Awakening




「──なぁ、おまえ。おれに付き合えよ」


標的決めたら脅して捕まえる。
問答無用、抗拒不承。
“同意”より断然、燃えるやつね。
それがおれ、ダークライのやり方。


「いや……来ないで……来な──」


怯え、恐怖に泣き叫ぶ。
その表情(かお)は、たまんなく好き。
そんなやつが快楽に溺れてく。
それまた、たまんねーな。

女も男も関係ねーし。
おれにとっては、ヤっちまえば同じ。
でもキスだけはゼッテーしない。
制御不能、自分を保てなくなる。
そんなこんな同じ相手とは数回しかヤったことがない。


「はぁ……ッ…………たまんね」


……キスしなくても、気持ち良すぎると殺りそうになる。
おれの事を知りすぎたヤツも同じ。


「ひいッ! もう許し──」
「おまえ。すげー、好み」


好意を向けるのは好きだけど、向けられるのは反吐がでる。
だから殺りそうになんだろな。


「萎えた、萎えた。すげー、萎えた……」


──そんなわけで、今日も殺りかけた。
終わり良ければ全て良し、とか言うけど。
毎回、逆。
人生、そう上手くいかねーのな。


「──おかえり」
「……珍しいな、メア」


いつも顔を合わせること嫌がるくせに。
“変態”
って、軽蔑しまくるくせに。


「ねぇ、ライ」
「なんだよ」
「ライは……ううん、何でもない」


メアは俯いた。
なんかあったのは明らかだな。


「ははっ! 気持ち悪い、メアだな…………さては、好きなやつでも出来たのか」


ちと、カマをかけてやる。


「え、あ……ち、違──」
「分かりやす」
「違うの、本当に」
「女? 男? って、おれじゃねーもんな。 同姓はねーよな」


けど、思わず笑っちまった。
メアが男と肩を並べて歩いてんの、想像するだけで笑える。
このメアが、な。


「ちょっと! 勝手に話を進めな──」
「余計な感情、取り込むなよ」
「……分かってる」
「そうは見えねーけど?……そいつどんなの?」
「あんたの獲物にはさせない」


メアに首根っこ掴まれる。
くそ……完全に油断した──!


「味見くらい、どうってことねーじゃん……手、離せよ」
「代わりにあんたの潰しとく?」
「はは……状態きついって」
「本気よ」


……知ってるって、おまえ……おれのこと嫌いだもんな。


「……どうしたら許してくれんの? おれとデートでもするか?」
「誰があんたなんか──」


メアの腕に力がこもる。


「……デートでしか入れない場所あんだけど。手、離せよ先ずは」
「どういうつもり?」
「羨ましいんだろ?」


メアは女のくせに、妙に遠慮してる時が多い。
だから、こう言えば乗ってくるはず。


「別に変なは場所じゃねーし。頭の可愛いの欲しくねーの?」
「え?……髪飾り?」
「ほら、行くぞ」


メアの手を引き、ショッピングモールへ。
案の定、メアは他の女に混ざりながら髪飾りを選んでる。
赤の他人だったら、おれの好みの女だったかもな……なんて考えてみたり。

はぁ……欲求不満まみれじゃんかよ。


「あ……き、君は……」
「ん? 誰だよ、おまえ」
「お、覚えてないの?」


か弱そうな男に壁に押し付けられる。


「……君のせいで俺は──」
「口はやめろ」


軽く首を捻り、かわす。


「……今日はつれがいるし。おまえに興味もねーの」


そう言って、手を振り払う。
──が、一気に顔が近付く。


「…………死──」
「何やってるの、ライ」


メアに腕を強く掴まれる。


「別に…………命拾いしたな。もう二度と、おれに顔見せんじゃねーよ」


殺気を込めて言い放つと、やっとそれはいなくなった。


「はぁ……危なかった。人前で何してたのよ、馬鹿」
「あと少しで殺れたのに……」


そう言うと、股間を思い切りメアに蹴られた。
……すげー……痛い……
けど──
気持ちいい、かもしれない。


「メア……もう一回やっ──」
「この変態!」
「ああッ! やっぱいい! たまんねー!」


こうして、おれは新たな快感に目覚めた。









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(2022.08.02)
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