Wish to the Stars+
今日は七夕なのに独り。
ううん、今日だけじゃない。
もう……ずっと独り。
となりの部屋は、ずっと静かなまま。
「何、辛気臭ェ顔してんだよ」
「ハルク……補習は──」
「何時だと思ってんだよ」
時計を見ると、8時を回っていた。
「アイツより早く終わらせて帰ってきたしな」
「……そうなんだ。でも明日も補習なんでしょ?」
「……まあな。サボるのも考えものだな」
「………………そうだね」
独りって言っても、ハルク達は変わらず傍にいる。
全くの無音って訳じゃない……けど──
「アリス、見てみろよ。すげェんだよ、星が」
「……本当だ」
そっか。
今日は七夕。
天の川を繋ぐ星が見え──
「お、流れ星!」
ハルクの言葉と共に辺りが光に包まれた。
目を開けると──
「……リク?!」
隣にいたのは、ハルクだったはずなのに。
「姉さん、どうしたの?」
何度も何度も目を擦る。
「本当にリク?」
「他に誰かいる?」
「う、ううん……夢みたいだなって」
「今夜は七夕。それも何十年ぶりかの快晴の夜。とてもロマンチックだと思わない?」
そう言って、リクは笑った。
この笑顔は、リクに間違いない──
「リク、あのね」
もう、何でもいい。
リクが目の前にいる。
会いたくて、会いたくて会いたかった人……
「話したい事、たくさんあるんだ」
「僕もたくさんあるよ」
それから私達は、たくさん話をした。
たくさん、笑った。
気付くと、たくさんの流れ星に囲まれていた。
「綺麗だね」
「姉さん──」
リクの顔がゆっくりと近づく。
「リク……」
キュッと目を閉じる。
暫く待っても、なにか起こる気配は全くない。
それでもいいの……
身体に感じる温もりが心地良いから──
「おい、アリス!」
ハルクがアリスの体を揺する。
「……寝てる? ったく、驚かすなっての……いきなり倒れやがって。流れ星に興奮しすぎだっての」
ハルクは眠るアリスを抱き抱え、部屋に入る。
〈Wish to the Stars-星に願いを-〉
END.
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