Mimicry
幼い時から、ヤンチャしたり。
時には殴り合うような喧嘩もしてきた。
学校に親だって呼ばれた事も……
「カルロ? 私の事、本当に好き?」
「え? 何で?」
この時までは、記憶を疑った事も無かった。
それなのに──
「キス一つしない。恋人らしいことだって!」
「やめろ」
彼女の手がシャツのボタンに触れた時、凄まじい吐き気と悪寒に教われた。
「触るな」
──自分のとは思えない低い声。
勝手に開く……口。
「カル……ロ?」
「二度と近付くな、下衆が」
そんな事、思った事なんて一度もなかった。
……一度も……なかった?
「……! な、何だ……コレ……」
腕を捲った瞬間、視界が歪み始める。
見覚えのない傷の数々……
僕……いつから長袖だった?
……今、夏……だよな?
──今までの自分が崩れ去っていく……そんな感覚だ……
僕は…………僕は一体……?
「──もう! ついてこないでよ、馬鹿っ」
「だーから、何度言えば分かるんだよ!」
すれ違った高校生。
恋人同士、って訳ではなさそうだけど。
仲、良さそうだね。
「──ッ!」
女子高生と目が合った瞬間、酷い頭痛に襲われた。
く……ッ……頭が……割れそうだッ……
「──目、覚めましたか?」
病院で僕は意識を取り戻した。
同時に──
「はい……はー……最悪だな……」
嫌な記憶(モノ)も取り戻してしまったけれど。
僕はもう……僕では……いられないのかも知れない──
〈Mimicry-擬態-〉
END.
(2023.08.27)
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