Season when there is not you




リクの誕生日が近い。
……食べてくれる本人がいないって分かっていても、作らずにはいられなくて。
“もしかしたら”って思っている私がいる──


「よし、出来た」


タルトをベースにした、フルーツケーキ。


「見栄えも──」
「ナイスタイミング~」
「気が利くな、アリス」


と、タスクさんとハルクはケーキを口にしている。


「なっ、何して──」
「うげぇ……不味っ」


そう言って、ハルクは口を押さえる。


「そか? 結構、イケ……あがっ」
「え?」


タスクさんまで顔色を変えた。

砂糖と塩を入れ間違え……ては、いない。
分量……も、あっている。

おかしいなぁ。





「甘すぎなんだよ! ったく、何を考えて作りやがったんだ……」


甘すぎ……?
何をって……リクに決まってるじゃない。


「そんなに甘くないけど」
「アリスはきっと、甘党なんだよ」
「女って分からねぇ……」


ハルクは頭を抱える。

悪いけど、私にも男の人ってよく分からない。


「私、甘党じゃないけど」
「オレらお前のソレに殺られるところだったんだけど」
「そんな……大袈裟な……」
「オレっちはともかく、コイツは甘過ぎんの苦手なんだよね」
「見た目から甘いのが分かっているんだから、食べなきゃいいのに」
「腹減って死にそうだったんだよ」


ハルクは少しムキになって言った。


「食べたいって言ってたクセに」
「え……?」
「だぁぁあああっ、もう! あれは──」


否定しない……
事実なんだ。
でも、どうして──?

私はハルクを見つめる。
と、その先に居たタスクさんと目が合った。


「いいの、作り直さなくて」


タスクさんの言葉に我に返る。


「あ、そうだった!」


大慌てで家を出る。
リクの誕生日中に作り直せなくなっちゃう……











〈Season when there is not you〉









.

.
1/2ページ
スキ