深海(うみのそこ)のマンドーラ




「着いたマグ」


マグロ君の家は、ワラのようなもので作られていた。


「……おじゃまします」


あたしは、お辞儀をして中に入る。

家の中もワラのようなものが敷き詰められていた。
丸太以外は何もない。
よく見ると丸太はテーブルみたい。
そして、やっぱり所々に水路みたいなものがある。
丸太の上には赤や青、緑、黄色、オレンジ、ピンクとカラフルな水草がたくさん並べられていた。


「来たかァ!ご馳走だんべ!」


マグロ君のパパは水草を指差して言った。


「やったマグ!ごちそうマグ!」


マグロ君は目を輝かせながら大喜びしてる。

でも……
あたしには、とてもじゃないけど“ごちそう”には思えなかった。
ごちそうっていったら、ステーキとかケーキしか知らない……


「これ…食べられるの?」


あたしは恐る恐る、水草を一つまみして匂いをかぐ。


「ご飯マグ~」


マグロ君は大きく口を開けて、“美味しい”ってむしゃむしゃと食べてた。

「アカネも食ってみるマグ」


マグロ君は目を輝かせて、あたしを見る。


「う、うん」


あたしは、つまんだ水草を食べた。


「どうマグ?」
「うん、美味しいよ」
「良かったマグ!」
「……えへへ」


正直、生ぐさいし歯ごたえも苦手で美味しくない……

それでも久しぶりに食べた……
ごちそうになっている分、ゼイタクも言えない……


気持ちはすごく嬉しいんだけど──


「アカネ、おかわりもいっぺぇあんべ!」
「もうお腹いっぱい……」
「まだ数えるくれぇしか食ってねんべ」
「そうマグ!」
「……ここに来る前にね、たくさん食べてきたんだ」


この話も嘘……。
お腹はすいてる……

あたしはお腹が鳴らないように強くお腹を押さえた。


「まあ……無理にとは言わんべ」
「……ごちそうさまです」


あたしはちゃんと手を合わせて言った。



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