Moonlight(リクStory )

段々と姉さんが遠くなる。
過ごした日々、思い出が──
一緒にいたという、記憶が消えていく──

姉さんの顔すら靄がかって見えなくなっていく。
そして、僕自身も……

「お前はボクに生まれ変わったんだ。いい加減に諦めロ」

いつしか僕の中に入り込んだ“誰か”。
そいつが僕と姉さんを引き離そうとしているのか。
──それだけではないような気がする。
分からないけど、別の何かが──

「ネェ、一番忘れたくないものって何?」
「……答える義理はない」

そうだ。
勝手に僕の中に入ってきて。

「やっぱり、“ネエサン”?」

的を突かれた事に一瞬、取り乱してしまった。

「自分自身だけど?」

心を見透かされないようにと精一杯、冷静を装う。

「正直者だね、オマエは」

胸を撫で下ろす。
そうだ、これでいい。

「ゼンブ、顔に出てるから」
「え──」

頭の中が黒で埋め尽くされる。

「何だ、これ……あ、あぁぁ……うあぁぁあああ!」

姉さんの顔が黒く塗り潰されて汚れていく……
触れた指先の温もりが冷たく闇に覆われていく……

黒くて黒くて、暗くて何も見えない──

「無駄ダヨ」

……僕自身、身動きさえ出来ない。
もう、何も見えないのかな……

──あれ……何だ?
何かが……気のせいか。



Moonlight-月光-END.
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