Place that I see, far-off love
今日は休日。
ここのところ、色々なことでバタバタしていたけど、やっと落ちついた。
だから、たまには気分転換しようと、私は出かけることにした…。
すぐ準備に取りかかり、済ませてから、出かけようと靴を履く。
家には珍しく誰もいない。
出かける時は、必ず声かけろってハルクが言ってたけど、いないからメモだけ残すことにした。
玄関を締めていた時、タスクさんに声をかけられた。
「出かけんの?」
「はい。たまには買い物でもしようと思って」
「ふーん。じゃあ、オレっちも一緒していい?」
特に断る理由もなかったので、一緒に出かけることにした。
タスクさんと話しながら歩いていたら、ハルクを見かけた。
…ラセンと一緒に。
「ハルク!待ってよ」
「…勘弁してくれ」
あ、ハルクと目が合っちゃった。
よし、見ないフリしよう。
「タスクさんはどこか見たいところはありますか?」
「おい、無視すんな」
「私のオススメは…」
「アリス!」
ハルクが私とタスクさんの間に入って来る。
「何よ!入ってこないでよ。たまには恋人と過ごす時間を大切にしたらどうなの?」
「んなの必要ねェ!」
「こら、アリスの言うとおりだぞ。今日はお前の代わりにオレっちがアリスを守るから。ハルクはラセンとデートしなよ」
「え?」
まさか、タスクさんまでそう言うと思わなかったのだろう。
ハルクがあ然とする。
「ほら、そう言ってるし行こう!ハルク」
ラセンに引っ張られ、ハルクは連れて行かれた。
何か言いたげな目をこちらに向けながら…。
だけど、私は気づかないフリをした。
───────
─────
数十分後。
ショッピングモールに着いた。
「へぇー、色々あんだな」
初めて来たタスクさんは、物珍しいのかあちこち見回していた。
「食べ物から洋服や雑貨まで色々あるんです。タスクさんが見たい店があったら、どんどん言って下さい」
「ありがとな。アリス」
タスクさんに一時間後に中央広場と約束し、私は自分の行きたい店に向かうことにした。
まずは洋服屋。
私が好きなブランドの服がたくさんあり、テンションが上がる。
よし、良いものをゲットするぞー!
それからわたしは、店内を回る。
これ、いい。
あ、こっちのも!
これなら、今持ってるのと合わせられるし。
でも、まずは試着してみなくちゃね!
気になったスカートを何点か手に取り、試着室に入った。
穿いているスカートを脱ごうとしていたら、遠くから騒ぎ声が聞こえた。
しかし、私は気にせず、着替え始める。
と、いきなり私が入っている試着室を誰かが開けて入った。
え?私まだ…。
振り向くと、そこには───。
「はぁ……はぁ…。アイツ、何であんなに体力あまりまくってんだよ」
「……」
「マジで疲れたー。……ん?」
ようやくハルクが顔を上げる。
「アリス?何でここに…」
ハルクが硬直する私を見て、次第に顔を赤くする。
「それはこっちのセリフよ!バカ!!」
私はハルクの頬を思いっきりひっぱたいた。
「痛ってェ!」
───────
─────
その後。
カフェに場所を移して、私とタスクさんと片頬が赤いハルクの三人がいた。
「いやー、ハルクが逃げた先にアリスがいたとは…。一心同体だけじゃなく、何か糸でも繋がってんじゃないの?」
「冗談じゃない(です)!」
私とハルクが同じセリフを口にし、タスクさんは笑う。
「息ピッタリー。さっすが!」
「それよりハルク、見たでしょ!」
「見るかよ、んなもん。お前の裸見たって、全然色気ねェだろうし」
「なんですってー!色気なくて悪かったわね」
「本当だぜ、この色気ゼロ女。あんなブルーのチェックのパンツ見たって…」
ん?
ブルーのチェックって、私の今日の下着。
やっぱり見てんじゃないの!
「見てないって、見てるじゃないの!最低!!」
「うっせェな!見ちまったのは仕方ねェだろ」
ハルクとの言い合いは更にエスカレートし、見ていたタスクさんが静かに立ち上がり、そして…。
「はい、喧嘩両成敗!」
と言った瞬間、私とハルクの額がぶつかる。
あまりの痛さに涙が出そうで額を押さえた。
ハルクも私と同じように額を押さえ、堪えている。
「二人の言い合いはもう夫婦喧嘩に近いな。だから、学校でそう呼ばれんだよ」
やめてよ。
ハルクと夫婦なんて冗談じゃないわ。
「ともかくこの話はおしまい!アリス。他に行くところある?」
「はい。でも…」
今度は下着が見たい。
だから、一緒には見れないから、ここで待ってもらおうと考えていた。
しかし。
「んじゃ、行こっか!」
「…え?ちょっと」
「早くしろ、ノロマ」
両腕をそれぞれハルクとタスクさんに掴まれたまま、向かうことになった。
店に辿り着くと、ハルクは硬直し、タスクさんは涼しい顔。
さすがに女性用下着の店だから男の人はいない。
だから、二人は完全に浮いていた。
「お前、下着見るなら最初に言えよ!」
真っ赤な顔しながらハルクが私を怒鳴る。
けど、負けずに言い返す。
「言おうとしたわよ!」
「言おうとしたじゃねェ。ちゃんと言え!」
「じゃあ、来なければいいじゃない。別にハルクは誘ってないし」
「ふーん。こんなのあるんだ…」
言い合う私達をよそにタスクさんは、既に店の中の商品を見ていた。
「ハルク」
「え?…うわぁ!」
タスクさんがハルクの目の前にショーツを見せる。
と、また赤い顔して視線を逸らすハルク。
「こんなの見て赤くなるなんて、お子様だねー。ハルク。そんなんで、これからどうすんだよ」
「タスクさんは何で平気なんですか!?」
「オレっち、こんなの見慣れてるよ。リコリスはああいうの着てたし」
タスクさんが指差した先の下着を見ると、確かにリコリスさんに似合う感じ。
私には無理無理…。
てか、見慣れてるって、そういうことよね?
やっぱり恋人なんだから、そういうことするわよね…。
私、恋人いたことないからわからないわ。
「あれ?ハルクはラセンの下着姿、見たことないの?」
「バカ、見るわけねェだろ!!…たまに際どいの着て来るけど、あれは目のやり場に困る」
ラセンとは、キスもこないだが初めてだったみたいだし。
まだそういう関係じゃないのね…。
こんな反応じゃ、まだまだか。
「アリス、ここに用なんじゃないの?」
「はい、そうでした」
タスクさんに言われ、私は本来の目的を思い出した。
下着を見てる間、タスクさんは何故か私と一緒に周り、色んなのを見せては勧めてきた。
どれも私には着れないものばかりで…。
ハルクはさすがに入っては来ず、店の外で待機。
あまり待たせると文句言われるから、そろそろ切り上げよう。
「タスクさん、出ましょう!…って、あれ?」
隣にいたはずのタスクさんの姿がない。
どこ行ったんだろ?
「へぇー、今こういうのが流行ってんだ」
「はい。色はピンク、ブルー、オレンジ、ブラックがあります」
「これならリコリスにいいな。んじゃ、ブルーのやつをくれる?」
店員さんと会話して、しかも買ってる!?
「タスクさん!」
「アリス、どーした?」
「下着、買うんですか?」
「まぁね。リコリスに着てもらおうかと思ってさ。そしたら、教えてもらって…助かったー」
この人、どうして恥ずかしがらないのかしら?
女物の下着売り場なんて、男の人は普通、挙動不審になるのに…。
店から出ると、案の定、ハルクが文句を言った。
「遅っせェよ、アリス」
「買い物したの私じゃないわよ」
「オレっちでした」
その言葉にハルクは、固まる。
「え?タスクさんが…」
「変な想像すんなよ。オレっちが着るわけじゃねーからな」
「リコリスさんにあげるんだよ」
「…あー。そっか、そうだよな!」
きっとタスクさんが着ると思ってたのね…。
そんなわけないじゃないの。
「さーて、オレっち、早速リコリスに渡して来るから、後はよろしく」
そう言い残すと、タスクさんは行ってしまった。
〈Place that I see, far-off love〉
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