Sai




「変身、完了!」


そう言って、タスクさんが私の部屋に入ってきた。

変身という言い方は大袈裟。
実際は──


「どうだ、アリス?オレっち達、イケてるだろ?」





眼鏡男子になっただけ。
タスクさんの後ろには、ハルクとセツナもいた。





「まじまじ見んなよ」
「ハルクは見てない」
「……なら僕を見ているのか、アリス?」





「セツナも見てな──」


言い掛けて、凄まじい殺気を感じた。


「み、見てなさいました……」


言葉がおかしな方向に走る。
それくらいセツナの放つものが怖かった……


「セツナのヤツ、何だかんだ一番似合ってんだよね。アリスもそう思う──」
「それより眼鏡って、どうかしたんですか?」


私は返事を誤魔化す為に話を変えた。

誤解されたくないとか、そんな理由じゃない。
何となく……セツナを見てたという偽りをこれ以上、認めたくなかったから。


「どうしたもこうしたも、道ばたでチラシを貰ったんだよ」
「タスクさんは“期間限定”に弱すぎるんですよ」
「そういうお前は“眼鏡男子は目立つ”という謳い文句に負けただろうが」


セツナは呆れてハルクを見る。

……そうなんだ。
でも、確かにハルクって最近あまり存在感ないかも。


「セツナは眼帯で視力が悪りィと勘違いされて買わされてたじゃねェかよ」
「眼帯と交換……納得がいかない。ただのぼったくりだ」


セツナの眼帯、遮眼子(しゃがんし)と間違えられた……のかな?


「その割りには素直に渡していただろ」
「手を差し出されたら、置きたくなるものだ」
「お前は犬かよ」


……うわぁ。
セツナが犬になったのを想像しちゃった。
……少なくとも可愛げはない、かも。
素直に何かを渡したりするなんて想像つかないし……


「あっはははっ!」


タスクさんはお腹を抱えて笑っている。


「タスク、笑うな」
「いっで!何でオレを殴るんだよ!」
「お前が撒いた種だからだ」


ハルクとセツナは取っ組み合う。


「落ち着いてよ、二人共!」
「アリスの言うとおりだ。例の計画を実行すんだろ」
「そうだったな」
「例の計画?」


私が首を傾げると、三人はニヤリと笑った。











〈Sai〉










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