White campus
「ただいま」
「おかえり」
昨日までは、ひとりだった。
ずっと昔を思い出せば、母がいた。
今は、愛おしい人が笑顔で迎えてくれる。
キャンパスは柔らかな春色だ。
「おかえり」
「あぁ……ただいま」
関係が冷めた訳じゃない。
改めて考えると不思議。
外で会ってた関係だったから。
会話、照れくさく感じる。
キャンパスの春色はより鮮やかだ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「おかえりー!」
声が一人増えた。
俺は父親になった。
妻の言葉づかいが少し丁寧になった気がするのは、子供の影響かもしれない。
春色キャンパスが一気に空色になる。
空気がいい、新鮮に澄んでいるという事だ。
「ただいま」
返事はない。
家に上がれば二人はいた。
「どうした?」
どうやら、ケンカをしたらしい。
「ダメだぞ」
言いながらも嬉しい。
自己主張、反抗期……
真っ直ぐに育っている証拠じゃないか。
叱りながら思わず顔がニヤケてしまう。
「ただいま」
「おかえりなさい」
声が妻だけになった。
今頃あいつも俺が経験した思いを感じているのだろうか──?
俺の真っ白いキャンパスは透き通った世界を描いていた。
これから先も彩りを加えていくだろう。
White campusー真っ白なキャンパスー....END....
2/2ページ