Line of Sight




──薄暗い部屋。
蝋燭に火が灯ると、ダークライとメアがいた。
メアはスマフォを手に口を開く。


「……調べによると、彼女には好きな人がいた」
「……ふぅん」


ベッドに寝転がりながら、気だるそうにダークライが答えた。
メアは気にすることなく続ける。


「けど、今は分からない」
「残念だな。好きなやつ目の前にして、ヤりたかったのに」
「……悪趣味」
「そそんの。絶望の瞳(め)って」
「……それは否定しないけど」


飛び上がって、ダークライは言う。


「ついでに壊れた、そいつもヤれたら最高な!」
「頭の中、それしかないの?」
「さあね。けど、あいつに“動く性欲”呼ばわりされたことあんだぜ、おれ?」
「……褒め言葉じゃないし、気持ち悪いんだけど」
「メアはねーの? 性欲」
「……ない。当たり前でしょ」


メアに近付いて、ダークライが言う。


「目覚めさせてやろーか?」
「変態」
「ちぇ。メアみたいな女に迫られたら、たまんねーと思うけどな」


ダークライは厭らしい目でメアを見る。


「だから一緒にしないでよ」
「あ、胸か」
「胸?」
「正真正銘のまな板、気にしてんだろ」
「ばか!そんなんじゃない」


メアは、胸に触れるダークライの手を乱暴に振り払う。


「ははっ、やっぱ気にしてんじゃん」
「本当、デリカシーない。あの方とは大違い……」
「あの方? あいつのことか?」
「……違う」


頬を赤らめてメアは言った。
ダークライはそれを見逃さなかった。


「おれに紹介しろよ」
「誰が。あの方はライが触れる事も見る事さえ許されないの」


メアはダークライに拳を向けるが、彼は軽々とかわす。


「許されねーの?……誰にだよ」
「……メアに決まってるでしょ」
「なーんだ、おまえにか。余計、気にな──」
「本気で怒るよ」
「おれは本気で聞き出す……血に塗れる姿も楚々るんだぜ?」
「知ってる……同じだから」


二人の力は同等。
故に決着は中々、着かない。


「ライ! ストップ!」
「あ? どーし……一時休戦な」


二人は引きつった笑顔でドアを見つめる。
暫くしてドアが開く。


「随分と騒がしかったようだが?」
「……喧嘩する程、仲いーの」


そう言った後、ダークライはメアに耳打をする。

“何も言うんじゃねーぞ”


「来い、ダークライ」
「はいはい。そんじゃ、ちょっくら行ってくるよ」


二人が出て行き、メアは一人取り残される。


「……変態じゃなきゃ、カッコ良いのに勿体ない」


メアがそう呟いたのを、ダークライは知らない──





〈Line of Sight-視線-〉



END.
(2022.10.17)
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