瞬間マジカル*メーン
「会いに来てくれたんだね」
足は向かっていた。
「偶然だから。たまたま買うものがあったの」
嘘じゃない。
備えあれば憂いなし、なんて言うでしょ?
「それでも嬉しい」
そう言って、彼は満面の笑みを見せた。
不覚にもドキッと反応してしまう。
“来て良かった”なんて思って……しまう──
「今日はこんなに買うの?僕に会いに来るのも大変だね」
「いや、自分の為だから」
スタンプが増える度に彼との会話も増えた気がする。
「あ、そう……」
喜んだり、しょげたり、笑ったり……
彼の色々な表情を知っていくことが素直に嬉しい。
気が付けば、彼に会う事が私の日課となっていた。
「ね、明日も来てくれる?」
目を輝かせて言う彼に私は頷く。
だって……私も会いたいから。
でも、残業で行けなかった。
“会いたい”は強くなる。
次の日、彼に会いに行くと背中を向けられた。
挨拶しても返事はなくて。
彼からも話そうとはしてくれない。
私が約束を破ったからだ──
「ゴメンね」
そう伝えて帰ろうとする。
と、彼は私の腕を掴んだ。
顔は見えない。
手が小刻みに震えている。
「……会いに来てくれて……ありがとう」
彼の声は震えていた。
……そっか、寂しかったんだね。
「明日も来るね」
私の言葉に彼は小さく頷いた。
「スタンプが貯まりましたので、こちらと交換しますね」
涙すら出ないくらい、別れはアッサリだった。
「こんばんは、俺はポイント分の価値はあるよ」
──スタンプの彼よりいいモノがやって来た。
お金をかけた分、ちょっぴりナルシストだけど。
「あの……もう一枚、スタンプカードもらえますか?」
「俺、クビですか?」
「そういうワケじゃ……」
「俺を集めるなんて、浮気だよ」
その言葉にハッとする。
この“ちょいナルシスト”はスタンプの彼の真の姿なのかもしれない、と。
何故なら、“ツン”を足したら寂しがり屋の彼に当てはまるから。
「やっぱり、スタンプカード大丈夫です」
“また”会えた事が嬉しい──
瞬間マジカル*メーン....END...
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