いてやる”って余裕なんかマジな話、全然ねぇ。
その、なんつーか聞きたいってか知りたいってか──
「だァもう、とっとと話せよ……オイ!」
Spherical moss that can hesitate-迷えるマリモ-END
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