Doll
「──姉さん」
出会ったあの日から、僕は別人を演じていた。
貴女を僕のモノにする為に。
──姉さん。
このマフィン、凄く美味しいよ。
──姉さん。
この本、凄く面白いからお薦めだよ。
──姉さん。
知ってる?
駅前に新しいケーキ屋が出来たんだよ。
凄く美味しいって評判なんだ。
土曜日、一緒に行かない?
「姉さん」
この数年で距離は随分と縮まったよね?
そろそろ……いいかな?
…………いいよね?
「姉さん」
「リク……?」
強引に唇を奪い、身体を重ねる。
嫌?
嫌じゃないよね?
心も僕に向いているんだから。
「姉さん」
僕の部屋に監禁して。
毎日、耳元で言ってあげた。
“姉さんは僕のお人形さんだね?”
拒否は次第に肯定に。
拒絶は次第に受容に。
笑顔は次第に無に。
光を灯していた、その瞳は僕だけを照らす闇に。
「姉さん」
今日はどんな遊びをする?
また、大人のオママゴトでもする?
ああ、心配しないで。
お友達もそのうち作ってあげるから。
.
1/2ページ