Colorless color Valentine
──ガシャンッ!!!
お皿の割れた音が家中に響き渡る。
「アリス! 無事か──」
リビングに入ったハルクは、言葉を失った。
割れた破片を握りしめた、アリスの両手が真っ赤に染まっていた。
「…………何、やってんだよ……」
後ろから優しくアリスを抱き締める、ハルク。
アリスの手から静かに、お皿の破片が滑り落ちる──
「味がしないの……」
「味?」
ハルクがテーブルを見ると、作りかけのお菓子があった。
人差し指ですくい、舐める。
「……味がしないどころか、すんげェ甘いんだけど」
「え……嘘……」
アリスも指で救って──
「やっぱりダメ……味がしない」
「…………とりあえず、落ち着け」
「落ち着いてるってば……」
「てか、誰のだよ……リクのじゃねェだろうし……」
ハルクは小さく呟いた。
「……何か言った?」
「あぁ、もう! 誰に作ってんだよ」
「……ラセンだよ」
「は?」
「友チョコ。交換しようって約束してるんだ」
それを聞いて、ハルクの顔が青ざめる。
「……本気か? あいつ、料理は……」
「ハルクも貰うんでしょ?」
「……どうだかな」
「何それ。もし誰からも貰えなかったら、その時は」
「いらねェよ、そんなチョコ」
そう言って、ハルクは出ていった。
.
1/15ページ