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On the way Home




独りが苦手、否定はしない。
愛を求めて女性に声を掛ける……否定は出来ない。
けれど、深い仲になるつもりはない。

手を繋いで歩き、一緒に食事。
他愛のない話で盛り上がる。
それで十分だと僕は思っている。

そういった意味では、教師という職業はいい。
年下好きとか、そういう事ではなく。
超えてはいけない壁がちゃんとある。
時々、その壁を壊して踏み込んでくる子もいるけど、校則や法律がまた壁を作るから。


「カルロ先生、中日ですね」
「はい、折り返し地点。何だかあっという間でした」


教育実習先、世話人を勤めている女性教師に食事に誘われた。


「喜んで」


食事中、会話に花が咲く。
料理の話、生徒達の話……
美味しい料理の店、彼女の新人時代の失敗話
……

気付けば、結構な時間が経っていた。


「大丈夫ですか?」
「……少し、休みたい……」


彼女の目線の先にあったものに背筋が凍りつく。


「あの……」


言葉が上手く出ない──
ホテル……つまりは、そういう事……なのか?


ホテルからカップルが出てきた。
興醒めだ……

やめてくれ。
僕には──


「す、すみません……家はどちらですか? 送ります」


彼女の返事よりも早く、タクシーを呼び止め中に乗り込む。

車に揺られながら外を見つめる。
時間のせいか、恋人ばかり目に入る。

急カーブで彼女が僕に寄りかかる。
そっと、彼女の肩を抱き寄せる。


「……危ないですよ」


──返事はない。
……まだ彼女の家は遠い。
僕は再び、外を見つめる。

ふと、さっきのカップルが脳裏を過る。
ホテル……身体の関係、か。

そう、僕は経験自体がない。
友人関係でそういう映像は見た事があるものの、何の感情も沸かなかった。
……憧れだとかそんな感情も芽生えた事すらない。

“男として、どうなの?”
“カッコいいのに勿体ない”

良く言われる言葉だけど、笑い流すしか僕には出来ない。
時には襲われそうになった事も無きにしも非ず。


「──先生、付きましたよ。おやすみなさい」


彼女を家まで送り、僕も帰宅路に着く。






〈On the way Home-帰り道-〉



END.
(2022.07.07)
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