Brother Goes




「オイ! 起きろや、変態! 大変な事が起きたゾ!」
「夜中に叩き起こしやがって……何があったって?」


超絶ハッピーな夢を見てたのに、妹のメアのペットのウサギ野郎に起こされた。
あと一歩で食えたってのに、くそ。


「──はぁ? メアが?……マジかよ」


メアが拐われた。
犯人は言うまでもなく──


「デストロイ……アイツは今、ホテル・ハニーの808号室付近にいるはずだ!」
「あんの……変態野郎……っ!……って、何で分かんだよ」
「ん」


ウサギ野郎はホテルの鍵を投げ渡した。


「あいつ、あほだな! はははっ!」
「……罠かもしれんぞ」
「挑むとこだ」


おれは動きやすい格好で家を飛び出す。


「コラー! 変態! 下着くらい履けや!」


──流石に全裸は止められた。
仕方ねーから、最低限を羽織った。


「攻撃力はあっても、防御力はゼロだな」
「おれ強いから」
「相手はデストロイだぞ?」
「関係ねーし。とっとと、メア助けてナンパしてー」


そうこう話してるうちに、ホテル・ハニーに着いた。


「808か……って……」
「あっれー? ぼく、鍵……」
「ねえ。連れ出して、いつまで待たせるの?」
「ごめん、メア。もう少し待ってて」


──罠でも何でもねーじゃん。
しかも、なんかメアのが立場上じゃね?


「嫌。もう帰る……メアの王子様が待ってるって言うから……来たのに」
「いるいる! いるって! ここに、ほら──」
「いい加減にして!」
「ふごっ……」


あ。
メアに顔面、殴られた。


「ここにいるのは、変態だけじゃない!」


すげー言われようだな。
てか、おれいらなくね?


「いい加減にすんのは、おまえだよ。顔、思いきりやりやがって」
「きゃ──」


やべー。
ロイのやつ、キレたか……?


「もういい」


ロイは防犯カメラを壊し、メアを押し倒す。


「いや……! ダメ──」
「そこまでだ、変態」
「邪魔しに来たのか、変態」
「いやぁぁ! 二人して似たような格好してる……!」
「うがっ!」
「ふがぅっ!」


おれとロイはメアにボコされた。


「……助けに来たのに何しやがる……」
「…………っはぁ……よくそんな……露出度で捕まらなかったわね……」
「あー……逆ナンはされまくったけど? 男女問わず。けど、ウサギ野郎に全阻止されたけど……な?」


殺意を込めてウサギ野郎を睨み付け……


「あり?……いねー……」
「ウサギ野郎?……ラヴィ? ちょっと! ラヴィ、どっかに落としたの!?」
「違う! ちょ、聞けって!」
「問答無用──」
「お嬢さん」


聞きなれない声にメアの振り上げた手が止まる。


「…………貴方は……」
「遅くなりましたが、助けに参上しました」


現れたそいつは、メアがよく語ってる“王子様”そのものだった。


「ここは任せて。お逃げなさい」
「……はい…………」


王子の登場にメアは乙女モードになりやがって。
本性、見せつけたろか!


「……誰だ? こいつ」
「さあな。けど、ロイにとっては厄介なやつかもな」
「は? どこが。こんなやつ、ぼくが一瞬で──!」


パサッという音と共に布切れが落ちた。


「うお! モザイクくれ!」
「あるかよ、変態! 一瞬でヤられてんじゃねーか!」


って、おれも巻き添えくらってるし!
ま、おれはノーダメージだけど。
動きやすくなったし。


「……さて、本気で──って、いねーし!」


……遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。


「メアのやつ、助けに来たおれごと警察送りにするつもりかよ!」


おれは布切れをかき集め、貼り絵のごとく身体に貼り付けた。
ラッキーなことに、汗は布切れを容易く受け入れた。

逃げる道中、道端に落ちていたウサギ野郎も無事に回収。
貼り絵は少しずつ風に奪われていった。



──翌日。

「オイ、起きろ! 変態!!」
「あ? 何だよ……ウサギ野郎……」
「また、メアが──」
「行かねーし!!」





END.
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