Heart-to-Heart




「ちょっと、ライ! 派手に遊ぶのも少しは考えてよ」


また始まった。
遊んで帰ると必ずメアの説教が始まる─!


「ったく、あーだこーだ煩いんだよ。おまえに迷惑かけてねーし」


誰で遊ぼうが、どんなことしてようがメアに関係ねーじゃんか。
別に“キス”したわけじゃねーし。
“キス”だけは、パパにも止められてるしな。
それ以外は、おれの自由。

そもそも、だ。
おれとメアは双子でも、違う人間なんだし。


「……かけてる」
「は?」
「迷惑かけてるわよ。さっき……ライに遊ばれたって奴がたくさん来て……」
「はは……マジかよ……」


その後の言葉は正直、聞きたくねーんだけど。


「…………襲われそうになって……」


涙目で話す、メア。


「あー……そうなんだ……」


……やらかしたな、こりゃ……


「問答無用で来るんだもの……」


だろうな。
最近、相手にしたやつらは後味悪い連中ばっかだったし。


「……記憶がなくなるくらいヤっちゃったじゃない……」


メアの“ヤる”は、おれとは別の……“殺る”だ。
容赦ねーんだよな、メアも。
そこは、“兄妹”って感じ。
けど、おれのがイイ思いさせてやってる分はマシだろ?


「しかも……堪らなく、ゾクゾクしちゃった……し……」
「ぷっ、ははっ! やっぱ面白れーな、メア! 冷静に聞くつもりだったのに……もう、無理むり! はっははは!」
「……笑い事じゃない」
「じゅうぶん笑えるっての!」


襲うつもりが返り討ち。
メアのことだから指一本も触れさせてねーだろし。
おれにヤられて、メアに殺られるって……たまんねー。


「いい加減にして」
「あー、わりわり……ってか、勿体ねーの。黙ってりゃ、男寄ってくんのにな」
「嫌よ……男なんか」
「女にも興味ねーじゃん、おまえ」
「…………まあね……そもそも、ライと同じになりたくない」
「こっちも願い下げ」
「何でパパは──」


俺は誤魔化すように言う。

 
「──で、パパに始末頼んだのか」
「……そう」
「なら、安心だな」
「そういう問題じゃない! お気に入りの服が……汚(けが)れちゃったじゃない、バカ!」
「ちょ、メア──」


それ、おれのせいじゃねーから!

メアは容赦なく、おれを殴り蹴る

見た目のわりに力があるから、すげー痛い。
──ってか……やべ……すげー気持ちいい。


「うっとりしないでよ、変態!」


メアの手や足に力が入る。
その手を受け止め、おれは言う。


「……いい加減にしとけって。じゃないと……おまえ相手でも歯止め、利かなくなるだろ」


メアの手を引き、抱き締める。


「は──」
「なんてな。おまえなんか全然、タイプじゃねーから」
「当たり前でしょ! ライの性癖の圏内になんか絶対に入らない!」


弱点を思い切り蹴られる。
……い、痛いけど……気持ちい──じゃねー!


「……てかさ、何で家でしか着ねーの?」


ロリータ、だっけ?
ミニスカ&タイツ。
普通に着こなしてるわけだし。
そーいう格好の女、外にいくらでもいんだろ。


「………………勝手でしょ……」
「それとも……やっぱ、おれに襲われてーの?」


速攻で拳と蹴りが飛んできた。


「い"ッ!!!」


──冗談に決まってんだろ!
またしても、ピンポイントで狙いやがって……
暫くヤれねーじゃんか!


「服は弁償──」
「おまえさ、おれのこと殴ってスッキリしてんじゃん」
「まあね。変態を退治したんだもの。気分、悪いわけないでしょ」


そう言って、メアは笑った。


「……あっそ」


メアは怒るより、笑ってる方がいい。
そう思うと……
何だかんだ言っても、やっぱメアみたいなやつが一番いいのかも知れねーな。
気を使わねーし。
あ、おれ普段から気なんか使わねーか。
おっと、勘違いすんなよ。
メアがいいんじゃなく、こいつみたいな──


「ライ……これ何?」


メアが床に落ちてる紐が付いた布切れを指差す。


「あ、おれのパンツじゃん。さっきの一撃で紐切れたんだな! はは──」
「馬鹿っ! 変態っ!!」
「おい! さすがに3回目はやめろっての!」


──やっぱ、メアみたいなやつ……無理かも。





〈Heart-to-Heart-以心伝心…?-〉



END.
(2022.09.08)
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