In When You Wish upon a Star, the future a dream




それは突然だった。

あまりに衝撃的で、信じられなかった。



「今なんて…?」

「アリスにはすべての記憶がない。僕達はもちろん、家族のことすら忘れている」


ある日の朝、アリスの記憶が消えた。

原因はわからない。



「記憶戻す方法はねェのかよ」


オレがそう尋ねると、セツナは黙って、首を横に振る。



「アリスが自分自身で取り戻すしかない。それがいつになるかも…」


目の前が真っ白になった。

どうして、そうなっちまったんだ…?





───────
─────



あれから3日経った。

アリスの隣にはセツナがいた。


記憶がないのをいいことに“恋人”だと言ったらしい。

そうだとは知らないアイツは、セツナと楽しそうに話していて、オレにはそれが違和感でたまらなかった。



「ハルク。兄貴、楽しそうだよ!」


ラセンが二人を見て、そう言った。



「…確かにそうだな」


そう返事したが、本当にそうなのか?

記憶のないアリスに嘘をついただけじゃないのかよ。


わかんねェ…。





───────
─────


喉が渇いたから、何か飲もうとキッチンに来た。

そこにはアリスがいて、丁度、片づけを終わらせたところ。

アリスがオレに気づいて、顔を上げる。



「ハルクさん」


記憶を失ってから、コイツはオレをハルク“さん”と呼ぶ。



「呼び捨てでいいって。“さん”なんかつけんなよ」

「でも、セツナがハルクさんはラセンさんの恋人だから、お前は呼び捨てで呼ぶなって」


何だ、ソレ。

てか、セツナって、絶対に恋人を縛りつけるタイプだな。

心が狭いとも言うか。



「いや、本当に呼び捨てでいい。お前もそう呼んでたんだし」


だけど、アリスは横に振る。



「昔はそうでも、今は違うと思います」


ハッキリそう言った。

昔とか今とか関係ねェだろ。



「なぁ…」

「ごめんなさい。セツナからあまりハルクさんと二人きりにならないように言われてますから…」


そう言って、アリスはさっさと出て行っちまった。


…おかしい。

こんなのおかしい!

あんなのアイツじゃねェ。


オレの知ってるアリスは、意地っ張りで泣き虫で菓子作りが好きで、ブラコンな女だった。

今のアイツは、アリスのようでアリスじゃねェよ。


セツナと一度話す必要があんな…。











〈In When You Wish upon a Star, the future a dream〉











.
1/2ページ
スキ