Love of the moment is overawed by Darkness
それは昔見たことのある夢。
いや、悪夢というべきもの。
─────最近、また見るようになった。
「…っ」
僕が目を覚ますと、時刻は必ず4時44分を差していた。
あの夢を見ると、いつもこの時間だ。
もう忘れかけていたのに何故、今頃…。
母さんが今の父さんと再婚して4年間、まったく見てなかった。
幸せな日々に気づかなかっただけなのかもしれない。
僕が密かに願っていた夢が叶ったから…。
母さんと二人で暮らしていた時も辛いこともあったけど、それなりに幸せだった。
けど、父さんと姉さんという新しい家族が出来てから更なる幸せがやって来た。
だから、なのか?
「………ク。リク!」
名前を呼ばれ、顔を上げると姉さんの顔。
姉さんは父さんの連れ子で、血の繋がりはない。
僕より一つ上なんだけど、他の人から見ると何故か僕の方が兄に見えるみたいで、よく兄妹と間違われる。
確かに姉さんは、少しドジなところもあるけど、優しくて可愛い。
本人にその自覚ないけれど、それが姉さんらしいと思う。
「リク。大丈夫?」
「うん、平気だよ。ありがとう。姉さん」
心配かけたくないから、嘘をつく。
姉さんの顔を曇らせたくないから。
〈Love of the moment is overawed by Darkness〉
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