Quiet Darkness




──好きを通り越したら、愛になっけど。
その先は知らないんだよな、オレっち。
まぁ、知らなくていいか。
興味もねェし、何より今が一番、幸せだしな。


「リコリス、一緒に出掛けねェか?」
「うん、いいよ」


オレっち達は何処に行くにも、何をするにも一緒だった。
それが当たり前で、皆がそうだと思ってた。

ケンカだってすっけど、

「タスクなんて……嫌い」

とか言われると、地獄に叩きつけられるくらい……心にズシンと重くなって、立ち直れなくなるし。
そんなのが何分何秒と続くなんざ、あり得ねェ……
死ぬよかつれェって。

だから、直ぐに謝る。
彼女も直ぐに笑って許してくれる。

それでも懲りないんだよな、オレっちってば。
次第に、怒る表情(かお)も愛しくなって。
コロコロと変化する彼女が見たくて、わざとからかったり。
時にからかわれたり。

──そんな“現実(いま)”がいつまでも続く、そう信じて疑わなかった。


「リコリス」


彼女を確かめた温もりが、確かに腕の中(ココ)にあったから。
普通に結婚してガキ作って……そんな未来はねェって、それだけは覚悟してた。
それはオレっちが……いや、そんなの関係ねェな。
何はともあれ、オレっちは彼女がいれば……それだけで──
……なのに……


「リコリス! おい!……リコリス……ッ」


リコリスの“心”をアイツに奪われた時、愛の先か隣にあるものを知った。
“憎しみ”とは、よく言ったもんだよな。
まさに、ソレ……
リコリスに対してじゃなく、奪ったアイツはもちろん……
周りに対しても……何より自分自身に……だ。

周りを傷付ける度に、自分自身も同じように傷付いて。
彼女をも傷付けて……
やり方は間違ってるって分かってんのに……どうしたらいいのか……
その術を知らなかったオレっちは──
“壊れた”のかも知れねェな……


「……大切なもんの為なら、悪魔にだって魂は売れんだって」








END.
(2023.05.07)
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