Labyrinth(ハルクStory )

最近、アイツが気になる──?
気になりだした──?
よく分からねェけど、アリスが頭の中に入り込んで来やがる。

「……てる?」
「…………」
「ハルクってば、聞いてる?」
「あ?ラセン、か」
「冷くなった?」
「そんな事ねェ──」
「寒いの嫌いなのに……」

そう言って、ラセンはオレに抱き付いた。

彼女だ、当たり前じゃねェか。
当たり前……なのに抱き締め返す事が出来ない。

それ以前に、彼女の言葉にビビってどうすんだよ。
冷たくなんてした記憶もねェのに。


「ただいま」

アイツが帰ってきた。
――体が無意識に反応する。

「ちぇ。これからがいいとこだったのに。ハルク、外出な──」
「悪かったな、先帰って」
「平気」

何で平気なんだよ。

「理由、聞かねェの?」
「え?……Arice・Dollについて調べてたんでしょ?」
「そ、そうだけど」

咄嗟にオレは嘘ついた。
アリスから出た言葉は、信用と期待を匂わせる。
嬉しかねェ!!

「それにリゼルと近くまで一緒だったし……」
「リゼルだァ?……変な事は──」
「されてないから」
「ならいい」

ホッとすると同時に気持ち悪さが襲い掛かる──

「ハルク」
「ラセン……?」
「強く抱き締めて」
「何を急に──」
「好き。好き……だよな?」
「……あ、あぁ」

言い聞かせて手を動かそうとする。

──ダメだ、動かない。
ラセンを抱き締められない自分がいる事に気付く。
それは、アイツの存在がそうさせるのか?

「悪りィな、吐いてスッキリしてくる」

逃げるようにラセンから離れた。
捌け口なんて最初からない。

誰にどう伝えたらいいのかさえ分かんねェし、な。



Labyrinthー迷宮ーEND
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