Small Chocolate Love
感謝なのか、好意なのか……
考えて、考えて……出た答えは後者だった。
そして、
“バレンタイン”
っていうのがあることを知った。
本で見たり、パソコンで見たりしたけど……
全くよく分からない。
いざ作ろう!
と、したらボヤ騒ぎ。
迷惑かけた上に、料理禁止命令……
そこで、もう頼れるのは……
ただ一人しかいない。
「あ、アリス!」
「リンネ、どうしたの?」
「…………その……チョコ……いっ……いっ……」
“一緒に作って!”
その一言が、中々言えない……
「これからチョコ作るけど、一緒にどうかな?」
「え! いいの?」
「スペシャルなの作ろう」
仲良くなって、思ったこと。
……こういうのが女の子にもモテちゃうんだよ、アリスは!
きっと、本命チョコはもう出来てるんでしょ?
「──それじゃあ、材料から見に行こうよ」
初めての手作りチョコ。
魅力的なトッピングばかりで悩んでいると、アリスは全部買おうって言ってくれた。
余ったら、他のお菓子にも使えるからって。
“どんなチョコがいい?”
って聞かれて、口ごもると渡す相手のことを聞かれた。
それは一番、答えたく無かった。
だ、だって……好きな人のことなんて……誰にも知られたくないもん。
──すると、アリスは……
「私はね。一緒にいるとドキドキしちゃって上手く話せない、って訳じゃないんだ」
自分の話をし始めた。
アリスの好きな人は、知ってるし。
見てても分かるんだけどな。
「近くにいる存在だからかな? でも、ドキドキしっぱなしで……好きなんだけど、感謝もいっぱいしてて……そんな思いを込めたのを作ったよ」
ほら、もう作ってる!
あたしは大人だから? ツッコまないけど。
「リンネにとって、どんな人?」
「え?」
外見とか名前とか、聞かないんだ。
ま、聞いたところで知らない人……だものね。
けど、“あたしにとって”どんな人かは答えやすいかも。
そんな風に思ったのに、いざ言うとなると……
すっごく難しい。
ううん、逆に難しい。
「…………好きな人」
最終的に自分でも、何!? って思う言葉が出た。
そのまんまよ、あたし!
けど、アリスは“その気持ちが大切”と言ってくれた。
さっきの質問は、チョコの形を決めるための質問だったみたいで。
ハートをベースにしたチョコを作ることになった。
アリス曰く、
がっちりハートだと恥ずかしくて渡しにくい。
相手の気持ち次第では受け取って貰えないかもしれない。
とのことだった。
もし、友チョコというやつだったら……って気になりはしたけど。
今のあたしには、そんな余裕はない……
「それじゃあ、作ろっか」
「うんっ!」
初めて、誰かのために思いを込めて作る。
それだけで、すごくドキドキする。
「チョコは水が嫌いだから、気を付けて」
「ううっ、さっきも聞いたってばぁ……」
チョコ1つ溶かすのがこんなに大変だなんて。
混ぜ合わせるのに腕が痛くなるまでやるなんて。
チョコペンが出にくくて、思うように文字が書けないなんて。
知らなかったよぉ……
めげそうになるのをアリスがフォローしてくれた。
アリスの手際の良さは、本当に尊敬する。
「デコレーションは一人でやること! 一つ一つに思いを込めて」
最初こそズレてズレて、勝手にかたまって大変だったけど……
相手のことを考えると集中もついてきて、上手く出きるようになった。
気持ち込めるって、こんなに大切だったんだね。
「出来たーっ!」
出来映えは良いとは言えないかもしれないけど、とても満足なチョコが出来た。
ラッピングはアリスがやってくれた。
お店に並んじゃうくらいに見違える……
悔しいけど、本当にアリスは──
「はい……これ、アリスの分」
「え?」
「……失敗作」
本当は本命の次に心を込めて作った。
アリスは笑顔で“ありがとう、嬉しい”って言ってくれた。
あいつも同じように笑顔になってくれると、いいな。
END.
(2023.02.13)
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