ココロの扉




「はぁ……」


出てほしいのは溜め息じゃなくて素直な言葉。
好きなのに伝えられなくて。


「君が好き。君は僕のこと──」
「そういうの興味ないんだ」


打ち明けられた想いにも素直に……なれなくて。
嬉しさよりも戸惑いが強くなる。
そして、次第に気持ちが冷めていく──
いつもその繰り返し。
逃げ出していく幸せを見送ってばかり。
無意識のうちに悲劇のヒロインを演じている、私。
いつから、こんな壁が出来てしまったのだろう──?
いつから、こんな壁を作るようになったのだろう──?

──真夜中、考えながら後悔に押し潰されそうになる──

壁は一度作ると壊すことが、壊れることが怖くなる。
素直になることが──怖い。

フられるのが怖いわけじゃない。
嫌われるのが怖いわけじゃない。
素直になるのが怖い。


「……あ」
「こんにちは」


目が合えば笑顔を見せてくれる彼。
距離が近付くと、無意識に遠ざける。
遠くなると寂しさに襲われる。
──何重にもなってしまった壁は私を混乱させる。


「気持ちが分からない」


それは言い訳なのかもしれない。
本当は認めるのが怖いだけなのかもしれない。
“素直”になった瞬間に色々なモノが壊れていくのが怖いから──

彼からの連絡が途絶えて、胸に出来た穴に気付く。
そんなある日、誰かの言った言葉が頭をよぎった。



「────」



それは、怖さを温かさに変える魔法の言葉。
それが今は考えても思い出せない。
気持ちと向き合えたら、気持ちにに素直になれたら思い出せそうな気がする──

そう思ったら、彼に会いたくなった。
何をどうしたらいいのかなんて分からない。
考えたって仕方がない。
彼に会ったら、感じた総てをありのままの私で伝えよう──





ココロの扉....END....
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